ジェイソン・コリンズ 「嫉妬という感情がこの世から無くなったとしたら」(2011年8月17日)

誰かに嫉妬(しっと)するのが減ると、幸福度が増すかもしれない。でも、嫉妬という原動力が失われるせいで、地位も富も権力も得られずに、異性(配偶者)を惹きつけるのが難しくなるかもしれない。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/23338654

ブライアン・カプラン(Bryan Caplan)が次のように述べている

自分よりもお金を持っている相手に嫉妬を抱くようなら、打倒すべきなのは「格差」ではなく「嫉妬」だと言いたい。「嫉妬を感じるというのは、人間に埋め込まれた本能なのだ」という反論はその通りだとしても、的外れなのだ。

・・・(略)・・・

「人間に埋め込まれた本能」だからといって、びくともしないってわけじゃない。程度の差はあれ、誰もが嫉妬を感じるかもしれない。しかしながら、嫉妬という感情を操(あやつ)れる余地はたくさんある。今よりも嫉妬深くなくなるのは不可能じゃないのだ。

自分を見つめよ。これまでにどれだけの幸運に恵まれたかを思い返せ。 誰かが手柄をあげたら称えよ。誰かと比べようとするのではなく、自分を磨くのに注力せよ。嫉妬深くない人たちと一緒に過ごす時間を増やせ。

これまでの歴史の中で、嫉妬を感じた誰かしらが子孫を残すのに秀でていたからこそ、嫉妬という感情が「人間に埋め込まれた」のだ。誰かしらが成功を収めたのは、嫉妬のおかげだったかもしれないのだ。誰かに嫉妬を抱いて、その誰かに負けないくらいの地位や富や権力を手に入れようと奮起したおかげかもしれないのだ。その誰かに負けないくらいの地位や富や権力を手に入れたからこそ、異性(配偶者)を惹きつけやすかった(子孫を残しやすかった)のだ。ところで、デビッド・ヘンダーソン(David Henderson)がカプランの肩を持つようにして、嫉妬という感情は「自滅的」と特徴付けている。 進化論的な観点からすると、「人間に埋め込まれ」てこんなにも広まっているわけだから、嫉妬という感情が(平均的には)「自滅的」であったはずはなかろう。昔は「自滅的」じゃなかったけど、今になって「自滅的」になったんだろうか? そういう証拠は寡聞にして知らない。

嫉妬という感情がこの世から減ったとしたら――あるいは、この世から無くなったとしたら――、どうなるだろう? 今の世の中よりも活力もなくて面白みもなくなるかもしれない。創造性も損なわれるかもしれない。誰かに対する嫉妬が原動力となって発明をしたりビジネスをはじめたっていう人はどのくらいたくさんいるんだろうね? 嫉妬という感情には、良い面もあるのだ。

嫉妬するのを抑えよというカプランの要求が受け入れられたとしても――大勢を納得させるのは無理だとは思うけれど――、一時的な成功に終わるかもしれない。誰かに嫉妬するのが減ったおかげで幸福度が増す人もいるかもしれない。でも、嫉妬という原動力が失われたせいで、地位も富も権力も得られずに、異性(配偶者)を惹きつけるのが難しくなる(子孫を残すのが難しくなる)かもしれない。その結果として、次の世代になると「嫉妬を感じない」人の数が減るかもしれない。嫉妬という感情が息を吹き返すわけだ。

ともあれ、嫉妬するのを少しでも減らすために、カプランのアドバイスを実践してみようと思う。いつもうまくいくわけにはいかないだろうけれど。


〔原文:“Envy has its benefits”(Jason Collins blog, August 17, 2011)〕

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