Frances Woolley, “Making Guns Obsolete” (Worthwhile Canadian Initiative, March 5, 2018)
アメリカ合衆国は特異な銃文化を持っているとされている。しかし経済学者にとって文化というのはおもしろくない説明だ。私たちは文化の起源を探す、それを促進し維持しようとする経済的・社会的影響を探すのだ。
狩猟、開拓生活、そして戦争はアメリカの銃文化が如何に始まったかを説明することはできるが、維持についてはそうでもない。銃に親和的な地方は人口を失っており、人口増加は銃所持率の低い都市部と郊外に集中している。最も急激に増加しているアメリカの人口区分、すなわちヒスパニック、アジア系、黒人といった人々は、最も銃を所持しそうにない。それに、このトレンドは何十年も続いている。これは成人アメリカ人の銃非所持世帯率が1973年に50%だったのが、2014年には64%に増加した理由を説明できる(総合社会動向調査のデータはこちら)。
アメリカの銃文化は、銃製造業者による間接的または直接的なマーケティングとロビーイングによって維持されてきたと私は主張したい。これら銃製造業者は、銃器の特異な経済のため非常に長くそうしてきたし、そうせざるを得なかった。
銃の問題は、耐久性があることだ。典型的な銃は、きちんと保守されれば、典型的な銃所持者より長生きする(ここ、ここ)。この世のIKEAやH&Mたちは、耐久性のない安い商品を作ることで一定数のリピーター顧客を確保している。より高価で耐久性のある部品を安価なものに代替することで商品の寿命を減らすと同時に製造コストを下げる。だが銃は正確に銃弾を発砲するために頑強で頑丈でなければならない、そして射撃手にとって最低のリスクを持って。なので銃製造業者は銃を陳腐化できない。また、狩猟や釣りのライフスタイルから離れた都市化などの人口動態トレンドを変えることもできない。銃製造業者は既に銃を所持している人々により多くの銃を手に入れるよう説得することによってのみ、大量の新しい武器を売ることができるのだ。
アメリカにおける新しい銃器販売は、既に銃を所持している層がより新しく、よりカッコよく、より良い武器を新規購入することで維持されてることをデータは認めている。アメリカの銃所持率は着実に低下しているものの(成人アメリカ人の銃所持率は、2014年は22%だが1994年には24%あった(データはここ))、アメリカ民間人が所持している銃器の数は増加している。「1990年代半ばから、アメリカ民間人の銃所持数は約1億9200万挺(そのうち6500万挺がハンドガン)から約2億6500万挺(そのうち1億1300万挺がハンドガン)と増加している」。単純計算では、この増加の半分は人口増加で説明できる。残りは、既に銃を所持している層の追加購入だ。決定的に重要なのは、本格的な銃コレクターだ。銃所持者のうち14%が、アメリカの民間在庫の銃器の約半分を所持している(データ)。
セミオートマチックまたはアサルトライフルの規制の例を取ってみよう。もし銃が消耗しなければ、完璧に機能する銃器の所持者にもっと銃器を購入するように説得する数少ない方法のひとつは、新しい機能を持つモデルを提案することだ。炭素繊維の柄付き超軽量銃、リーミラーカウボーイブーツ柄のライフル、完全な両手効き用の銃、快適な衝撃波グリップのある銃、狩猟市場用にデザインされたカスタムメイドのアサルトライフル(フィールド・アンド・ストリーム誌のこの記事を参照)といったように。技術タイプを制限することで銃を安全にする試みといった銃規制は、民間兵器において、より新しくより良いものが旧式のものを補完すると説得することで、銃製造業者が顧客へ商品をより高く売りつけるという問題にぶち当たる。
他の例、例えば銃規制反対派ロビイストの身元確認に関する立場を考えてみよう。アメリカ連邦法は、武器を販売する前に身元確認するよう免許のある銃販売業者に求めている。しかしこの法律は、銃展示会の無免許ディーラーによる販売を含む私的販売には適用されない。全米ライフル協会は、全国共通の身元確認は非効率で国全体の銃器登録に発展するとして反対している。しかし銃製造業者にも全国共通の身元確認に反対する強い経済的インセンティブがある。
第一に、全国共通の身元確認は中古銃の需要と価格を低下させると考えられている。アメリカ国内には1100万人の違法滞在外国人がおり、おそらく(正式な数字を得るのは不可能だが)そのうちの500万人が少なかれ刑務所で過ごしており、そのすべての人々が身元確認のせいで銃を所持する機会を奪われている。しかしこれらの人々が私的販売を通して銃器を購入するのを助けることで、中古銃の価格は高く維持され、それによって新しい銃の価格を吊り上げることを助ける。
第二の理由は、銃を収集品として確立するという理屈に由来する。もし人々が投資として銃所持を望むなら、簡単に銃を取引できるようにすることが不可欠だ。あるタイプのモデルや時代モノの膨大なコレクション、または子孫に銃を譲り渡すというようなことだ。もちろん銃は何十年ももつので、盛況な中古市場の存在は人々に新商品をもっと高値で購入する気にさせる。中古品市場をダメにする如何なるものも、長ったらしい身元確認書類の手続きの要求も、反対である。
アメリカの銃文化を変えるたったひとつの方法は、銃産業の経済を根本的に変えることだ。教師を武装させたり、ティンエイジャーにアサルトライフルを売ったり、銃熱狂者が凶器を大量に積み上げたりすることを助長せずに、銃産業が利益を上げる道を見つけることだ。
今日の銃製造業者が直面している問題は新しいものではない。つまり、破産と売上不振だ。バーナード・ロンドン著の大恐慌時代の小冊子に記述されたように、1930年代に多くの製造業者も同じことに直面した。1930年代、物品は山のようにあったが人々は買わなかったし買えなかった。問題は、「どこのひとも」「陳腐化の法則に背いていた…。古くなった車、ネクタイ、ラジオ、服を、統計学者が想定していた以上に、長い間使い続けていたのだ」。これら「消費の買い替え習慣」が「物の価値と雇用の機会」を破壊したのだ。
ロンドンには解決策があった、計画的陳腐化だ。
靴や家、機械、それから製造品や鉱業物、農産物のすべてに、生産時から数えての寿命を割り当て、消費者が確定的に知る期間のみ販売され使用されるよう取り決める。私ならそういう政府が欲しい。割り当てられた期間が過ぎたら、それらは法的に「死」に、正式に任命された政府機関により規制され、蔓延した失業があれば破壊する。新しい商品が工場や市場から絶え間なく注ぎ込まれ、陳腐化した物品に取って代わり、産業の歯車は回り続け、大量の雇用が規則化され保障される。
すべてのものを破壊しようとは私は提言しない。そのような期待は表面的で役に立たない。ビジネスを起業し物を生産するためにひとを雇用するなら、初めに物を破壊するのは必要だ。しかし、初めだけだ。今日使われている陳腐化した商品を一掃するという初めに必要なプロセスのあとは、誰も傷付けずにスムーズに行われるだろう。例えば、20億ドル使って陳腐化して使えない建物、機械、車、その他のガラクタをすぐに買い取り、建設現場や工場に200-300億ドルの仕事を作り出したほうが有益ではないだろうか?このようなプロセスは国全体を回復に向かわせ、最終的には雇用とビジネスの成功を取り戻すことになる。
もし5年、10年、20年以上経った銃器が回収され、破壊されるのだとしたら、何百万挺という銃が消えてなくなる。新しい武器の需要の波が押し寄せるだろう。銃産業に新しい雇用が生まれ、銃製造業者は利益を得る。
計画的陳腐化は、全米ライフル協会が支持できる銃規制の類だ。なぜなら盛況な銃産業を築けるからだ。それに全米ライフル協会と銃製造業者の支持で、計画的陳腐化は、銃は一時的なあそび道具として貯蔵し備蓄されるがその後は破棄されるものとして、アメリカの銃文化を根本的に変えることができるだろう。
ロンドンのモデルによる計画的陳腐化は、アンドリュー・レイとクリスティン・ニールの言うオーストラリアの銃買取とは根本的に異なる。オーストラリア政府は銃所持者から銃を買取り、破壊し、厳しい輸入規制によってオーストラリア人を再武装させないようにしている。この銃買取モデルがオーストラリアで成功しているのは、保護しなければならない国内銃製造業者が存在しないからだ。
アメリカではまだ成功していないが、銃規制はすべての中で最も重要な政策制約を満たさなければならない、銃製造業者の利益を保護することだ。
そのベストな方法は、銃は長持ちしないと宣言することだ。