ノア・スミス「流動性と AI『バブル』」(2025年11月23日)

アメリカ経済の未来は――そしてもしかするとアメリカ政治の未来も―― AI が大きく崩壊するかどうかにかかっている.以前の記事ではこう述べた――この問いは,投機や〔「いまのトレンドがこのまま続くだろう」という〕外挿的期待の伝統的な「バブル」プロセスの問題ではなくて,たんに AI が実質的なリターンを生み出す速度を世間が課題に推測しているかどうかにかかっている(日本語版).

でも,もしかしてぼくは間違っていたかもしれない.伝統的な「バブル」プロセスもここで働いてるかもしれない――〔みんなの動きに羊みたいについていく〕畜群行動や投機や「みんなに取り残されるのは怖い」心理ももっと作用していて,現実の AI 投資を突き動かしているかもしれない.そうだとしたら,現れていないか探るべき警戒信号は,投資家資金(流動性)の枯渇だ.

金融バブルの経済学モデルの多く,たとえば外挿的期待モデルや情報オーバーシュートモデルなどなどでは,人々がその狂熱に投げ込む現金の底がつきたときにバブルは終わる.なので,AI 投資家たちの現金が底をつきつつあるという記事をみかけると,ぼくは心配になる.

リサ・アブラモビッチ〔ブルームバーグのジャーナリスト〕: 投資家が保有する現金の比率は,現代で最低の比率にまで下がっています(11月のバンク・オブ・アメリカのファンドマネージャー調査).「2002年以来,現金比率が 3.7% 以下になったことは 20回ありました.そのすべての局面で,その後1~3ヶ月間に株価が下落し,アメリカ国債のパフォーマンスがこれを上回りました.

近い過去を見ると,Google や Meta といった巨大テック系企業は,自社利益から AI 拡大にお金を回してきた――あるいは,少なくともそうすることが可能だった.ところが,『ウォールストリートジャーナル』の記事によると,データセンター建設を進めている各社は,ただ自分の本業から現金を回すのではなくて,資金を借り入れなくてはいけなくなってきているらしい.

これは不吉だ.なにしろ,そのプロセスは永遠に続きっこないんだから.


[Noah Smith, “Liquidity and the AI ‘bubble,‘”Noahpinion, November 23, 2025]
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