●Tyler Cowen, “But is he on time for low status people?”(Marginal Revolution, November 27, 2013)
ローマ法王フランシスコとの初めての会談に、予定よりも50分遅れて登場したウラジミール・プーチン。こんなことは、何ら珍しいことじゃない。むしろ、通常運転だ。プーチン大統領の「遅刻癖」は、権力というものに対する彼なりの態度を窺い知る何らかのヒントを与えてくれるかもしれない。
プーチン大統領は2003年に元法王のヨハネ・パウロ2世と会談しているが、その際は時間通りに会場に現れた。プーチン大統領が時間を厳守したことは、異例の出来事として注目を集めた。ロシアの日刊紙であるイズベスチアには、「大統領は、ただの一秒も遅刻せずにやってきた」との見出しが躍ったほどだ。ちなみに、ヨハネ・パウロ2世と2000年に会談した際には、15分の遅刻を犯している。
各国の首脳がプーチン大統領と会うために耐え忍ばねばならない時間の長さは、様々だ。例えば、イギリスのエリザベス女王は14分待たされたし、元ウクライナ首相のユーリヤ・ティモシェンコは3時間も待たねばならなかった。外交儀礼上でイギリス女王やローマ法王ほどの要人はそうそういないだろうし、ウクライナ以上にプーチン大統領が屈辱を与えてやりたいと思う国は他にないだろう [1] … Continue reading。
大体30分遅れてやってくるというのが、プーチン大統領のやり方のようだ。半時間の遅刻というのは、待たされる相手を怒らせるには十分(じゅうぶん)という国もいくつかあるだろう。プーチン大統領が韓国大統領(当時)の朴槿恵との会談に30分遅れで現れた際には、韓国国内で失礼な行為と見なされたようだ。
しかしながら、これまでのところは、どの首脳もプーチン大統領の登場を辛抱強く待ってくれている(プーチン大統領の遅刻を理由に、会談をキャンセルした首脳はこれまでのところ一人もいない)ようだ。
全文はこちら [2] … Continue reading。情報を寄せてくれたElizabeth Dickinsonに感謝。
References
↑1 | 訳注;おそらくは、プーチン大統領の遅刻は、単なる癖というにどとまらず、意図的なところもある(イギリス女王やローマ法王といった外交儀礼上の要人が相手の場合は待たせる時間も短めに抑える一方で、屈辱を味わわせたいと思っている相手の場合は待たせる時間を長めにしている)ということが言いたいのであろう。 |
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↑2 | 訳注;プーチンは、昔から遅刻の常習犯だったようだ。例えば、この記事の後段では、プーチンの元夫人による次のような回想が紹介されている。「若かりし頃のプーチンは、将来妻となるリュドミラとのデートの待ち合わせにも遅刻してやってくるのが常だった。『私は一度もデートに遅刻したことはありませんでしたが、ウラジミールは毎度のように遅刻してきたものです。1時間半の遅刻は日常茶飯事。待たされるのはわかってはいたのですが、こちらは遅刻できませんでした。というのも、こう考えたからです。今日こそは時間通りにやってくるかもしれない、と』。・・・(略)・・・『予定の時間を15分過ぎるくらいなら、まだ大丈夫。30分過ぎても、まだ何とか大丈夫です。でも、1時間過ぎてもまだやってこないとなると、傷心で涙したくなります。そして1時間半も待たされると、もう何の感情も残っていません』」。 なお、この記事の後段では、遅刻が持つ意味について次のような心理学的な説明も紹介されている。「『遅刻を繰り返すことであなたが得る見返りは何だろうか? 何の見返りもないようであれば、何度も何度も遅刻するなんてことはないだろう』。億万長者の心理学者であるフィル・マグローは、遅刻常習犯をテーマにしたコラムの中で次のように書いている。『遅刻するというのは、他人を犠牲にして状況を操作(あるいは、コントロール)しようとする術の一つだということを理解すべきだ。あなたが遅刻するとする。すると、待ち合わせに時間通りにやってきた面々は、あなたを待たねばならなくなる。待たされているみんなの間では、あなたの話題で持ち切りだ。つまりは、みんなは待つはずだし待ってくれるに違いないとの想定のもとに、何とも不当なやり方で状況をコントロールしていることになるわけだ。遅刻するというのは、かくも傲慢な行為なのだ』」。 |