アーロン・キャロル(Aaron Carroll)のブログエントリーより。
結論から先に述べておこう。砂糖は子供をハイにしやしない。
砂糖の含有量が異なるあれやこれやの食べ物を子供に与えてその効果を調査した実験がこれまでに少なくとも12回は試みられている――12回というのは、薬物の効果を調査するために行われる実験の数よりも多かったりするくらいだ――。砂糖(が含まれている食べ物)を摂取した子供と砂糖(が含まれている食べ物)を摂取しなかった子供とでその後の振る舞いに何らかの違いが見出された実験の数はというと、・・・ゼロだ。キャンディーやチョコレートに含まれている砂糖だったり、天然甘味料だったりの効果が調査されていて、短期的な(即時的な)効果を探っている実験もあれば、長期的な効果を探っている実験もある。ADHD(注意欠如・多動症)の子供に焦点を当てた実験もあれば、砂糖に「敏感」だと自分の親から判断されている子供だけを対象にした実験もある。しかしながら、砂糖が大量に含まれている食べ物を口にした場合と、砂糖が一切含まれていない食べ物を口にした場合とで、子供たちのその後の振る舞いに違いが生じることを見出している実験は一つとしてないのだ。
・・・(中略)・・・
私が個人的に気に入っている実験の内容を紹介しておこう。まずは、子供たちを2つのグループに分ける。次に、どちらのグループの子供にも砂糖が一切含まれていない飲み物を飲んでもらうが、片方のグループの子供の親にだけ「お宅のお子様には砂糖入りの飲み物を飲んでいただきました」と(嘘を)伝える。そして、どちらのグループの子供の親にも我が子の振る舞いに変わりがないかどうかを評価してもらう。その結果はどうだったかというと、予想通りと言うべきか、我が子が砂糖入りの飲み物を飲んだと(嘘を)伝えられた親たちは、我が子がハイになって落ち着きをなくしていると評価したのだ。そうなのだ。親たちの頭の中にこそ、「砂糖は子供をハイにする」という神話が息づいているのだ。 「砂糖は子供をハイにする」と信じ込んでいるからこそ、砂糖が子供をハイにしている(砂糖の摂取が原因で子供がハイになっている)かのように見えてしまっているのだ。
「砂糖は子供をハイにする」という説には科学的な根拠がないことが何度も繰り返し明らかにされても、砂糖は子供をハイにする(砂糖の摂取が原因で子供がハイになる)んだと相(あい)も変わらず信じ込まれ続けている。なぜなんだろう? 「子供が砂糖を口にする」状況と「子供が興奮している」状況とが重なりがちなのが理由の一つなのかもしれない。子供たちが砂糖を大量に摂取する機会というのはどんな時かというと、子供たちが興奮しがちな気分の時だったりすることが多い。ハロウィンだったり、誕生日パーティーだったり、祝日だったり。あるいは、親による締め付けに原因があるのかもしれない。砂糖を摂取するのを親がなかなか許してくれないせいで、たまにキャンディーにありつけると頗(すこぶ)る興奮してしまうのかもしれない。ハイになってしまうのかもしれない。
我が子が砂糖を摂(と)り過ぎないように目配りすべき真っ当な理由なんてものはありゃしないって言いたいわけじゃない。砂糖の摂り過ぎと虫歯との関係だとか、砂糖の摂り過ぎと肥満の蔓延との関係だとかについては、ほとんどの親御さんもご存知の通り。私がここで言いたいのは、我が子の行儀の悪さ(落ち着きのなさ)を砂糖のせいにするなかれということなのだ。
〔原文:“Sugar doesn’t cause hyperactivity”(Marginal Revolution, November 1, 2011)