●Miles Kimball, “June 2020 Covid-19 Science Roundup”(Confessions of a Supply-Side Liberal, June 23, 2020)
読者のうちの誰か一人のためにでもなればと思って、「コロナの科学」関連の最近のニュースの中から有益なやつをかき集めてこようじゃないかと思い立った。その大半は、少し前に「4タイプの異質性:ロックダウンに頼らずに新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるのは可能か?」(“4 Types of Heterogeneity that Offer a Bit of Extra Hope for Keeping the Pandemic Under Control without Blanket Lockdowns”)と題された拙エントリーで述べたことを追認してくれている。すなわち、新型コロナウイルスへの感染のしやすさは、(a) 近くにいる人の数、(b) 他人と接触する時間の長さ、(c) 他人との距離、(d) マスク着用の有無、によって左右される可能性があるのだ。「新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を記録する州が続出。カリフォルニア州ではマスクの着用が義務付けられることに」(“California Requires Face Coverings as Some States See Daily Record Cases”)と題された2020年6月18日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事(執筆しているのは、ジェニファー・カルファス記者)では、新型コロナウイルスへの感染のしやすさを左右する他の要因として、(e) 所在場所の通気性の良し悪し、および、(f) 会話の声量、の二つが挙げられている。
最近の研究によると、他人と近距離で接触したり、人が密集するイベントに出かけたり、通気性が悪い場所にいたり、大声で会話したりすると、新型コロナウイルスに感染するリスクが高まることが見出されている。その一方で、屋外であれ屋内であれ、他人と接触する時間を短く抑えることができれば、新型コロナウイルスに感染するリスクをいくらか下げることができるという。かような発見は、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が国民に対してロックダウン解除後もマスクの着用とソーシャルディスタンス(自発的に他人との距離を保つこと)の徹底を求める根拠となっている。
新型コロナウイルスへの感染リスクということでいうと、歌を歌うのも大声で会話するのと同じくらい問題含みであることを強調している報道もある。「新型コロナ感染の第二波に備えて」(“Get Ready for the Second Coronavirus Wave”)と題された2020年6月11日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事(執筆しているのは、ペギー・ヌーナン記者)では、①通気性がよくて、②日光が降り注いでいることもあって、屋外では新型コロナウイルスに感染するリスクが和らげられる可能性が指摘されている。それに加えて、夏に向けて外の気温が高まると、新型コロナウイルスに感染するリスクが和らぐ可能性も指摘されている。
新型コロナウイルスがお嫌いなのは、日光、新鮮な空気、暑さ(高気温)。その一方で、寒さ(低気温)、通気性が悪い密閉空間、食肉包装工場がお気に入りのようだ。
とりあえずここまでの結論を私なりにまとめると、以下のようになる。できることなら、家族以外の赤の他人――とりわけ、大勢の赤の他人――と屋内で長時間一緒に過ごさないこと。どうしても赤の他人と屋内で長時間一緒に過ごさないといけないようなら、マスクを着けよ(マスクを着けたらコロナには絶対に感染しないってわけじゃないが、感染するリスクをいくらか下げる助けにはなる)。大勢が集まる場に行く場合は、屋外であったとしても、マスクの着用を忘れるなかれ。周りの人間にもマスクの着用を求めよ。つまりは、(「抗議デモが相次ぐことが予想される奴隷解放記念日(ジューンティーンス)を控えて、おののくタルサ市民」と題された2020年6月19日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事でインタビューされている)デビー・チューター氏のような真似はするなかれ。
トランプ大統領の長年の支持者だというデビー・チューター氏(60歳)――カンザス州ウィチタ市に住む女性――も列に並んでいる一人。トランプ大統領の選挙集会に参加するのは今回が初めてだという。「こちら(オクラホマ州タルサ市)まで足を運んだのは、トランプ大統領にエールを送るためです」と語るチューター氏。
アリーナの外に並んでいるその他大勢と同じく、チューター氏もマスクをしていない。選挙集会に集まった支持者の間で新型コロナウイルスへの集団感染が起こる可能性については心配していないと語るチューター氏。チューター氏が語るところによると、相手側の陣営がトランプ大統領の再選を阻むためにコロナの脅威を煽(あお)っているだけだという。
万が一新型コロナウイルスに感染した場合に(死亡したり、重症化したりといった)厄介な事態に陥るのを避けるためにはどうしたらいいかという話については、以下の拙エントリーをご覧いただきたいと思う。
- 「ロックダウン中の食事」(“Eating During the Coronavirus Lockdown”)
- 「コロナと持病の相互作用」(“Interactions between COVID-19 and Chronic Diseases”)
- 「ビタミンDはコロナを撃退するのに力を貸してくれるかもしれない」(“Getting More Vitamin D May Help You Fight Off the New Coronavirus”)
- 「ファスティング(断食)はコロナとの戦いで援軍となるか?」(“Can Fasting Help Fight the Coronavirus?”)
- 「砂糖はコロナの危険度を高める」(“Sugar Puts You in Greater Danger from Covid-19”)
まだコロナに感染していないようなら、持病を抱えているか否かにかかわらず、今のうちから砂糖の摂取量を減らす一方で、ビタミンDの摂取量を増やす――1日あたりの必要摂取量として推奨されている量よりもずっと多くのビタミンDを摂取する――ようにするといい(ビタミンDを1日あたりどのくらい摂取したらいいかについては、こちらの拙エントリーを参照されたい)。そうしておけば、今後いつか万が一コロナに感染してしまった時に、だいぶ救われる(死亡したり、重症化したりするリスクを低く抑えられる)だろうからね。
持病がある状態でコロナに感染すると、そうじゃない場合と比べて、重症化する(場合によっては死亡する)可能性が高い。持病がある人は、その病気をよくするために、今すぐにでも砂糖の摂取量を減らすべきだ(それに加えて、1日のうちで食事に費やす時間をできるだけ短くして、何も口にしないでいる時間を伸ばすようにするとなおよい)。コロナに感染して亡くなった人々の統計を調べると、持病を和らげるために砂糖の摂取量を減らすことがいかに重要かが明らかになってくる。 年齢が高い人ほど、コロナに感染した場合に死亡する確率が高いことはよく知られているが、その理由の多くは、年齢が高い人ほど持病を抱えている可能性が高いからなのかもしれない。この点について興味深い統計データを取り上げている二つの記事を紹介しておこう。
まず一つ目の記事は、「コロナが科す年齢罰」(“The Covid Age Penalty”)と題された2020年6月12日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説だ。
年齢が高くなるほど、免疫力が低下する傾向にあるだけでなく、呼吸器や心臓に慢性疾患を抱えている可能性も高くなる。呼吸器や心臓に慢性疾患を抱えていると、コロナに感染した場合に重症化する可能性が高いようだ。イギリスでは、コロナに感染して死亡した人のうちの95%以上が何らかの慢性疾患を少なくとも一つは抱えていた。イタリアの保健当局の発表によると、イタリアでコロナに感染して死亡した人のうちの96%が何らかの慢性疾患を一つ抱えており、(コロナに感染して死亡した人のうちの)60%が3つ以上の慢性疾患を抱えていたという。
コロナに対して特に脆弱なのは、大勢の高齢者が密集して暮らしている老人ホームだ。アメリカ国内のおよそ30州のデータによると、コロナに感染して死亡した人の50%以上は老人ホームに入居していた高齢者という結果になっている。
良い報(しら)せもある。65歳以上の高齢者の大半は概して健康であり、コロナに感染しても死亡したり重症化したりする可能性は低いようなのだ。スペイン全土で行われた抗体検査の結果によると、コロナに感染した60~79歳の高齢者のうちおよそ92%は何の症状も表れないか軽度の症状で済んでおり、入院したのはわずか6%程度に過ぎない。コロナに感染した90歳以上の高齢者のうち4分の3は何の症状も表れないか軽度の症状で済んでおり、死亡したのは10%に満たない。
次に紹介するのは、「発展途上国でコロナの犠牲になっているのは若い層」(“As Covid-19 Hits Developing Countries, Its Victims Are Younger”)と題された2020年6月19日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事(執筆しているのは、デビッド・ルーノウ&ホセ・デ・コルドバの二人)だ。
貧しい国々でコロナに感染して亡くなる高齢者の数がそこまで多くない別の理由は、高齢者を受け入れる療養施設が整っていないことにある。アメリカでコロナに感染して死亡した人の3分の1以上は、老人ホームに入居していた高齢者と見積もられている。コロナに対して特に脆弱な高齢者が集まる老人ホームでは、誰か一人がコロナにかかると、感染が拡大しやすい。その一方で、メキシコのような国々では、高齢者は家族と一緒に暮らしているのが普通だ。そのためもあって、高齢者から高齢者へと感染が拡大するということがないとゴンザレス=ピア氏は語る。
しかしながら、何よりも大きな要因は「健康」だ。感染症の専門家で、2009年に流行した新型インフルエンザの沈静化に貢献した立役者の一人でもあるアレハンドロ・マシアス氏が語るところによると、アメリカに比べると、貧しい国々でコロナの犠牲になっているのが若い層に固まっている主たる理由は、肥満、高血圧、糖尿病といった生活習慣病が若い層の間で広がっているからだという。
政府が発表している公式統計によると、メキシコでコロナに感染して死亡した人のうち10人中4人超は高血圧で、同じく10人中およそ4人は糖尿病を持っており、25%は肥満だったという。
結語:今回のエントリーがいくらか役に立ってくれたらと祈るばかりだ。最後にもう一つだけ付け加えておくと、「イベントを中止するか否かがロックダウン解除の鍵を握る?」(“Is Banning Certain Events the Key to Reopening?”)と題された2020年5月27日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙のポッドキャストも個人的に有益だと感じた情報源だ。
コロナに対する新しい洞察が続々と得られている最中だ。この調子で、コロナに対する理解が一気にググッと深まってほしいものだ。