タイラー・コーエン 「笑い ~声を出して笑うのはなぜ?~」(2003年12月27日)

●Tyler Cowen, “Laughter”(Marginal Revolution, December 27, 2003)


「笑い」(laughter;声を出して笑うこと)が「社会的」な行動(振る舞い)であるのは間違いない。「声を出して笑うという行為は、『他者に対するシグナル』として進化してきたものです。一人きりの時には、声を出して笑うことは滅多にありません」と語るのは、メリーランド大学で神経科学を研究しているロバート・プロヴァイン(Robert Provine)氏だ。『Laughter:Scientific Investigation』(『笑いの科学』;未邦訳)の著者でもある。・・・(略)・・・日常生活で声を出して笑う場面というのは、滑稽なジョークへの反応としてよりは、相手の放つごくありふれた発言――「そろそろ行かなきゃ」といったような――への柔和な応答というかたちをとる場合が大半である。「笑い(笑い声)は、人と人をつなぐ『接着剤』のようなものとして機能している」という説と整合的な事実は、他にもいくつもある。例えば、赤ん坊がクスクス(と声を出して)笑い出すのは、生後3~4ヶ月あたり。赤ん坊が他人の顔を識別できるようになるのがちょうどその頃だ。別の例としては、誰と一緒にいるかによって、笑い方に違いが出てくることが挙げられる。男性が一緒にいる相手が同性(男性)だと、女性と一緒にいる場合よりも、長く笑うし、笑い声も大きくなる傾向にある。笑い(笑い声)が相手との絆を示すための手段となっている可能性があるのだ。その一方で、女性が一緒にいる相手が男性だと、同性(女性)と一緒にいる場合よりも、よく笑う(同性と一緒にいる場合のほぼ1.5倍笑う)し、笑い声も高くなる傾向にある。そのようにして、相手(男性)への好意あるいは従順さを示そうとしている可能性があるのだ。

プロヴァインの説については、こちら [1] 訳注;リンク切れ。代わりに、こちらを参照されたい。でも手短に要約されている。そう言えば、上司が笑うと、部下もみんな笑うものだ。嘘の笑顔(作り笑い)を浮かべるよりも、嘘の笑い声を出す方が難しいように思えるが、笑い声(声を出して笑うこと)が相手との絆の強さを示すシグナルとして進化してきた理由の一つは、偽るのが難しいからというのも関係しているかもしれない。

ところで、「くすぐり」はどう位置付けられるのだろう? プロヴァインによると、くすぐり(に伴うあえぎ声)こそが笑い(笑い声)の起源だという。くすぐりというのは、「くすぐる側」と「くすぐられる側」がお互いに相手を信頼していることを伝え合う(シグナルする)手段なのだという。私のような疑い深い経済学者からすると、あまりに機能主義的な説明のように思えてしまう。ところで、私は、くすぐられるのが嫌いだ。

冒頭の文章は、ニュー・サイエンティスト誌(2003年12月20日号)からの引用だ。情報を寄せてくれたロビン・ハンソンに感謝。

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1 訳注;リンク切れ。代わりに、こちらを参照されたい。
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