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ティム・デュイ「イエレン議長デビュー」

Tim Duy “Yellen’s Debut as Chair“(Tim Duy’s Fed Watch, February 11, 2014)


ジャネット・イエレンが下院金融サービス委員会においてほぼ一日中続くような骨の折れる証言を行ったが、これは彼女が連銀議長に就任して以来初となる公の発言だ。この証言によって、かなりの政策継続性を期すべきことがはっきりした。事実、彼女はそれを明言した。テイパー1 は続くものの、2015年まで続くゼロ近傍の金利予想もそれは同じだ。Fedが現在の道程から別の方向に舵を切るには、何らかのよりずっと興味深いデータが必要とされるだろう。 [Read more…]

  1. 訳注;大規模資産購入の購入ペースの減少 []

ティム・デュイ「敬意と所得の平等」

Tim Duy “On Respect and Income Equality” (Tim Duy’s Fed Watch, January 06, 2014)

補足1:先日訳したノア・スミスのポストへ、タイラー・コーエンに続きティム・デュイが反応したもの。このテーマについてはhimaginary氏マンキュークリス・ディローコーエン記事のコメント欄を紹介しているので興味ある方はそちらもどうぞ。
補足2:本文中に引用されている映画やアダム・スミスの著作にはそれぞれ邦訳版が存在するが、ここでの訳は独自に行ったものなので注意。


私たちに必要なものは所得の平等ではなく敬意の平等であるとして、ノア・スミスが在りし日を思って嘆いている

このままじゃいけないと思う。どれだけのお金を稼ぐかに関わらず、非熟練労働者の一生懸命な仕事が社会交流の中で価値あるものと見なされる社会へと立ち戻りたい。良き親、良き隣人であることが、ウォール街で100万ドル稼ぐのと同じように敬意を払われるような社会へと立ち戻りたい。

つまり、僕は僕らの「デモクラシー」を取り戻したいんだ。僕らには敬意の再分配が必要だ。

私が最初に思ったのは、「そんな世界が今までに存在したことはあるのか」というものだった。おそらくは私より幾分年上の人のほうが詳しいだろうが、私が心配するのは、そうした牧歌的な過去観は1950年代のシットコムから得られるものであって、そこからはアフリカのアパルトヘイトのような不都合な問題は排除されているということだ。 [Read more…]

ティム・デュイ 「量的緩和の終わりの始まり」(2013年12月18日)

●Tim Duy, “The Beginning of the End for Quantitative Easing”(Tim Duy’s Fed Watch, December 18, 2013)


先日開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)は、バーナンキ議長にとって任期中最後のFOMCだった。バーナンキ議長は、FOMC後の記者会見の席上で、量的緩和の終了に向けた今後の計画を明らかにし、その概要の説明を行った。債券の月あたりの購入額をこれまでよりも100億ドル減らす1 という今回の決定は、その計画の第一歩というわけだ。テーパー(taper;量的緩和の規模縮小)に向けた今回の決定は、経済危機の最中における非伝統的な試みからの離脱(出口)を意味しており、バーナンキ議長時代の最後の締め括りにふさわしいものであると言えよう。FOMC後のマーケットの反応を見る限りでは、長期金利はわずかながら低下する一方で株価は急騰しており、あの6月の(将来的にテーパーに乗り出す可能性を示唆した)不幸な記者会見と比べると、バーナンキ議長率いるFOMCメンバーの面々は今回に関してはかなり巧みに事を運んだと言えるだろう。マーケットの今後の注目は、「FF金利(フェデラルファンド金利、政策短期金利)の誘導目標が引き上げられるのはいつになりそうか?」という点に寄せられることになるだろう。

FRBが債券購入プログラムをどうにかして終わらせたがっているらしいことは随分前から知られていたが、マーケットから「テーパーは金融引き締めを意味する」と受け止められることなしにテーパーに踏み出すにはどうしたらいいかということがFRBにとって長らく懸案となっていた。そこでFRBが打った手というのが、「フォワード・ガイダンス」推しだった。短期金利の今後の行方に関する予想に働きかけることを通じて、長期金利の上昇に歯止めをかけようというわけだ。FRBがテーパーに踏み切るのは時間の問題と予測されてはいたものの、直近の3回のFOMCのどこでその決定が下されそうかという点についてはアナリストの間で意見が大きく分かれており、どの意見も大して確信はなかった(私自身はどう予測していたかというと、年内はテーパーに踏み切られることはないだろうと見込んでいた)。

FOMCの声明に目をやると、テーパーに踏み切ることを正当化する理由として、政策目標の達成に向けて前進が見られることが挙げられている。声明文から該当箇所を引用しよう。

「雇用の最大化」の達成に向けて着実に前進が見られることに加えて、雇用情勢の今後の見通しが改善傾向にあることもあり、今回我々は債券購入のペースを若干ながら緩めることを決定した。

先日明らかになったばかりの雇用統計で失業率が低下していることが報告されているが、そのことがテーパーを決める最後のダメ押しとなったのだろう。FOMCの声明では、雇用の回復ペースが今後もこのまま続くことにこれまでよりも大きな信頼が置かれているが、その理由として2点挙げられている。政府による財政緊縮(財政政策の引き締め)の手が緩められつつあることがまず一つ目の理由。

財政政策は今のところ経済成長の足かせとなっているが、今後はその程度も弱まっていく2 ものと思われる。

(景気の)下振れリスクと上振れリスクのバランスがおおよそ釣り合っているというのが二つ目の理由。

金融政策の面で適当なサポートが伴う限り、経済成長のペースは次第に速まり、失業率はFOMCに課せられた法的責務に合致すると判断される水準にまで徐々に低下するものと予想される。マクロ経済および労働市場の今後の見通しに関しては、下振れリスクと上振れリスクのバランスがほぼ釣り合う方向に向かいつつあるものと判断される。

声明文を読む限りでは、テーパーに踏み切るかどうかを決めるにあたって、実際の(足許の)インフレ率の動向はほぼ無視されているようだ。テーパーに踏み切ったのは、予想インフレ率が安定していて今後も安定したままであると予測されるため、ということのようだ。

FRBは閾値(threshold)の引き下げ3  に動くのではないかと予測する声もあったが、今回のFOMCではそのような決定は下されなかった。その代わり、FF金利が今後もしばらく据え置かれるままであることを強調するために、次のようなかたちでフォワード・ガイダンスの強化が図られることになった。

こういった一連の要因の評価を踏まると、インフレ率がFOMCの長期的な目標(ゴール)である2%を下回り続けると予測されるようであれば、失業率が6.5%を下回った後もしばらくの間はFF金利の誘導目標を現在の水準に据え置くことが適当だと思われる。

どうやらFOMCメンバーの面々は、閾値を変更する気はないようだ。閾値を変更しなくても短期金利の今後の行方に関する予想に影響を及ぼせるのなら、何も慌てて「閾値の変更」に乗り出さなくてもよいという考えなのかもしれない。政策の伸縮性(flexibility)を確保するために、今後いつか必要となった時の備えとして「閾値の変更」という選択肢を残しておこうという考えなのかもしれない。

今回のFOMCでは、準備預金に対する金利(IOR;準備預金付利)を引き下げる可能性が仄めかされることもなかった。IORを引き下げてもそれほど大きな効果はないというのがバーナンキ議長の考えなのかもしれない。バーナンキ議長は、記者会見の席上で、「今のところ、信用状況はタイトではない」と語り、銀行貸出が伸び悩んでいる原因は借り入れる側の意欲と能力にあると指摘した。「銀行貸出が伸び悩んでいるのは、需要側(資金を借り入れる側)に問題があるからである」+「IORの引き下げというのは、供給側(資金を貸す側)に働きかける政策手段である」→「それゆえに、IORを引き下げてもそれほど大きな効果はない」・・・とのロジックがバーナンキ議長の脳内では展開されているのかもしれない。

今回の決定を通じて明らかになったことがある。それは何かというと、FOMCが予測する通りのペースで経済が成長を続けたとすれば、FOMCの会合が開かれる度に債券の購入額が100億ドルずつ減額されていき、それが2014年の終わりまで続く4、 ということだ。新たに得られたデータの内容次第で債券購入のペースは変わり得るとバーナンキ議長が強調していることは確かだが、今しがた素描したシナリオ5 はFOMCメンバーの予測に沿うものでもあることは明らかだ。

今回の決定を通じて明らかになったことは他にもある。どうやらFOMCメンバーの面々は、量的緩和をFF金利の操作に代わるもの(FF金利がゼロ%に達した後に金融緩和を推し進める代役)とは見なしていないようなのだ。FF金利の操作(あるいは、フォワード・ガイダンス)と量的緩和とは別々の手段であり、量的緩和はFF金利の操作(あるいは、フォワード・ガイダンス)を補完するものと見なしているようなのだ。量的緩和はタームプレミアムの引き下げを通じてその効果6 を発揮するわけだが、通常時においてはフォワード・ガイダンスを通じて同様の効果をもたらすことができるというのが彼らの考えのようである。また、量的緩和には様々なコスト――例えば、タームプレミアムへの働きかけ(という経験の少ない政策手段の運営)に伴う不確実性だったり、大きく膨らんだバランスシートの管理に伴う不確実性――が伴うが、FRBとしてはそういったコストが(量的緩和がもたらす)便益を上回らないうちに債券購入プログラムの縮小に乗り出したいと考えたようだ。量的緩和がもたらす便益は小さくなってきており、その代わりにフォワード・ガイダンスに頼ることにしようという意思を示そうとしたようだ。

【今回のエントリーの要点】FRBは、過去数年間にわたって、数々の歴史的な瞬間を演出してきたが、FOMCの今回の決定(テーパーの開始)はさらなる歴史的な瞬間の一つであると言える。おそらく今後は、テーパーや債券購入を巡る話題に立ち返ることはないだろう。新たに得られたデータに劇的な変化が見られない限りは、FRBが向きを変える7 ことはおそらくないだろう。今後の争点は、「FF金利が引き上げられるのはいつになりそうか?」(「経済情勢の変化に応じて、FF金利が引き上げられるタイミングにどのような違いが生じそうか?」)という点に移ることになるだろう。

  1. 訳注;債券の購入額を月850億ドルから月750億ドルに縮小する []
  2. 訳注;財政緊縮の規模が縮小されるのに伴って、財政政策が経済成長の足かせとなる程度も弱まっていく、ということ []
  3. 訳注;FRBは、インフレ率が2.5%を下回っているか失業率が6.5%を上回っている限りは、FF金利を現状のゼロ%近辺の水準に据え置くと約束している(これが「フォワード・ガイダンス」と呼ばれるもの)が、FF金利を引き上げるかどうかの基準となる「インフレ率2.5% or 失業率6.5%」が閾値と呼ばれている。閾値の引き下げというのは、例えば、失業率に関する閾値を現在の6.5%よりも低い水準に見直す(例えば、6.0%に引き下げる)ことを指している。 []
  4. 訳注;2014年の終わり頃に債券購入プログラムが完全に終了を迎える []
  5. 訳注;債券の購入額が100億ドルずつ減額されていき、2014年の終わり頃に債券購入プログラムが完全に終了する []
  6. 訳注;各種金利の低下や資産価格の上昇など []
  7. 訳注;債券購入額の規模を増やす []

9月に資産購入縮小開始? by Tim Duy

Tim Duyはオレゴン大学経済学教授であり、かつて米財務省に所属し、国際関係部門にてエコノミストとして、G7グループでは金融機関の政治的経済的コンサルタントして勤務。連邦準備と外国為替市場のモニタリングを任務とした。オレゴン大学よりPh. D. (経済学)取得。


Septaper or not? – Tim Duy’s Fed Watch by Tim Duy from Tim Duy’s Fed Watch


週末のお楽しみに加えて、そもそもどうしてこの資産購入ペースを縮小の議論にたどり着いてしまったのかということについて悩むことに週末の結構な時間を費やした。結局のところ数字はそれほど悪くはないが、かといってすごく最高!ってわけでもなかった。はっきりさせておきたいのだが、楽観的な数字で今月は始まった。しかし、雇用報告はまたもやこれまで通りの冴えないものであることが明らかになった。手短にいうと、非農業部門雇用者数はわずかな増加を続けているってことだ。201308062045.jpg

12ヶ月平均はそれほどひどく残念というほどではないが、たった一回あった飛び抜けた月の影響でもある。さらにいえば、不完全雇用指標は速いスピードで改善してるなんていえたシロモノではない。

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労働市場の緩みは大きい。同様に、インフレ率はFRBのターゲットにちゃんと向かってはいない。

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これらのどれも目新しいものではない。そしてこれらが今年の6月19日にベン・バーナンキ連邦準備議長をしてQEの出口戦略(exit path)のアウトラインを示すことを思いとどまらせることもなかった。それにしてもそもそもなぜそのような出口戦略の概略を示さなければならないのだろう?私が思うにその理由はFOMC声明のこの文にある。

購入する資産のサイズ、ペース、そして構成を決めるにあたって、委員会は経済的目的への進捗状況と同様に、そのような資産購入のもたらすおおよその効果とコストを適切に考慮していく。

バーナンキは資産購入—明らかに経済的目的の達成に向かっていることを示している—を終えるきっかけとして失業率7%を目安にすることに強く拘っているように見受けられる。事実、いまのペースで減少していくと、2014年の非常に早い時期にターゲットに到達するであろう。

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もし失業率7%が実際に重要な水準であるならば今すぐ資産購入ペースを減らすべきである。さらに言えば、失業率の減少は、概ね市場予想値に一致するGDPの推移に連動している。

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GDO成長率は財政支出の縮小にともなって予想されたとおり下落している。もし今後も予想が正しいとすれば、今年の下半期にGDPは加速するであろう。よってFRBの視点に立てば、概ね市場予想に整合的な見通しという意味で彼らの目的(失業率)に向かって大きな改善を遂げているところが分かるであろう。さらに金融不安のリスクという形でQEのコストが上昇しているとも考えられる。

しかし、インフレは?ギャップは?FRBはおそらくなにかまずい状況にあるってことに注意しよう。もしフィリップスカーブビューの立場をとるなら、失業率はインフレ上昇圧力がかかるレベルに急速に近づいていることが予想されるだろう。そしてそのような圧力が持ち上がってくる前に、FRBは間違いなく金融緩和を弱めはじめるであろう。そしてその圧力を取り除くための時間は、少なくとも失業率の推移を元に考えれば、どんどんなくなっている。だから資産購入から徐々に退きたいのならば9月は重要なタイミングになるってことがわかるだろう。長く待つほど資産購入の禁断症状に陥るリスクが高まるのだ。

そしてもしバーナンキが6月に資産購入ペース縮小を持ち出すことで何かしらの花火を打ち上げたと考えるなら、財政支出縮小のインパクトが消えたあとに訪れるなにかしらのとんでもない数字が現れて、突然FRBが資産購入の電源を引っこ抜くことを想像してほしい。

さらに今度は別の問題も持ち上がる。資産購入縮小に先立って財政政策の効果が徐々に弱まるのを確かめるのは理にかなっている。しかし、我々はその数字は第4四半期になるまで見ることができない。そしてその時点では失業率7%のまさにその頃を迎えているはずだ。繰り返すが、FRBはQEの電源をいきなり引っこ抜く状況に陥りたいと思う?

「でもでもでも、完全雇用の指標をもう一回見てよ」って君は言うだろう。たしかにインフレは失業率が7%、いや6.5%でさえも現実的ではない。でも、FRBもそのことは既に言及してる。金利に関する見通しのなかで:

非常に緩和的な金融政策スタンスを維持する期間の決定において、委員会は、労働市場の状態を測る追加的な指標、インフレ圧力とインフレ予想の指標、そして金融情勢分析を含むその他の情報も考慮する。

よって、上述の文脈から少なくともバーナンキが資産購入規模を縮小させようとする動きはリーズナブルであると私は考える。しかし、市場の予想通り9月に縮小を始めるのだろうか、それとも今年の終わりまで待つのだろうか?金利の上昇や各種の指標、そしてFRBからの発信から、彼らが今年の終わりからスタートさせるだろうと議論することはできる。しかし、新しいレジームへの調整は既に始まっていることから直ちに縮小を開始させるだろうと議論することも可能だ。

データやFRBからの発表にもかかわらず、6月19日以前の時期に比べて金利が高止まりしていることに注意する必要がある。その日、バーナンキはハッキリと市場予想をリセットした。FRBが資産購入のペースを加速させることに積極的でない限りFRBが6月19日をひっくり返すと予想するのは難しい。よって、FRBは近い将来に縮小を開始するか、縮小開始を遅らせて、量的緩和を突然ストップさせるのかのいずれかの立場をとることが予想される。前者は多くの関係者に予想されている動きであり、金利への大きな影響はないが、後者は金利への大きな影響が懸念される。いずれにせよ、9月のタイミングを逃せば12月が縮小開始の時期という予想が固くなる。実際、市場関係者はタイミングの遅れは、後の緩和縮小ペースの加速を意味することから、9月を逃すことは金利を低めるのではなくむしろ高める残念な結果になりかねない。

ボトムライン:資産購入規模縮小開始時期が9月になるかどうかは非常に不透明である。FRB発表や最近のデータはさらに不透明感を増すものである。しかし、フィリップスカーブビューの視点から考えると、失業率の安定的な低下がFRBの立ち位置をどれだけ落ち着かないものにしているか、私にはよく分かる。この状況は彼らにとっては彼らの見通しが正確であると完全に確信を持てるようになる前に緩和を縮小開始の決断を迫るようなものであるかもしれない。正確な見通しの遅れは現在予想されているよりも非常に積極的な引き締めをもたらす可能性がある。それゆえ私は縮小開始へのハードルは低く、ゼロ金利からの金利引き上げのハードルは高いと考えるようになったのである。さらに、金利上昇はもはやそこまで近づいているため、資産購入縮小開始から生じるコストはおそらく低い。もはや9月か12月かは大きな視点からは無意味である。とはいえ、私は12月ではなく9月である可能性が高いと見ている。なぜなら10月にプレスカンファレンスが予定されていないからである。