●Alex Tabarrok, “The Economic Organization of a Prison”(Marginal Revolution, October 2, 2008)
第二次世界大戦中に戦争捕虜収容所でタバコが交換手段(貨幣)に転じた経緯についてはこちらの有名な論文(pdf)[1]訳注;この論文の概要については、本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●フランシス・ウーリー … Continue readingで詳しく論じられているが――赤十字によるタバコの配給の多寡に応じて、収容所内でブーム(好況)やスランプ(停滞)が発生したりもしたようだ――、タバコはアメリカの刑務所内でも長きにわたって貨幣の役割を務めていた。しかしながら、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のこちらの優れた記事によると、昨今はサバ(鯖)が囚人の間で人気の交換手段(貨幣)になっているらしい。
元囚人や服役中の囚人向けにコンサルティング業務を手がけている業者が語るところによると、連邦刑務所内でサバを貨幣とするサバ本位制が産声を上げたのは、2004年頃だという。2004年というと、連邦刑務所内での喫煙が禁止され、タバコ――刑務所内でそれまで貨幣の役割を務めていた商品――を刑務所内に持ち込むことができなくなった時期にあたる。
囚人たちには、ドルの代わりとなるものがどうしても必要だった。というのも、刑務所内に現金を持ち込むことが認められていなかったからである。刑務作業で得た給与――連邦刑務局によると、時給は最高で40セントとのこと――や家族からの仕送りは、現金で手渡されずに、特別な口座に振り込まれる決まりになっている。囚人たちが刑務所内の売店で食料や日用品を購入すると、その口座から代金が引き落とされるのだ。刑務所内での喫煙が禁じられ、それに伴って刑務所内からタバコが姿を消すと、売店で購入できる商品の中からタバコに代わる貨幣が探し求められた。・・・(中略)・・・連邦刑務所の多くでは、サバ(サバ缶)が貨幣として選ばれたのだった。
刑務所にサバを納入している業者に莫大なシニョリッジ(貨幣発行益)が発生しているらしい。
ムンツ氏によると、連邦刑務所内にある売店に納入したサバ(サバ缶、真空パックに詰められたサバ)の売り上げ総額は、昨年1年間で100万ドルを超える――ムンツ氏が連邦刑務所内の売店に納入した全商品の売り上げ総額のおよそ半分――という。サバは、ツナ缶、カニ缶、チキン缶、カキ(牡蠣)缶のどれよりも売れているという。
元囚人の一人によると、サバはドルの代わりにもってこいの品だという。その理由はというと、1缶(あるいは、1パック)あたり1ドル程度という安価で手に入れることができて、サバを好き好んで食べる囚人なんて――重量挙げにはまっていて、プロテインに飢えている人物を除けば――ほとんどいないからだという。
情報を寄せてくれたBrandon Fullerに感謝。
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●Tyler Cowen, “Induced innovation in prisons”(Marginal Revolution, September 6, 2003)
WIRED(ワイアード)のこちらの大変興味深い記事で、創意工夫に満ち溢れた囚人のエピソード――珍奇な道具を発明して、乏しい資源を最大限に活用している囚人の例――が紹介されている。
カリフォルニア州の刑務所に収監されたアンジェロは、コーヒーが飲みたくてたまらなかった。しかし残念なことに、電気ヒーター(浸漬ヒーター)を使ってインスタントコーヒーを作るわけにはいかなかった。刑務所内への電気ヒーター(浸漬ヒーター)の持ち込みが禁じられていたからだ。その時だ。同じ監房に入っていた仲間の一人があっという間に電気ヒーターもどきを拵(こしら)えたのだ。素材は、ノートのバインダーとして使われていた金具に、熱で溶けた歯ブラシ数本に、輪ゴム。
アンジェロは、その電気ヒーターもどきのおかげで、フォルジャーズのインスタントコーヒーに無事ありつけたのだった。
アンジェロによる刑務所内の事細かな観察記録とも言える『Prisoners’ Inventions』では、即席の電気ヒーターをはじめとして、およそ80品に及ぶ(刑務所内で生み出された)発明品が紹介されている――シカゴを拠点とするアート集団のTemporary Servicesとアンジェロ(というのは、本名ではなく仮名)の共著というかたちをとっている――。囚人たちは、砂糖水とトイレットペーパーを使ってサイコロを作れるだけではなく、刑務所内の照明を使ってビーフジャーキーを乾燥させることもできる。タバスコが入っていた瓶をシャワーヘッドに変えてみせることもできるし、監房内の机の上でグリルドチーズサンドイッチを作ることだってできるのだ。
Temporary Servicesのメンバーの一人は、次のように語っている。「映画の中で囚人が発明するものといえば、脱走(脱獄)するのに役立つものか、気分がハイになるものか、気に入らない相手(同じ囚人)を殺すのに役立つものくらいに限られています」 [2] 訳注;しかし、現実は違っている、という趣旨の発言。。
それにしても、旧ソ連時代のエンジニアの姿が重なって見えるね。
『Prisoners’ Inventions』のオンラインサポートサイトより転載
References
↑1 | 訳注;この論文の概要については、本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●フランシス・ウーリー 「戦争捕虜収容所の経済学」(2013年11月22日) |
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↑2 | 訳注;しかし、現実は違っている、という趣旨の発言。 |
マヤの遺産むづかしい。。
檻の中でも『わー持て身を(keep high)』びた、お子様ランチを!かな。激安のイオンでもよくこんな感じのmonoとかが売っている。きっとオイディプス方面への欲望。だのぃ。ほんとキーがあるとすれば、そこだなァ・・・。
おもしろい記事の解放をありがとうございます。