タイラー・コーエン 「口紅効果 ~景気が悪くなると、女性たちの間で美(外見の魅力)を高めるのに役立つ商品の購買意欲が高まる?~」(2012年6月27日)

不景気になると、女性たちの間で美(外見の魅力)を高めるのに役立つ商品の購買意欲が高まるようだ。その理由は、お金を持っていて生活基盤が安定している男性にアピールするため?
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/26506960

推測の域を出ないところもあるが、あれこれ考えてみるのも一興だろう。

現実のデータにしても、四通りの別々の実験にしても、同じ答えを弾き出している。「口紅効果」の存在が確かめられたのだ。我々が手掛けた実験(pdf)によると、不景気について書かれた記事を女子大生たちに読ませると、外見の魅力を高めるのに役立つ商品の購買意欲が高まる一方で、外見の魅力を高めるのに役立たない商品の購買意欲が低下することが見出された。さらには、不景気について書かれた記事を読んだ女子大生たちの間で化粧品/衣類/アクセサリーなどの商品(外見の魅力を高めるのに役立つ商品)の購買意欲が高まる背後には、お金を持っていて生活基盤が安定している男性にアピールしようという狙いが潜んでいる可能性も見出されている。

「口紅効果」について言及しているジャーナリストの多くが持ち出している理屈によると、不景気の最中に口紅の売り上げが伸びるのは、女性たちがお金をかけずに贅沢して自分を癒そうとしている結果だという。しかしながら、我々が手掛けた実験によると、値が張ろうがそうでなかろうが、美(外見の魅力)を高められるかどうかが鍵を握っているようだ。不景気について書かれた記事を女子大生たちに読ませると、お手頃な値段ではあるが美を高めるのにそんなに役立たないと見なされている化粧品や衣類の購買意欲は高まらない一方で、高級化粧品やブランド物の服の購買意欲は高まることが見出されているのだ。

さらには、女性本人の経済力は関係がないことも見出されている。不景気について書かれた記事を女子大生たちに読ませると、親や本人の経済力の如何を問わず、高級化粧品やブランド物の服の購買意欲が高まったのである。本人に経済力があるかどうか(本人がお金に困っているかどうか)にかかわらず、景気が悪化して経済情勢が不透明になると、お金を持っている男性を惹きつけるために女性たちがアピールを強めるようなのだ。

全文はこちら。情報を寄せてくれた VS に感謝。

〔原文:“The countercyclical asset? (a continuing series)”(Marginal Revolution, June 27, 2012)〕

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2 comments
  1. これまた安易な結論を引き出すものだね。
    アメリカの消費支出調査でも、この「口紅効果」は確かにありそうだと認められている。こちらのような実験などではなく、現実の経済活動の統計結果として!
    これによると既婚女性の行動にも現れており、男性の場合にも別の嗜好品(例えばアルコール類)で同じような行動が示唆されている。つまり、減収に応じて、より手に入れやすい嗜好品を求めるというのが確からしいのだ。
    どのような学問でも、まずは己のバイアスを確認することが必要である。女性研究者だからといってジェンダーバイアスから逃れられる訳ではない。それを安易に引用するコーエンもハア(^^;)という感じである。

    1. コメントありがとうございます。現実との食い違いがあるとするなら、実験では「購買意欲」が測られている――実際にお金を出させるわけではなくて、どうしたいかという思いを聞き出している――のも関係してるのかもしれませんね。本音では「ああしたい、こうしたい」と思っているけど、予算という制約があるので、本音通りの行動ができないこともあるかもしれません。ただ、この実験で聞き出されている「購買意欲」がその人の本音かどうかはわかりませんけれども。

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