David Andolfatto, “Racial Diversity in the Supply of U.S. Econ PhDs“, Macro Mania, December 25, 2018
このエントリを書く動機になったのは「経済学の人種多様性の欠如の悲惨な損失(The Dismal Cost of Economics’ Lack of Racial Diversity)」というエシェ・ネルソンのコラムだ。私は特に下のデータに衝撃を受けた。米国機関からの経済学博士号取得者で、米国籍および米国永住権者は539人、そのうちアフリカ系アメリカ人はたったの18人だった。
他のグループやより長期間だとどうなるのか、もっと幅広くデータを見てみるのはおもしろいのではないかと私は思った。米国国立科学財団からデータを集めてくれたリサーチアシスタントのアンドリュー・スピワックに感謝したい。
まず、生データから見てみよう。このデータは1965年から2014年までの期間を5年ごとに区切って集計している。オレンジ色の棒は、米国機関から博士号を取得した米国籍者と米国永住権者だ。青色の棒は、博士号取得者の総計だ。
博士号を取得した米国市民は減少しているが、この減少は博士号を取得した外国籍者数で一部は補われているように見える。
さて、とりあえず米国市民に限定し、いくつかの「人種」カテゴリにデータを分けてみよう。下のデータは経済学博士号取得の各グループを割合で示している。
最も印象的なパターンは、白人の博士号取得者の割合は減少しており、相対的にアジア系が増加していることだ(ネイティブ・インディアンなどを含む「その他」カテゴリの顕著な増加も見られる)。黒人とヒスパニックは、初期はいくらかの増加が見られたが、その後は5%程度で変化がない。
上の図表を今度は博士号取得者の総計で再作成して見てみよう。
この図表では、アジア系の割合の増加に伴い、白人の相対的な減少がより明白だ。ここで興味深いのは、博士号を取得した外国籍者(非永住権者)を含めた総計ではヒスパニックの割合は大きく増加するが、黒人では同じことは起こらないことだ。可能性〔のある説明〕のひとつは、英語話者の外国籍の黒人は米国より英国を、フランス語話者の外国籍の黒人はフランスまたはケベック州のような旧フランス植民地のフランス語教育機関を選好しているのかもしれない(カナダの大学におけるこれらの統計を調査してみるとおもしろいかもしれない)。
最後に、総人口における博士号取得者の各グループの割合がどうなっているのか見てみよう。下の図表が2010年から2014年のデータだ。
(米国国内人口と対比すると)白人市民は〔本来よりも全体に占める割合が〕過剰に表れるが、〔外国籍者を合計した〕白人全体では過少となって表れる。黒人は、市民としても、外国籍者と合計しても、過少に表れる。一方、アジア系は、市民としても、そして特に外国籍者と合計すると、〔全体に占める割合が〕著しく過剰になる。「その他」のカテゴリだけ、だいたい人口と同じだ。
結論としては、ここには明白な人種バランスの欠如がある。(エシェのコラムで強調されている多くの理由からも)米国経済学界で黒人とヒスパニックの存在が大きくなることは好ましいと、多くのひとびとは賛同すると私は思う。この議題についての将来の調査は、すべての少数派がうまくやっているわけではないという事実を、示すべきだ。他の国ではどのようなパターンが出来上がっているか見るのも興味深いだろう。