●Tyler Cowen, “Sources of funding for Nobel Prize work”(Marginal Revolution, February 21, 2010)
アティナ・タチオニ(Athina Tatsioni)&エフィ・ヴァヴァ(Effie Vavva)&ジョン・ヨアニディス(John P. A. Ioannidis)の三人による興味深い論文より。
資金(研究費)の調達は科学研究にとっても重要な意味合いを持っており、画期的な研究成果を生むのに一役買うケースもあるかもしれない。本稿では、ノーベル賞の受賞対象となった画期的な科学論文に焦点を当てて、研究費の出所について分析を試みた。2000年から2008年までの間に、生理学・医学、物理学、化学の三分野において合計70名の研究者にノーベル賞が授与されている。ノーベル賞の受賞対象となった業績と関わりのある93本の論文のうち65本の論文(70%)で研究費の助成を受けている旨が報告されており、そのうち(65本のうち)53本(82%)は米国政府による助成、19本(29%)は米国以外の政府による助成、33本(51%)は非政府機関による助成という内訳になっている。研究費の助成を一切受けていない論文もかなりあるが、研究費の助成を一切受けていない論文の著者(であるノーベル賞受賞者)に連絡を取ったところ、13名の受賞者から応答があり、研究費の調達プロセスや研究費の調達に付き纏(まと)う難事について各人から知見を披瀝してもらう機会を得た。ノーベル賞の受賞対象となった業績を研究費の助成を通じて支えた機関はかなり多岐にわたっており、その数は合計で64ヶ所に上る。その中でも突出しているのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)――研究費を助成した論文の数は26本――、アメリカ国立科学財団(NSF)――研究費を助成した論文の数は17本――といったいくつかの公共機関である。しかしながら、研究者が所属する機関が研究に打ち込める環境を整えることに力を尽くすようであれば、研究費の助成を一切受けていなくともノーベル賞級の業績が生み出されることもあるようだ。
情報を寄せてくれた Michelle Dawson に感謝。