タイラー・コーエン 「至る所に市場あり ~テロリストによる誘拐ビジネス~」(2014年7月29日)

設立して間もない頃のアルカイーダは、資金源として裕福な支援者からの援助に大きく頼っていたが、2008年以降になると、身代金が主たる資金源になった可能性があるという。戦闘員の勧誘・訓練、武器の購入に必要な資金の大半を、人質を救うためにヨーロッパ諸国が支払った身代金で賄(まかな)っている可能性があるというのだ。
画像の出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=23824022

ヨーロッパ諸国の政府は身代金を支払ったことを否定しているが、2008年以降にヨーロッパ諸国(の政府)からアルカイーダおよびその関連組織に少なくとも1億2500万ドル――昨年(2013年)1年間だけで6600万ドル――の身代金が支払われていることが本紙(ニューヨーク・タイムズ紙)の取材によって明らかになった。

米財務省が公開している報道発表資料や各種文書で言及されている身代金の支払額をそのまますべて足し合わせると、2008年以降におよそ1億6500万ドルの身代金が支払われた計算になる。

ヨーロッパ、アジア、中東の計10カ国の元人質、交渉人、外交官、政府職員を対象に行った本紙の聞き取り取材によると、身代金を支払っているのはヨーロッパ諸国の政府がほとんどで、間に代理人を幾重にも挟んで現金が受け渡されていて、開発援助(途上国援助)名目で支払われることもあるという。筆者がAP通信の記者として行った昨年の取材により、誘拐ビジネスの内幕が物語られているアルカイーダの大量の内部文書の存在も明らかになっている。

設立して間もない頃のアルカイーダは、資金源として裕福な支援者からの援助に大きく頼っていたが、テロ対策担当官らの考えによると、今では身代金が主たる資金源になっているのではないかという。戦闘員の勧誘・訓練、武器の購入に必要な資金の大半を、人質を救うためにヨーロッパ諸国が支払った身代金で賄(まかな)っているのではないかというのだ。

全文はこちら――執筆者は、ルクミニ・カリマチ(Rukmini Callimachi)――。おっと、忘れちゃいけない話があった。

元人質やテロ対策上級担当官の証言によると、依頼人(アルカイーダ)と実行犯(誘拐を代理で実行するグループ)の間に入る交渉人に身代金の10%が報酬として支払われるかたちになっているせいで、依頼人も実行犯も人質の値段を吊り上げて手取りを少しでも増やそうとしているという。

アルカイーダは、人質を滅多に処刑しなくなっているらしい。

情報を寄せてくれたマイケル・ローゼンワルド(Michael Rosenwald)に感謝。


〔原文:“Al Qaeda kidnapping markets in everything”(Marginal Revolution, July 29, 2014)〕

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