テクノ楽観主義者を自負しているくせに,「現代世界のいろんな問題のけっこうな割合が,スマホに人類が適応できないせいで生じている」と考えてるなんて,ちょっと皮肉なことではある.スマホが鬱や政治的騒動を引き起こしてるという話は,これまでにたくさんしてきた〔日本語記事〕.さて,豊かな国々で進んでいる認知スキル低下が,不快なまでにスマホ普及と並行していることを示すデータを,ジョン・バーン=マードックがまとめている.下記のグラフは,アメリカで認知スキル低下が2012年頃から始まったのを示している:

そして,こちらのグラフからは,認知スキル低下が世界規模の現象らしいことがうかがえる:

その機序の推理は難しくない:ソーシャルメディアにつながったスマホは注意阻害マシンとなって,ひっきりなしに通知をよこし,相互に関連のない情報の断片をぼくらの頭脳に浴びせかけて,なにかに集中して注意深く考える能力を壊してしまう.3つ目のグラフは,この仮説を強化している:

AI によって生じる人間の社会や認知の変化は誰も彼もが心配しているけれど,ソーシャルメディアにつながったスマホは,すでに隕石みたいに人類を直撃している.そして,その変化に適応するどころか,そもそも変化と向き合うことすら,ようやく始まろうかという段階だ.
訳註:ここで言及されている調査は,OECD によるもの.
[Noah Smith, “Are phones are making us dumb?” Noahpinion, March 24, 2025]