今月(2003年10月)のはじめに、新しい20ドル紙幣が発行された。新紙幣がデビューしたわけだが、ちょっと変わったデビューだった。広告キャンペーンが展開されたのだ。総額で3200万ドルがかかっているらしい。まあまあの額だが、イベントを開催したり、紙面やネットに広告を出したり、テレビでCMを流すために使われたという。・・・(略)・・・テレビで頻繁に流れるCMを見ているうちに、当然の疑問が頭に浮かぶ。お金(新紙幣)をわざわざ宣伝するのは、なぜなのだろう?
どんなCMかというと、
CMの一つでは、眼鏡をかけた男性がATMで現金を引き出している。しかしながら、普段とは何かが違うようだ。背景に流れる陽気で躍動的な音楽がそのことを匂わせている。ATMから吐き出されたのは、新20ドル紙幣の束。その中の1枚を目の前に掲げて、じっくりと点検する男性(歩道を歩いている最中に20ドル紙幣を空中に掲げて、それに恍惚として眺め入るのは、いつだっていいものだ)。そこでナレーションが入る。「違いはすぐにわかります」。満足げな笑みが男性の顔に浮かぶ。再びナレーション。「新しく色が加わったのです。デザインが変わったのです」。花屋に入る男性。新しい20ドル紙幣で代金を支払う。それを受け取った店員は、おやっと思った様子。セキュリティが強化された(高度な偽造防止技術が施されている)ことを伝えるナレーション。新20ドル紙幣は、旧20ドル紙幣と同じく、20ドルの価値があることを受け合うナレーション。最後に一言。「より安全で、よりスマートで、より固いガード」(“Safer, smarter, more secure”)。
お金(新紙幣)をわざわざ宣伝する必要があるのはなぜかというと、偽造を防止するためだ。闇市場や海外でのドルの地位を維持するためだ。そのためにも、20ドル紙幣が生まれ変わったことを世界中に伝える必要があるのだ。
全文はこちら。情報を寄せてくれたユージン・ヴォロック(Eugene Volokh)に感謝。ところで、新しい20ドル紙幣はまだ手に入れていない。
〔原文:“How to advertise money”(Marginal Revolution, October 28, 2003)〕