マーク・ソーマ 「お金持ちは冷たい心の持ち主か?」(2014年7月26日)/「お金持ちは他人に無関心」(2013年10月6日)

他人のニーズや感情を敏感に感じ取れるということが、他人に共感するための前提条件だ。誰かに対する共感は、その誰かへの理解や関心につながる可能性がある。状況次第では、その誰かのためを思って行動するに至る可能性だってある。富裕層とその他大勢との間にある「共感力の格差」をどうにかしない限り、経済面での格差を減らすのは不可能かもしれない。
画像の出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22842440

お金や権力を持っている人たちのあまりに多くが、お金にも権力にも恵まれていない人たちの苦労にあまりにも冷淡で無関心なのは、なぜなのだろう?

Are the Rich Coldhearted?” by Michael Inzlicht&Sukhvinder Obhi, New York Times:

・・・(略)・・・権力の持ち主――社長、上司、セレブ、家庭の中のリーダー――は、彼らに従う者たちにいとも容易(たやす)く共感できるんだろうか?

心理学のこれまでの研究成果によると、その答えは「ノー」のようだ。

・・・(中略)・・・

権力が人を冷淡にするように見えるのは、なぜなのか? プリンストン大学の心理学者であるスーザン・フィスケ(Susan Fiske)らによると、権力の持ち主が周りの人間に大して気を配らないのは、(お金だとかの)重要な資源を手に入れるために他人の助けを必要としないからだという。なぜって? 既に重要な資源をたんまり手に入れているからだ。

別の――とは言え、補完的な――理由を認知神経科学の方面から探っているのが、我々二人にジェレミー・ホグビーン(Jeremy Hogeveen)を加えた三人の共著論文だ――「Journal of Experimental Psychology:General」に掲載されたばかり――。人が権力を手にすると、他人の行為に共鳴する脳の機能に根本的な変化が生じるようなのだ。

・・・(中略)・・・

権力の持ち主は、共感する能力を欠いた冷血人間ってことなんだろうか? いや、そうは言い切れない。・・・(略)・・・悪い知らせということになるが、権力の持ち主は、誰かに気を配る気になれないのだ。脳の神経がそういう仕様になってしまっているのだ。その一方で、良い知らせもある。脳の神経の働きを変えるのは理論的には可能なのだ。

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本日紹介する記事は以下。

Rich People Just Care Less” by Daniel Goleman, Commentary, New York Times:

・・・(略)・・・絶大な社会的権力を手にしている人たちは、格下の相手に大して関心を寄せないようだ。そのことを露(あらわ)にする研究が相次いでいる。・・・(略)・・・カリフォルニア大学バークレー校の教授で心理学が専門のダッシェ・ケルトナー(Dacher Keltner)の研究によると、・・・(略)・・・ 貧しい人たちは、裕福な人たちとは違って、他人のあらゆる面に抜け目なく注意を向ける一方で、絶大な力の持ち主たちは、格下の相手に大して注意を払わない傾向にあるようなのだ。地位が高い人も相手が同等であれば注意を払うが、地位が低い人が同等の相手に向ける注意深さには劣る。

これらの研究結果は、社会問題への取り組みや公共政策にとっても深い意味合いを持っている。なぜならば、他人のニーズや感情を敏感に感じ取れるということが、他人に共感するための前提条件だからだ。誰かに対する共感は、その誰かへの理解や関心につながる可能性がある。状況次第では、その誰かのためを思って行動するに至る可能性だってあるのだ。

不都合な相手を切り捨てたって構わないという姿勢が政治の世界に持ち込まれると、その相手にまつわる不都合な真実を抹殺するという手段に訴えられがちだ。フード・スタンプの予算削減を求める声やオバマケアの実行を阻もうと意気込む声が共和党の下院議員の一部の間から上がっているが、・・・(略)・・・それもこれも共感の欠如に由来している面があるのかもしれない。

・・・(中略)・・・

(自分とは別の集団に属している誰かしらへの共感が欠如しているがゆえに)異なる集団の間に距離(溝)があるようだと、双方の間の些細な違いがやけに目につきやすくなる。相手陣営のやることなすことすべてを否定しがちになる一方で、自陣営のやることなすことすべてを肯定しがちになる。

・・・(中略)・・・

1970年代以降、富裕層とその他大勢との間の格差は広がる一方だ。所得の格差は、この100年で最大に達している。・・・(略)・・・私が恐れているのは、別の格差の拡大だ。自分よりも恵まれていない人たちの立場になってみることができないがゆえに、富裕層とその他大勢との間で「共感力の格差」が広がりつつあるのではないかと恐れているのだ。共感力の格差をどうにかしない限り、経済面での格差を減らすのは不可能かもしれないのだ。


〔原文:“‘Are the Rich Coldhearted?’”(Economist’s View, July 26, 2014)/“‘Rich People Just Care Less’”(Economist’s View, October 6, 2013)〕

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