●Alex Tabarrok, “Russ Roberts, Guest Blogger!”(Marginal Revolution, March 25, 2004)
ジョージ・メイソン大学の同僚でもあるラッセル・ロバーツ(Russell Roberts)は、類稀な経済学者だ。寓話(邦訳『寓話で学ぶ経済学:自由貿易はなぜ必要か』)やロマンス作品(邦訳『インビジブルハート:恋におちた経済学者』)を物する一方で、経済学の分野で権威あるトップジャーナル(例えば、ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー誌)にいくつも論文が掲載された実績を持つ経済学者というのは、世界中を探しても彼くらいのものだ。
経済学者がロマンス作品を書く? 一体どんな内容? そうなのだ。経済学は「ロマンティックな科学」なのだ。信じられない? 論より証拠。ロバーツの『The Invisible Heart』の紹介文をご覧いただくとしよう。
(ワシントンD.C.にあるエリート高校で経済学を教える)サム・ゴードンは、資本主義の熱狂的な信者だ。政府による規制の大半は不必要であり、有害な場合さえあると信じている。ビジネスで成功を収めることは美徳の一つに数えられてしかるべきであり、経済活動の自由が保障されてこそ人類は繁栄すると信じている。その一方で、(サムと同じ高校に勤める女性教師で、学生たちに文学を教えている)ローラ・シルバーは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙よりもワーズワースの方が好き。勝者(成功者)を讃えるサムとは対照的に、ローラは敗者(犠牲者)に共感を抱く。政府は「市場」――サムが愛してやまない「市場」――の行き過ぎ(暴挙)から消費者や労働者を守るべきだというのがローラの持論だ。「世界をよりよくするためにはどうすればよいか?」という問題をめぐって、二人の間で激しい意見の応酬が繰り広げられる。それと同時進行するかたちで、彼らの住む町を舞台にもう一つ別のストーリーが展開する。企業の不正行為を監視する政府機関で局長を務めるエリカ・ボールドウィンに、冷酷極まりないCEOのチャールズ・クラウス。チャールズの不正を暴くために奔走するエリカ。異なる二つのドラマはどのようにして交錯するのだろうか? サムが辞職の危機に追いやられねばならなかったのはなぜなのか? エリカは捜し求めていた証拠を手にすることができるのだろうか? ローラはアダム・スミスの肖像写真を教室の壁に貼り付けているような男――サム――を愛することができるのだろうか?
●Alex Tabarrok, “The spiritual economist?”(Marginal Revolution, June 4, 2005)
お店でマッサージを受けていた時のことだ。私のチャクラ(あるいは、それに類したもの)を開こうと試みていた担当の女性が口を開いた。
「今日は素敵な一日を過ごされることでしょうね。どなたかにそう言われませんでしたか? お客様は愛のエネルギーに満ち溢れていらっしゃるようです。大変気前がよくて、寛大なお人柄(giving person)だとお見立てします。」
「えっ!!」と驚きつつも、私はこう返した。
「そのように言われたことは、これまでに一度としてありませんね。私は経済学者なんです。」
「あら・・・」とマッサージ師。しばらく口をつぐんだ後に、こうつぶやいた。
「すみません。私の見立ては、どうやら間違っていたみたいです。」
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