前回の記事では,すごく密集していながらもあんなに素敵な都市を日本がつくりだしている「秘伝のタレ」とぼくが見込んでいるものを解説した.カギを握っている要素はいくつかある.その一つは,素晴らしい公共交通システムだ.このシステムのおかげで,人々は都心部に暮らすことなくすごくかんたんに都心で働いたり買い物したりできている.
東京の人たちが実際にどこに住んでいるかに着目すると,このことが見てとれる.ジョナサン・ノーランが Citydensity.com ですてきな新ウェブツールを用意している.これを利用すると,いろんな都市の人口密度を――つまり住人たちが実際にどこに住んでいるかを――〔中心部からの〕距離ごとにあれこれと比較できる.
さて,西洋のいろんな大都市と東京を比べてみると,都の中心部では東京が他より高密度になっているわけではないのがわかる.ところが,中心部から5キロ,10キロと離れていくと,東京の方がグンと密度を増していく――西洋の大都市の密度の下がり具合とは段違いだ.
実は,この点に関して香港や台北は西洋の都市に似ている一方で,ソウルは東京に似てる:
こんな具合に中心地からの距離に応じて人口密度がなだらかに下がっていくかたちになっているおかげで,東京とソウルは,ずっと多くの人たちを収めることができている.それでいて,そこにいる人たちがパリや香港やニューヨーク市よりも人がひしめいているような感覚を覚えることがない.
これを可能にしている要因は2つある.第一に,東京とソウルでは都心近くの郊外で建築物の高さ制限を緩和している.このおかげで,都心部よりもはるかに密度の高い建設ができている.第二に,どちらの都市もすごく優秀な鉄道網がある.これによって,人々は都心近くの郊外に暮らしつつ,いい仕事がある都心に通勤できている.
他の都市も,できることならこの開発パターンを踏襲すべきだ.大都市の都心に近い郊外に暮らせる人たちを増やせば,都心部の高額な賃料が下がる一方で,都市に暮らす人口が増やせるようになるし,その過程で生産性は向上し環境も保護される.
[Noah Smith, “At least five things for your weekend (#30)“, March 9, 2024]