タイラー・コーエン「「優」売ります――これって正しい市場価格なのかな?」(2021年8月6日)

[Tyler Cowen, “Is this the correct market price?,” Marginal Revolution, August 6, 2021]

全面的に不道徳な一件ではあるんだけど,ここにある需要の弾力性についてちょっと思いめぐらせてる:

検察官によれば,Edward C. Ennels 教授が Baltimore City Community College で教えた数学の授業内容は,しごく単純なものだったという:150ドルで「可」,250ドルで「良」,そして500ドルで「優」だ.

また,一部の講義では,300ドル出せば「優」がもらえたそうだ.

昨年の7ヶ月間で,Ennels 氏(45歳)は,112名の学生に賄賂をもちかけ,9名の学生から10回の支払いを受けた.総額は 2,815ドルにのぼる――木曜にメリーランド州司法長官 Brian E. Frosh が公表した.

検察官によれば,これと別件では,Ennels 氏はオンラインのアクセスコードを販売した.そのコードを利用すると,教材や課題一式を学生が閲覧できたという.2013年から2020年にかけて,Ennels 氏は 1つ当たり約90ドルで 694個のアクセスコードを販売した.

同大学で教授を15年にわたってつとめてきた Ennels 氏は,学部の「倫理・制度統合委員会」の委員をつとめていた.同氏は,ボルティモア郡巡回裁判所で11件の軽罪で有罪を認めた.そのなかにはオフィスでの不品行と収賄も含まれる.この情報は,検察官とオンラインの裁判記録による.

Ennels 氏は懲役10年,猶予1年のみの判決を受けた.地元の刑務所に収監される.また,被害者に6万ドルの返還を命じられた.出所後は5年間の保護監察がつく.

Frosh 氏の発言によれば,Ennels 氏は「自分が教える学生につけこむ細かな犯罪計画」を立てていたという.これには,自分の素性を隠すための複数の偽名を用いることも含まれていた.

検察官の発表によれば,2020年3月に,Ennels 氏は “Bertie Benson” という偽名を用いて,別の偽名 “Amanda Wilbert” 宛てにメールを送信している.同メールで “Benson” は “Wilbert” の数学の課題をすべて代行しようと持ちかけ,300ドルで「優」を保証すると述べていたという.

検察官によれば,さらに,この “Wilbert” を騙って Ennels 氏は自分の教えていた講義の受講者112名に同メールを転送した.公表の一節にはこうある――「Ennels は賄賂の額をめぐって学生と値段交渉をよく行っていた.そして,講義それぞれに成績ごとの価格を設定した.」

大半の学生は賄賂の支払いを拒否した.それに対して,Ennels 氏は「しばしば食い下がり,賄賂の額を引き下げたり,支払いプランを提示した」という.

公表によれば,500ドルで「優」を保証するという申し出を,ある学生はこう言ってにべもなく突っぱねたそうだ――「いえ,持ち合わせがないんで結構です.勉強を続けて試験に通る自信はありますし.」 これに Ennels 氏はこう返信したという.「いくらなら出せる?」

その学生は最終的に賄賂を払った.ただし,具体的な金額を検察官は明らかにしていない.

ひょっとして,彼も需要の弾力性について考えていたんじゃないかな.『ニューヨークタイムズ』の記事全文はこちら

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