タイラー・コーエン 「硬貨の額面の最適な組み合わせ」(2003年9月26日)

「ディオファントス方程式」を使うと、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数を最小化する「硬貨の額面の組み合わせ」を導き出せる。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/24480296

アメリカ国内の住居のどこかに転がっている硬貨の総額は、105億ドル。

アメリカ国内で行われる1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の枚数は、平均で4.7枚。

1セント硬貨(ペニー)が廃止されたら、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数が2.7枚にまで減る。

カナダ国内で行われる1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の枚数――カナダでは、1ドル硬貨も日常的に使われている――は、平均で5.9枚。カナダで1セント硬貨が廃止されたら、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数が3.9枚に減る。

「ディオファントス方程式」を使うと、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数を最小化する「硬貨の額面の組み合わせ」を導き出せる。10セント硬貨(ダイム)を廃止して代わりに18セント硬貨を新たに導入したら、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数を(4.7枚から)3.89枚に減らせる。10セント硬貨をどうしても発行し続けるというのであれば、32セント硬貨を新たに導入したら、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数を3.46枚に減らせる。現在発行されている硬貨(1セント、5セント、10セント、25セント、50セント、1ドル)をどれも廃止しないとするなら、18セント硬貨を新たに導入して、50セント硬貨(ハーフ・ダラー)を日常の取引でも(カジノ以外の場面でも)使うようにするというのが最善の組み合わせである。そうすれば、1回あたりの取引でお釣りとして支払われる硬貨の平均枚数を3.18枚にまで減らせるのだ。注意:暗算が苦手なアメリカ人の能力の低さは考慮されていない。

出典は、ディスカバー誌の(2003年)10月号の記事だ。

トーマス・サージェント(Thomas Sargent)& フランソワ・ヴェルデ(Francois Velde)の出色の一冊である『 The Big Problem of Small Change』(『小銭の大問題』)では、硬貨の額面の組み合わせがどのように進化してきたかが歴史的に跡付けられているだけでなく、額面の異なる硬貨同士の交換比率が固定されている理由――例えば、 25セント硬貨(クォーター)を手に入れるために差し出す必要のある10セント硬貨(ダイム)の枚数が日々変わるのではなく、常時同じである理由――も明らかにされている(中世に遡ると、額面の異なる硬貨同士の交換比率は日々変動していた)。サージェント&ヴェルデの二人によると、額面の異なる硬貨同士の交換比率が固定されるおかげで――それに加えて、その固定された比率で中央銀行が額面の異なる硬貨同士の交換に応じるおかげで――、硬貨の額面の最適な組み合わせに辿り着けるようになるという。そのためには、硬貨の偽造を防ぐために精巧な工夫を施(ほどこ)す必要があることも強調されている。

硬貨の使用法についての聞き取り調査の結果によると、アメリカ人の7%は硬貨をテーブルのぐらつきを抑えるために使っていて、73%はスクラッチくじを削るために使っているという。

18セント硬貨の導入を勧める提案(pdf)に対して、次のような嫌味を言っている人もいるらしい。「アメリカには、既に18セント硬貨が出回っている。カナダで発行されてるクォーター(25セント硬貨)っていうのがそれなんですけどね」。

追記:普通のアメリカ人が1年の間に取り扱う硬貨の総額は、およそ600ドル。1セント硬貨が支払いに使われるせいで、1回あたりの取引に要する時間が平均で3秒長くなっているらしい。

追々記ベインブリッジ教授の言い分によると、売上税があるせいで、1セント硬貨は絶対に廃止されないだろうとのこと。1セント硬貨が廃止されたら、物価が上昇するせいで歳出(政府支出)が10億ドル以上増えるという推計もあるようだ。


〔原文:“Penny facts and optimal denominations”(Marginal Revolution, September 26, 2003)〕

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