タイラー・コーエン 「ジャネット・イエレンへの割り込み ~米国の政界におけるジェンダー・バイアスはいかほど?~」(2022年10月28日)

2001年から2020年までの間にイエレンだけでなくその他の男性のFRB議長(グリーンスパン、バーナンキ、パウエル)のうちの少なくとも誰か一人と公聴会で相まみえた経験がある議員らは、男性のFRB議長が発言している最中よりもイエレンが発言している最中に割り込む傾向が強いばかりでなく、男性のFRB議長に対するよりも攻撃的で強めの口調でイエレンに話しかける傾向にあることが見出された。なお、娘を持つ議員に関してはそのような傾向――男性のFRB議長に比べてイエレンに対してきつくあたる傾向――は見られなかった。
米財務省のホームページ(https://home.treasury.gov/about/general-information/officials/janet-yellen)より。

●Tyler Cowen, “Interrupting Janet Yellen”(Marginal Revolution, October 28, 2022)


米国の政治家たちの間で「ジェンダー・バイアス」はどのくらい蔓延(はびこ)っているのだろうか? 本稿では、米国の議員の間で広がる性差別(sexism)の効果を厳密なかたちで浮き彫りにするために、FRB議長が招聘(しょうへい)された議会の公聴会の議事録の分析を試みた。具体的には、2001年から2020年までの期間を対象に、(女性初のFRB議長を務めた)ジャネット・イエレンをトリートメントに指定した回帰分析を行った。その分析の結果はというと、2001年から2020年までの間にイエレンだけでなくその他の男性のFRB議長(グリーンスパン、バーナンキ、パウエル)のうちの少なくとも誰か一人と公聴会で相まみえた経験がある議員らは、男性のFRB議長が発言している最中よりもイエレンが発言している最中に割り込む(口を挟んで話を遮る)傾向が強いばかりでなく、男性のFRB議長に対するよりも攻撃的で強めの口調でイエレンに話しかける傾向にあることが見出された。なお、娘を持つ議員に関してはそのような傾向――男性のFRB議長に比べてイエレンに対してきつくあたる傾向――は見られなかった。ジェンダー・バイアスをはじめとしたあれやこれやの偏見は、一見すると何の関係もないように見える政策領域にも忍び込んで重要な役割を果たす可能性がある。民主主義における説明責任を確保したり行政を監視したりするためのメカニズムは、既成のジェンダー・バイアスをはじめとしたあれやこれやの偏見と無縁ではいられないやもしれないのだ。

ジェームズ・ビスビー(James Bisbee)&ニコロ・フラッカローリ(Nicolò Fraccaroli)&アンドレス・ケルン(Andreas Kern)の三人の共著論文より。「娘効果」の強さがまたもや立証されたわけだが [1]訳注;「娘効果」のその他の例としては、例えば本サイトで訳出されている以下の記事を参照されたい。 ●タイラー・コーエン … Continue reading、社会科学の分野でこのこと(娘を持つことに伴う様々な効果)が十分に論じられているかというと、そうとは言えないのが現状だ。

偉大なるケヴィン・ルイス(Kevin Lewis)経由で知ったネタ。

References

References
1 訳注;「娘効果」のその他の例としては、例えば本サイトで訳出されている以下の記事を参照されたい。 ●タイラー・コーエン 「娘のリベラル化効果? ~娘を持つ親は左寄りになる?~」/「娘の保守化効果? ~娘を持つ親は右寄りになる?~」
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