経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

パトリック・ブラントム&ロラン・ポール「中国の一帯一路構想:欧州にとっての機会と課題」

Patrick Branthomme et Laurent Paul “Les nouvelles routes de la soie : opportunités et défis pour l’Europe” le 15 octobre 2019, Bloc-notes Eco, Banque de France

2013年9月に中国政府が打ち出した「新シルクロード」はアジアとヨーロッパの連結を高めることを目指している。欧州は自身の経済的利益と多国間枠組みを最大限守らなければならない。融資の透明性,質の高いインフラ,環境・社会基準の遵守という原則を設定した最近のG20での進展がその助けとなりえるだろう。

[Read more…]

ホアン・コスタ=イ=フォント他「労働時間と肥満」

Joan Costa-i-Font, Belén Sáenz de Miera “Working hours and overweightVOXEU, 20 October 2019  

労働及びそれに関連する時間と仕事中に消費されるエネルギーの変化は人々の健康維持に大きな影響を及ぼしうる。しかしながら,こうした変化が健康的な行動や肥満に与える影響はあまりよく理解されていない。本稿では,2001年にフランスが全国的に行った労働時間削減の改革が従業員の肥満に与えた影響について検討する。労働時間の削減によって生まれた時間は,理論的には健康増進活動に使われうるものの,実際にはホワイトカラーとブルーカラーでその影響は異なる。労働時間を削減する政策のみでは,かならずしもすべての人の健康を増進するとは限らないのである。

[Read more…]

オリアナ・バンディエラ「2019年ノーベル賞:実験研究で貧困を減らす」

Oriana Bandiera “Alleviating poverty with experimental research: The 2019 Nobel laureatesVOXEU, 21 October 2019  

2019年のノーベル経済学賞は,「世界の貧困削減への実験的アプローチにより」,アビジット・バナジー,エステル・デュフロ,マイケル・クレマーが共同で受賞した。本稿では,今年の受賞者の考えや,持続する貧困や各国間における巨大な生活水準格差を理解し解決するという彼らの共通の関心について議論する。

[Read more…]

アレックス・タバロック「今年のノーベル経済学賞はバナジー,デュフロ,クレマーが受賞」

Alex Tabarrok “ The Nobel Prize in Economic Science Goes to Banerjee, Duflo, and KremerMarginal Revolution, October 14, 2019

今年のノーベル経済学賞は,開発経済学でのフィールド実験を理由にアビジット・バナジーエステル・デュフロマイケル・クレマー(リンク先は各人のホームページ)に与えられた。デュフロはジョン・ベイツ・クラーク賞,マッカーサー「天才」賞を受賞し,今やノーベル経済学賞を受賞した史上2番目の女性で,これまでの受賞者の中で群を抜いて一番若い(これまで一番だったのはアロー1 )。デュフロとバナジーは夫婦なのでノーベル経済学賞を受賞した最初の夫婦ということになるが,ノーベル賞を受賞した最初の夫婦というわけじゃない。過去に夫婦でノーベル賞を受賞してそのうち片方がノーベル経済学賞受賞者だった夫婦がいる。さて,どの夫婦かわかるかな?2

[Read more…]
  1. 訳注;アローの受賞は51歳のとき,デュフロは46歳 []
  2. 訳注;正解はhicksian氏訳の過去記事を参照。 []

タイラー・コーエン「エスカレーターを歩くのは非効率か」

Tyler Cowen “Is it inefficient to walk up the escalator?” Marginal Revolution, September 29, 2019


ロンドンでのとある調査によれば,74.9%の人は歩くよりも立ち止まることを選び,このことは特にエスカレーターが長いほど顕著だ。この「右側は立ち止まる用,左側は歩く用」ルールのせいで,通勤者の約25%の人に50%のスペースを与えていることになる。

ここで,ラッシュアワーで「立ち止まる用」の側にエスカレーターに乗ろうとしている人が列をなしている場合を考えてみよう。これは直観に反するように見えるかもしれないが,通勤時間を減らそうとしてエスカレーターを歩く人たちは,実のところそれ以外の全員を遅れさせているのだ。

効率性を脇においても,エスカレータを歩くことが良くないかもしれない理由がもうひとつある。安全性だ。エスカレーター事故は私たちが考えているよりもずっと身近なものだ。

CBCの調査によれば,モントリオールの地下鉄ではエスカレーター事故が2日に1度の割合で起きている。アメリカでは,毎年約10,000件エスカレーターに関係した怪我で緊急治療室に運び込まれている。

こうした被害者の多くがエスカレーターを歩いていたとみられる。東京でのとある調査では,2013年から2014年にかけて発生したエスカレーター事故の約60%が,歩いたり駆け上がったりといったことを含むエスカレーターの不適切な使用が原因だった。

ミシェル・ドーソン経由で知ったこの記事の全文はこちらから。だがしかし,エスカレーターを歩くことを選ぶ人たちが立ち止まることを選ぶ人たちよりも時間に対してはるかに高い価値をつけているのであれば,エスカレーターで歩くことは効率的になる。実際にそんな場合はありえるかな?

タイラー・コーエン「(特に日本の)経済学者はイデオロギーバイアスがあって権威に弱い?」

Tyler Cowen “Ideological bias and argument from authority among economists” Marginal Revolution, September 5, 2019 


と,いうのがモフセン・ジャブダーニとハジュン・チャンの新論文のテーマだ。以下は論文要旨からの抜粋。

19か国の経済学者に対してオンラインでのランダム化対照実験を行うことで,我々は経済学者たちの見解に対するイデオロギーバイアスの効果を検証した。我々は参加者に対して様々なテーマに関する有力な経済学者の言説を評価するよう求めるとともに,それぞれの言説の主張者の名前は参加者に知らせずにランダムに割り振った。各言説について,参加者は主流派経済学者の名前,イデオロギーの異なる非主流派ないしは主流派色の薄い経済学者の名前,名前なしのいずれかを提示された。我々は,イデオロギーの異なる非主流派ないしは主流派色の薄い経済学者の名前や,名前がないことが,言説に対して経済学者たちが同意を示すのを有意に減少させることを見出した。これは経済学者たちが自らに抱いているイメージとは相反する

以下は論文の本文内から

[Read more…]

マリ=アンヌ・ルキエ「フランシュ=コンテの白い黄金:塩の一歴史」

Marie-Anne Rouquier “L’or blanc de Franche-Comté : une histoire de sel” Bloc-notes-éco, Banque de France, le 11 avril 2019.

フランス銀行のブログであるBloc-notes-écoは,フランス銀行のネットワークを活用して地域に関する分析にも手を広げることにしました。そこで,Bloc-notes-écoは折に触れて産業,地域の経済機構,地元産品に関する分析をお届けします。今回の記事はその第一弾となります。


人間にとって不可欠な塩は,貴重な物資だ。歴史の中で取引用のお金や給料の媒体として用いられ,塩は19世紀まで経済の中心的な産品だった。その製塩場のおかげで,フランシュ=コンテ地域圏は地下に眠る「白い黄金」を採掘しつつ1000年以上も特筆すべき繁栄を享受したのだ。

アルケスナン製塩所 出典:Michel Pierre
[Read more…]

アレックス・タバロック「女子の読解における比較優位は数学関連分野での男女格差をだいたい説明する」

Alex Tabarrok “Girls’ comparative advantage in reading can largely explain the gender gap in math-related fields” Marginal Revolution, September 3, 2019


前に「男子の方が数学・科学に比較優位がある?(optical_frog氏による訳)」という記事で,男子は女子よりも読解がずっと下手だから数学に比較優位があることを示す証拠をご覧に入れた(男子が数学に大きな絶対優位をもつわけではないのだ)。みんなが自分の比較優位に特化するとすると,このことが女子よりも多くの男子が数学教育課程に入ることを容易に促してしまう。たとえ女子に男子と同じかそれ以上の才能があったとしてもだ。このことは以前書いたとおり。

さて,これで生徒たちにこう告げたらどうなるだろう――「得意なことをやってごらん!」 大雑把に言えば,状況はこんな具合になるだろう:女子はこう言う――「歴史と国語は A で科学と数学は B だから,長所をもっと伸ばして歴史や国語と同じ技能を活かすことにしよっと!」 一方,男子はこう言う――「科学と数学は B で歴史と国語は C だから,長所をもっと伸ばして科学や数学がからんでることをやろっと!」

米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたブレダとナップの新論文は,この比較優位仮説についてもっと多くのことを見出している。ブレダとナップは,学習到達度調査(PISA)を受ける最大30万人の世界各地の学生の数学を勉強する意欲を調べた。

[Read more…]

クロディアナ・イストレフィ「金融政策決定者を選ぶ:Fedから学ぶ3つの教訓」

Klodiana Istrefi “Choisir les décideurs de la politique monétaire : trois leçons de la Fed” Bloc-notes Eco, Banque de France, 16 mai 2018

今日においては,金融政策は一般的に委員会によって決定されている。米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の歴史は,経済に関するFed議長の信条及び金融政策に関する委員会の選好の重力中心が意思決定において重要であることを示している。

[Read more…]

クレマンス・ベルゾン「フランス労働市場の二重性」

Clémence Berson “La dualité du marché du travail en France” Bloc-notes Eco, Banque de France, le 19 décembre 2017

フランスでは,労働市場の柔軟性は本質的に任期付雇用契約(CDD)や臨時雇用による従業員に依拠している。彼らは給与待遇が低く,受ける訓練も少なく,正社員契約(CDI)1 を獲得するのも困難である。こうした労働市場の二重性は社会経済的な課題を生み出す。正社員への移行を容易にするには,公共政策の実施が考えられる。

[Read more…]
  1. 訳注;文字通りには「任期の定めのない雇用契約」であるが,理解の容易さのために正社員と訳出する。 []