ディアドラ・マクロスキー(Deirdre McCloskey)の新作である『Bourgeois Equality:How ideas, not capital or institutions, enriched the world』をほぼほぼ読み終えたところだ。出版されるのは来月(2016年4月)。出版され次第、どこかしらに書評を寄せるつもりだ。本作は、『The Bourgeois Virtues』、『Bourgeois Dignity』に続く作品であり、マクロスキーが乗り出した一大プロジェクト――ブルジョア時代シリーズ――の最終巻にあたる( 『Bourgeois Dignity』については、出版時にニュー・ステーツマン誌に書評を寄せた)。当初の計画では全6巻になる予定だったらしいが、全3巻というかたちで落ち着いたようだ。とは言え、三冊ともに600ページを超えていて、相当なボリュームであることに変わりはない。
『The Bourgeois Virtues:Ethics for an Age of Commerce』
『Bourgeois Dignity:Why Economics Can’t Explain the Modern World』
『Bourgeois Equality:How Ideas, Not Capital or Institutions, Enriched the World』
ここでネタバレをするつもりはない。『Bourgeois Equality』に対する私なりの感想を吐露するのは後日にとっておくが、本書を読んでふと頭に浮かんだ疑問がある。資本主義の歴史なりダイナミズムなり――マクロスキーは「資本主義」という言葉が好きじゃないようだけれど――に切り込んでいる本シリーズを適切に評価するための準備として、他にどんな本を読んでおくべきだろうかというのがそれだ。私なりに真っ先に思い浮かぶ候補を以下に列挙するが、(資本主義の歴史なりダイナミズムなりという)扱われている問いの大きさゆえにいずれも大冊揃いだ。
●『The Wealth and Poverty of Nations』(邦訳『「強国」論:富と覇権の世界史』) by デビッド・ランデス(David Landes)
『The Wealth and Poverty of Nations』
●『The Great Divergence』(邦訳『大分岐:中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』) by ケネス・ポメランツ(Kenneth Pomeranz)
●『The Lever of Riches』/『The Gifts of Athena』(邦訳『知識経済の形成:産業革命から情報化社会まで』)/『The Enlightened Economy』 by ジョエル・モキール(Joel Mokyr)
『The Lever of Riches:Technological Creativity and Economic Progress』
『The Gifts of Athena:Historical Origins of the Knowledge Economy』
『The Enlightened Economy:Britain and the Industrial Revolution, 1700-1850』
●『The British Industrial Revolution in Global Perspective』(邦訳『世界史のなかの産業革命:資源・人的資本・グローバル経済』) by ロバート・アレン(Robert Allen)
●『Guns, Germs and Steel』(邦訳『銃・病原菌・鉄』) by ジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond)
『Guns, Germs and Steel:The Fates of Human Societies』
●『Why the West Rules – For Now』(邦訳『人類5万年 文明の興亡:なぜ西洋が世界を支配しているのか』) by イアン・モリス(Ian Morris)
『Why the West Rules – For Now:The Patterns of History and what they reveal about the Future』
●『Why Nations Fail』(邦訳『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』) by ダロン・アセモグル(Daron Acemoglu)&ジェイムズ・ロビンソン(James A. Robinson )
『Why Nations Fail:The Origins of Power, Prosperity and Poverty』
●『The Rise of the Western World』(邦訳『西欧世界の勃興:新しい経済史の試み』) by ダグラス・ノース(Douglass North)&ロバート・トマス(Robert P. Thomas)
『The Rise of the Western World:A New Economic History』
●『The Collapse of Complex Societies』 by ジョセフ・タインター(Joseph Tainter)
『The Collapse of Complex Societies (New Studies in Archaeology)』
これという本が他にもたくさんあるに違いないと思う(マクロスキーの『Bourgeois Equality』では、参考文献を掲げるためだけに50ページも費やされている)。何か肝心な本を見逃していないだろうか?
〔原文:“Big books on the big question”(The Enlightened Economist, March 16, 2016)〕