ファビオ・ロハス 「一家に一点 ~名画を我が家に~」(2004年5月30日)

●Fabio Rojas, “A Masterpiece in Every Home”(Marginal Revolution, May 30, 2004)


アーティストや知識人による反市場論の一つに「市場はあれやこれやの経路を通じてアートを堕落させる」というのがある。「あれやこれやの経路」の候補を逐一列挙しようとすればそれだけで丸一日潰れることだろう。ところで、アートと市場経済との関わりをめぐる重大な(そしておそらくは議論の余地がないほど明白な)事実がある。(市場経済国では)誰もが容易く名画(少なくとも名画の上質のコピー)を自分のものにできるというのがそれだ。

いくつか例を挙げるとしよう。ピカソの絵で何かお気に入りの作品があればインターネットでその作品の画像を無料でダウンロードできるし、キンコーズに駆け込めばほんの数ドル払うだけでその画像のカラーコピーを印刷することもできる。(ジェフ・クーンズの代表作の一つである)ガラス張りの水槽の中に浮かべられた三個のバスケットボールを鑑賞するのが好きなのだとすれば、40ドルほど支払ってフルカラーの複製(写真)が掲載されている本なり雑誌なりカタログなりを手に入れればいい。お気に入りの作品を自宅の壁にかけたいというのであれば、その作品が印刷された上質のポスターを買って額に入れて飾ればいい。数百ドル単位の出費で済むだろう。どこぞの画家を雇って見事な出来栄えの複製画を描いてもらうという手もある。数千ドルの予算があれば足りるだろう。数十万ドルあるいは数百万ドル払ってもいいというのであれば、ゲルハルト・リヒターを自宅に招いて一家の立派な「ぼやけた」肖像画を描いてもらえばよかろう。そんなに悪い話じゃないんじゃない?

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