ポール・クルーグマン「スカンジナヴィア諸国の苦闘:どうしてデンマークはあんな惨状なの?」

Paul Krugman, “Scandinavian Struggles: Why So Dismal in Denmark?,” Krugman & Co., January 3, 2014.


スカンジナヴィア諸国の苦闘:どうしてデンマークはあんな惨状なの?

by ポール・クルーグマン

Magnus Laupa/The New York Times Syndicate
Magnus Laupa/The New York Times Syndicate

もうすぐスカンジナヴィアを訪ねる予定なんで,予習課題をやってるところだ――さて,ぼくと同じくあの地域をじっくり追いかけてなかった人たちにとって驚くような発展が,あそこでは起きてたりする.

下の図に,実質国内総生産を示してある.アメリカの GDP も併記してあるので,ちょっとした比較にはなるだろう.

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2年ほど前,先進国のなかで最良の経済回復を見せていたスウェーデンはお手本だと広く考えられていた.いまはそうでもない.経済成長が緩慢なためだ――成長の低迷は,おそらく,同国の中央銀行がバブルを恐れていることによる.

ところで,デンマークがこうもひどいことになるなんて,誰が知ってただろう? デンマークの通貨がユーロとペグしてる点をあまり非難しすぎるわけにいかないとぼくは思う.今度の危機に突入したときデンマークの通貨が過大評価されていたなら,ユーロとのペグは大きく足を引っ張ることになっただろうけど,そういうことはなかったように見える.むしろ,犯人の嫌疑が強いのは家計債務がすごい高水準になっているという事実の方だ.

興味をひく話題だし,いまの問題の本質に関するさらなる証拠を探し求めるには大いに価値がある.

© The New York Times News Service


遅ればせながら緩和縮小について

連銀が小規模な緩和縮小を行うっていう古いニュースについて,短く記しておこう.いろんな人が書いてるように,連銀は今度こそうまく難しい芸当をやってのけられたように見える――つまり,長期資産を購入する割合をゆるめつつ,その一方で同時に「これは全般的にタカ派方向に舵を切る合図ではないですよ,短期金利は当分ゼロ近傍に維持しますよ」と合図を送るという芸当を,だ.

でも,正確なところ,どうして連銀が量的緩和からの離脱開始をやりがっているのか,その理由はなんだろう? だって,経済があまりに低調なことを懸念しているのは明らかだよね.

公式の発表からは,大してわからない.耳にすることと言えば,「投資家たちがありもしない投資収益を模索することで量的緩和が投機バブルの燃料投下になっているのを連銀にいる人のかなり多くが懸念している」って話だ.

でも,もちろんそれは低金利の特徴なわけで,同じ論法を使って,低調な経済と低インフレのさなかにも関わらず短期金利を引き上げるのを支持することだってできる.

それどころか,これこそまさにスウェーデンで起きていることだ.スウェーデンでは,バブルの恐れを持ち出して金融引き締めが正当化されている.

要点はこうだ.連銀があべこべなことをやろうと試みてるのを説明するとされるジレンマは,ほんとのところ,金融政策の形式となんの関係もなくて,自然利子率がマイナスだっていう明白な証拠と完璧に関わりがあるんだよ.

じゃあ,どうして連銀はねじれたことをしてるのかって?

ぼくの推測だけど,つきつめていけば政治的なことなんだと思う:つまり,バランスシートがひたすら拡大していることで,下院との間でいざこざが起きているんだ.共和党は,総じて低金利緩和をきらう.ところが,連銀のバランスシートときたら《4兆ドルにのぼっている》(めちゃ怖い声で).そのため,共和党にとって例外的なまでに安易な攻撃目標になってしまってるわけだ.

連銀はどうにかこれをかわしたように見える.だから,今回の政治的自衛行動はOKだったとぼくは見てる.

© The New York Times News Service

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