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Björkegren, Lindahl, Palme & Simeonova なぜ教育のある親の子供達は健康なのか:環境要素と遺伝要素 (2021年3月11日)

VoxEUのコラムの翻訳です。

裕福な家庭の子供達は貧しい子供達よりも健康的である事がおおいことはよく知られている。しかしそういった健康状態の原因が遺伝的なものか環境的なものなのかを区別するのは依然として困難だ。我々はスウェーデンの子供達についての大規模なデータを用いて、遺伝上の親に育てられた子供達と養子となったものたちを比較し、両親の教育水準と子供達の長期的な健康状態との間のつながりは、認知・非認知スキルの形成から健康に関連する生活習慣といった媒介要因によるものである事、そして主たる要因は子供達の人的資本への投資である事を発見した。

恵まれた家庭の子供達は貧しい子供達よりも健康的である。家族の社会経済的ステータス(SES)と子供達の健康との間のこの正の関係は、さまざまな国での数多くの研究で確認されている(レビューとしてはCurrie 2009を参照されたい)。この関係は子供時代に限ったものではない。家族のリソースと健康の間の正の相関は、子供達が大人になってからも続き、不遇なバックグラウンド出身の人達の死亡率の高さにつながっていく(Palme and Sandgren 2008)。またこれは社会における健康や健康格差についての全般的な教育の格差を理解する上での重要な要素でもあるかもしれない(例えば、Currie et al.2018、Lochner 2011、またはJanke et al.2020)。

親の教育における健康勾配(訳注:親の教育格差と子供の健康格差の関係)は、親のSESと子供の健康に関連した家庭と環境の要因の間の因果関係を捉えているのかもしれない。しかし、観察された関係からではこの勾配が選択によるものである可能性を否定できない。SESグループ間の遺伝的差異が世代間で伝達されているのかもしれないからだ。関係全体のうち、どれだけが因果関係によるもので、どれだけが選択のメカニズムによるものなのかを区別するには、親子間の遺伝的なつながりがないデータを入手する必要がある。

我々の論文(Björkegren et al.2020)は、生物学上の親と養子となった子供達に関するスウェーデンのデータを用いて、親のSESと子供の健康の間の関係を決定する因果関係と選択メカニズムを調査した1 。まず最初に、母集団の中で成人の健康と親の教育の間に正の関係がある事を確認した。親が大学教育を受けている世帯の子供達は、親が初等教育しか受けていない世帯の子供達に比べて、大人になってからの健康状態が平均して6パーセンタイルランク近く良好であった。この結果は、子供世代300万人以上の人達に基づいたものだ。次に我々は健康状態についての親の教育による勾配が、生まれる前の要因(主に遺伝的な違いに起因する)と生まれた後の要因(主に社会や自然環境の違いに起因する)にどの程度関連するのかを調べた。我々が利用したのは生物学上の親と養親の両方の教育水準を確認できたスウェーデン生まれの約11,000人の養子による大規模なサンプルだ。生物学的な母親について特定されている人を対象にすると、サンプルは2倍になる。これらのサンプルを用いて、子供達の長期的な健康状態や死亡率と親の教育レベルとの関係を、出産前の要因による部分と出産後の要因による部分に分解した。

我々の分析結果は、出生前と出生後の両方の要因が親の教育レベルと子供達世代の健康状態との間の確認されている正の関係に寄与していることを示唆している。入院データに基づく2つの健康指標の結果は、強い有意な関連と、これら2つの要因がほぼ同じ影響をもつ事を示しているのだ。しかし死亡率に関する結果はこれらの結果を部分的にしか確認しない。子供の死亡率と養親の教育との間に有意な相関が見られるが、生物学上の親との間には有意な関連が見られないのだ。これらの推定を母集団における関係の推定と比較することで、養子について得られた我々の推定がとても良く的を射たものであることが確認できる。感度分析は、これらの発見は養子が無作為に養父母家族に割り当てられていない場合や、養子縁組後に養子と生物学上の親が接触した場合にも頑健であることを示している。

我々は養父母の教育と養子の健康との間の強固な関係の背後にある異なるメカニズムについても検証した。疫学的な文献では、健康状態の違いの背後にあるのではとされるメカニズムは、それぞれ「ライフコース」仮説と呼ばれるものと、「経路」または「潜伏」仮説と呼ばれる2つのグループに大別されることが多い(例えば、Marmot et al.2001やCase et al.2005を参照)。「ライフコース」仮説とは、幼少期を含む個人のライフコース全体における環境要因が、後の人生での健康状態に個別かつ独立した影響をもつ可能性があるというものである(幼少期の環境要因の長期的影響については、Almond and Currie 2011を参照)。「経路」仮説では、親の教育勾配は、スキルや健康に関連する生活習慣の形成など、さまざまな媒介要因を通じて形成されるとなっている。

我々のデータを用いると、子供の初期の健康状態を(生物学上の親の結果を通じて)条件付けと、成人期初期に測定された重要な媒介因子の記録を行う事ができる。我々は、健康状態についての親の教育勾配について、3つの経路を検討した。第一に、子供自身の教育水準を介して効果が発揮される可能性を検討した。これまでの研究(Björklund et al.2006など)は養子縁組をした親の学歴が子供達の学歴と正の関係にあることが示している。教育が健康に与える因果関係の程度、これについては学会でまだ議論されている(例えばGalama et al.2018)ものではあるが、とにかくその程度に応じて親の教育と子供達の健康の相関は、子供達の教育レベルと長期的な健康を結びつける経路によるものでありえる。第二に、認知スキルと非認知スキルの形成を通じた経路を調べた。先行研究では、これらのスキルと健康との間に強い関連性があることが示されている(Conti et al. 2010)。

我々が分析する3つ目の媒介要因は、健康に関連した生活習慣の形成である。教育水準の高い親は、より良い食生活や、アルコールやタバコをあまり嗜まないといった健康に関連する行動を伝えているのではないかと考えられる(Cutler and Lleras-Muney 2006など)。このような習慣は子供にダイレクトに長期的な影響を与えるのかもしれないし、あるいはよりありそうなのが、これが後の人生での健康状態に反映されるような習慣を子供の中で形成するのかもしれない。このことを検証するために、兵役についた思春期と成人期初期の男性から得られた健康状態(BMIと体力)を使用した。

この媒介分析の結果は、養父母の教育と子供達の長期的な健康との相関は、全面的に媒介変数によって決まる事を疑問の余地なくしめしており、「経路」モデルを支持している。つまり子供達の人的資本への投資によるものが主である事をしめしている。特に重要なのが、認知スキルと非認知スキルの形成だ。我々の研究結果は、相関の62%以上が認知・非認知スキルの形成により、約26%が子供達の教育レベルに、そしてわずか12%が人生の初期、形成期における健康関連行動の形成に起因することを示唆している。

参照文献

Almond, D and J Currie (2011), “Human capital development before age five”, Handbook of Labor Economics 4: 1315–1486.

Björkegren, E, M Lindahl, M Palme and E Simeonova (forthoming), “Pre-and Post-Birth Components of Intergenerational Persistence in Health and Longevity Lessons from a Large Sample of Adoptees”, Journal of Human Resources, forthcoming.

Björkegren, E, M Lindahl, M Palme and E Simeonova (2020), “Selection and Causation in the Parental Education Gradient in Health: Lessons from a Large Sample of Adoptees”, NBER Working Paper 28214.

Björklund, A, M Lindahl and E Plug (2006), “The Origins of Intergenerational Associations: Lessons from Swedish adoption data”, The Quarterly Journal of Economics, 999–1028.

Case, A, A Fertig and C Paxson (2005), “The lasting impact of childhood health and circumstance”, Journal of Health Economics 24: 365–389.

Conti, G, J Heckman, J and S Urzua (2010), “The education-health gradient”, American Economic Review 100(2): 234–38.

Currie, J (2009), “Healthy, Wealthy and Wise: Socioeconomic Status, Poor Health in Childhood, and Human Capital Development”, Journal of Economic Literature 47(1): 87–122.

Currie, J, H Schwandt and J Thuilliez (2018), “When Social Policy Saves Lives: Analysing Trends in Mortality Inequality in the US and France”, VoxEU.org, 10 August.

Cutler, D M and A Lleras-Muney (2006), “Education and health: evaluating theories and evidence”, NBER Working Paper 12352.

Galama, T, A Lleras-Muney and H van Kippersluis (2018), “The Effect of Education on Health and Mortality: A review of the Experimental and Quasi-Experimental Evidence”, Oxford Research Encyclopedia of Economics and Finance, Oxford University Press.

Janke, K, D Johnston, C Propper and M A Shields (2020), “The causal effect of education on chronic health: Evidence from the UK”, VoxEU.org, 8 March.

Lochner, L (2011), “The impacts of education on crime, health and mortality, and civic participation”, VoxEU.org, 17 October.

Marmot, M, M Shipley, E Brunner and H Hemingway (2001), “Relative contribution of early life and adult socioeconomic factors to adult morbidity in the Whitehall II study”, Journal of Epidemiology and Community Health 55(5): 301–307.

Palme, M and S Sandgren (2008), “Parental income, lifetime income, and mortality”, Journal of the European Economic Association 6(4): 890–911.

  1. 別の論文 (Björkegren et al、出版予定)において、我々は関連しているが別個の疑問である健康の世代間持続についての環境と遺伝の要素を養子のデータを用いて研究している。 []

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