●Tyler Cowen, “The (royal monetary) equilibrium”（Marginal Revolution, September 13, 2022）
イギリスで流通している290億枚の硬貨には、エリザベス女王（エリザベス2世）の横顔が刻印されている。王立造幣局がエリザベス女王の横顔入りの硬貨の発行に乗り出したのはいつかというと、1953年に遡る。エリザベス2世が1952年に女王に即位してから1年後のことだ。エリザベス女王の横顔入りの硬貨はこれまでに全部で5種類発行されているが、どのバージョンでも右向きのエリザベス女王の横顔が刻印されている。
エリザベス女王の崩御に伴って、今後は新国王に即位したチャールズ3世の顔が硬貨に刻印されることになるが、新しい硬貨にはエリザベス女王とは逆の方向――左――を向いたチャールズ3世の横顔が描かれる可能性が高い。
イギリス王室のウェブサイトによると、新しい君主は先代の君主とは逆の方向を向いて硬貨にその姿を現すというのが17世紀以来――チャールズ2世治下以来――の伝統になっているという。その伝統からすると、（硬貨に刻印されている）エリザベス女王が右を向いていたわけだから、新しい硬貨には左を向いたチャールズ3世の横顔が描かれるのではないかと予想されることになる。
ただし、例外もある。（硬貨に刻印された）先代のジョージ5世が左を向いていたにもかかわらず、エドワード8世――1936年に即位したが、在位期間は1年に満たなかった――は同じく左向きの横顔を硬貨に刻印させたのである。その理由はというと、どちらかというと左を向いた横顔の方が好きだったからである。エドワード8世の跡を継いだジョージ6世は伝統の再開に動いた。硬貨に（エドワード8世が伝統を守って、硬貨に右向きの顔を描かせたと想定した上で）左向きの自分の顔を描かせたのである。ジョージ6世が1952年に崩御すると、エリザベス2世がその跡を継ぐことになった。
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