ノア・スミス「スマホでみんながバカになってる?」(2025年3月24日)

テクノ楽観主義者を自負しているくせに,「現代世界のいろんな問題のけっこうな割合が,スマホに人類が適応できないせいで生じている」と考えてるなんて,ちょっと皮肉なことではある.スマホがや政治的騒動を引き起こしてるという話は,これまでにたくさんしてきた〔日本語記事〕.さて,豊かな国々で進んでいる認知スキル低下が,不快なまでにスマホ普及と並行していることを示すデータを,ジョン・バーン=マードックがまとめている.下記のグラフは,アメリカで認知スキル低下が2012年頃から始まったのを示している:

「推理・問題解決テストの成績は低下中」(高所得諸国における,さまざまな領域での評価スコアの平均.ティーンエイジャーと成人では,使用尺度が異なる)/ Source: John Burn-Murdoch

そして,こちらのグラフからは,認知スキル低下が世界規模の現象らしいことがうかがえる:

「情報を処理するのに困難を覚える成人の割合は増加中」(”Numeracy” は単純な主張を評価する際に数学的な推理がうまくできない成人の割合,”Literacy” は複数の情報をまとめたり推論を行ったりするのに困難を覚える成人の割合を示す)/ Source: John Burn-Murdoch

その機序の推理は難しくない:ソーシャルメディアにつながったスマホは注意阻害マシンとなって,ひっきりなしに通知をよこし,相互に関連のない情報の断片をぼくらの頭脳に浴びせかけて,なにかに集中して注意深く考える能力を壊してしまう.3つ目のグラフは,この仮説を強化している:

「認知上の困難の報告件数は顕著に増加中」(過去30日間に少なくとも5日はしかじかの問題があったと報告した18歳以上のアメリカ人の割合を示す.左のグラフは「思考・集中に困難を覚える」という報告,右は「新しいことを覚えるのに問題がある」という報告)/ Source: John Burn-Murdoch

AI によって生じる人間の社会や認知の変化は誰も彼もが心配しているけれど,ソーシャルメディアにつながったスマホは,すでに隕石みたいに人類を直撃している.そして,その変化に適応するどころか,そもそも変化と向き合うことすら,ようやく始まろうかという段階だ.


訳註:ここで言及されている調査は,OECD によるもの


[Noah Smith, “Are phones are making us dumb?” Noahpinion, March 24, 2025]
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