タイラー・コーエン 「貨幣需要は金利の変化に敏感に反応するか?」(2006年6月21日)

金利が上がったら、貨幣の保有量を減らす?
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EconLog ブログで、貨幣需要が金利の変化に敏感に反応するかどうか――貨幣需要の利子弾力性――をめぐって論争が繰り広げられている。ブライアン・カプラン(Bryan Caplan)の言い分は以下の通り。

「金利が上がったら、貨幣の保有量を減らしますか?」と経済学者たちに尋ねたことがあるが、「減らさない」と認めることが多かった。しかしながら、「減らすべき」と考えるように学者として訓練されているのだ! 経済学者ではない普通の一般人に同じ質問をしたら――「金利が上がったら、貨幣の保有量を減らしますか?」と尋ねたら――、大半は当惑するだけだろうというのが私なりの予想だ。

現金に話を限定するのであれば、カプランの言うことに大いに同意だ。しかしながら、(M1、M2、M3とかいう)広義の貨幣を問題にするなら、話はややこしくなってくる。名目金利が上昇すると、誰にとっても同じだけ実質金利が変化するかというと、そうじゃない。一人ひとりが体験するインフレ率は同じじゃない――日常的に購入する商品やサービスの組み合わせは人によって違う――からだ。すなわち、名目金利の高さは、実質金利の(個人間での)散らばりの大きさを伝える指標になるわけであり、そういう意味で将来の不確実性の度合いを測る指標になる可能性があるわけだ。名目金利が上昇しても、(期待収益率の高い資産の保有比率を高める方向へと)ポートフォリオの組み換えが試みられる結果として現金の保有量が減ることにはならないだろう。しかしながら、名目金利が上昇したら、実質金利の散らばりが大きくなる―― 将来の不確実性が高まる――せいで、広義の貨幣の保有量が減るとしても、私としては驚かないだろう。

名目金利が高まるとその後に不景気がやってくることをVAR(自己回帰)モデルを使って見出したリッターマン&ウェイス論文――Robert Litterman&Laurence Weiss (1985)――も思い出したいところだ。そうなる理由は誰にもわからないが、とにかくそうなのだ。VARモデルを使えば、名目金利の上昇が貨幣需要に及ぼす影響もきっと明らかになるはずだ。

フロイトの格言 [1] 訳注;「葉巻は、ただの葉巻に過ぎないこともある」(“Sometimes a cigar is just a cigar”)。をもじると、名目金利はただの「名目金利」じゃない――名目金利の変化が持つ意味が人によって違う――こともあるのだ。


〔原文:“Is the demand for money interest-elastic?”(Marginal Revolution, June 21, 2006)〕

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1 訳注;「葉巻は、ただの葉巻に過ぎないこともある」(“Sometimes a cigar is just a cigar”)。
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