●Fabio Rojas, “Art careers”(Marginal Revolution, September 15, 2003)
部外者の目にはアートの世界は「カオス」のように映るようだ。しかしながら、アートの世界にはそれなりの秩序が潜んでいる。アートという創造的な世界で働く面々の生態についていくらか手がかりを得るには次の三冊の本がお薦めだ。まず一冊目はデビッド・ガレンソン(David Galenson)の『Painting Outside the Lines』。傑出した芸術家というのは(若くして画期的なアイデアに思い至る)早咲きタイプか(何十年もかけてじっくりと経験を積みながら独創的なビジョンを育んでいく)遅咲きタイプかのどちらかの傾向にあり、その中間というのは稀というのが本書のメッセージだ。二冊目は『I Bought Andy Warhol』。アンディ・ウォーホルの作品(絵)の蒐集に燃える美術商(アートディーラー)の物語であり、アーティストの序列であったり美術商というビジネスのイロハであったりについて詳しく語られている一冊だ。最後は『Hit Me, Fred: Recollections of a Sideman』。ジェームズ・ブラウンのバックバンド(ザ・JBズ)にも参加した大御所のトロンボーン奏者であるフレッド・ウェズリー(Fred Wesley)の自伝だ。「サイドマン」として知られるミュージシャンの面々――ビッグアーティストの背後で演奏するのを生業とした腕利きのミュージシャンたち――の生き様が論じられている一冊だ。以上の三冊を読めばアートの作り手ないしは売り手の視点から20世紀後半におけるアート産業の実態に迫るいい手がかりが得られることだろう。