切れ者のブレンダン・ナイハン(Brendan J. Nyhan)のおかげで知れたのが、アンナ・ゲトマンスキー(Anna Getmansky)&トマス・ゼイツォフ(Thomas Zeitzoff)の二人の共著論文(pdf)だ。
テロの「脅威」――テロに遭うかもしれないおそれ――は、有権者の投票行動にいかなる影響を及ぼすだろうか? 2001年以降、ガザ地区からイスラエル南部に向けて何度もロケット弾が発射されている。本稿では、ロケット弾の射程距離が時とともに徐々に伸びている事実に着目して、ロケット攻撃の脅威がイスラエルの総選挙における投票結果に及ぼした効果を浮き彫りにする。具体的には、ロケット弾の射程距離の変化がテロの脅威――テロに遭うかもしれない可能性――の外生的な変化を意味していることを明らかにした後に、イスラエルの総選挙における投票結果を比較した。比較したのは、ロケット弾の射程距離内にある場合――ロケット弾が飛んでくるおそれがある場合――の投票結果と、ロケット弾の射程距離外にある場合――ロケット弾が飛んでくるおそれがない場合――の投票結果である。本稿での計量分析の結果によると、テロの脅威――テロに遭うかもしれない(ロケット弾が飛んでくるかもしれない)というおそれ――のせいで、ロケット弾の射程距離内にある地域で右派政党の得票率が2~6ポイント(2~6パーセントポイント)高まった可能性が示唆されている。かなり大きな効果である。死傷者を伴うテロ事件(実際に起きたテロ攻撃)が有権者の嗜好や行動に及ぼす影響については先行研究でも探られているが、テロの「脅威」でさえも有権者の投票行動に影響を及ぼすことが本稿での分析によって示唆されているのだ。
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〔原文:“How do rocket threats affect Israeli voting behavior?”(Marginal Revolution, July 17, 2014)〕