タイラー・コーエン 「左派は反市場で、右派は反左派 ~ブライアン・カプランの最高傑作(?)が発刊~」(2023年4月29日)

民主党(リベラル派)の穏健派と共産主義者とは違うところがだいぶあるが、共通点もある。どちらも自由市場が神経に障るのだ。共和党(保守派)の穏健派とナチスとは違うところがだいぶあるが、共通点もある。どちらも左派が神経に障るのだ。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/22874593

ブライアン・カプラン(Bryan Caplan)の新著である『Voters as Mad Scientists』(『マッドサイエンティストとしての有権者』)は、彼がこれまでに書き連ねてきた粒揃いのブログエントリーを一冊にまとめたものだ。彼がこれまでに書いた本の中でもおそらく最高傑作だろう。本書にも収録されている「左派と右派の違いに関するあまりに単純な持論」の一部を引用しておこう。

  1. 反市場なのが左派。左派は、市場が生んだ成果に感情のレベルで(突発的に)批判を加えないではいられない。市場が生んだ成果がどれだけ優れていたとしても、「市場は、大した仕事をやってのけた。これ以上の成果を望み得るだろうか?」なんてとても言えない。
  2. 反左派なのが右派。右派は、左派に感情のレベルで(突発的に)批判を加えないではいられない。ある争点をめぐって左派と意見が合致したとしても、「左派の言う通りだ。それなのに、彼らを批判するのはどうかしている」なんてとても言えない。

あまりに無慈悲で単純に過ぎるまとめというのは、その通りだ。しかし、極端だからこそ、視界が晴れてくる面もあるんじゃなかろうか。民主党(リべラル派)の穏健派と共産主義者とは違うところがだいぶあるが、共通点もある。どちらも自由市場が神経に障るのだ。共和党(保守派)の穏健派とナチスとは違うところがだいぶあるが、共通点もある。どちらも左派が神経に障るのだ。左派にしても右派にしても、それぞれの陣営内部の穏健派と過激派の違いは、反感を抱く対象の違いにあるのではなく、同じ対象に対する反感の度合いの差にあるのだ。

ちなみに、副題は「政治的な非合理性にまつわるエッセイ集」。激しくお薦めの一冊だ。冒頭に掲げられている献辞も言うことなしだ。曰く、「『政治的な非合理性』という名の海を疾走する『理性』号の船長 アレックス・タバロックに捧ぐ」。


〔原文:“Voters as Mad Scientists, by Bryan Caplan”(Marginal Revolution, April 29, 2023)〕

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