タイラー・コーエン 「『マネー・ボール』の経済学」(2011年12月8日)/ アレックス・タバロック 「どんな市場も効率的」(2011年9月25日)

オークランド・アスレチックスのGMを務めたビリー・ビーンは、知らず知らずのうちにアスレチックスの優位性を掘り崩してしまったようだ。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/3198083

ケヴィン・グリアー(Kevin Grier)と連名で、Grantlandブログ「野球の経済学」をネタにした記事を寄稿したばかりだ。一部を引用しておこう。

『マネー・ボール』が説く戦略がいくらか滑稽(こっけい)な帰結を招いている。球団の資金力(所属選手全員に支払われる年俸の総額)がますます物を言うようになってきているのだ。過小評価されている選手の発掘競争が激化した結果として彼らの年俸が上がっており、各球団のGM(ゼネラルマネージャー)にとって資金を集めることがますます重要になっているのだ。(オークランド・アスレチックスのGMを務めた)ビリー・ビーンは、長い目で見ると、ヤンキースのような金持ち球団の立場を強めることに手を貸してしまっていたのだ――ビーン本人は、そのことにほとんど気付いてなかったろうが――。1986年から1993年までのシーズンに関しては、年俸総額の違いによって勝率の差の2.2%が説明される。大金を投じても大して見返りは得られなかった(チームの「質」は大して高まらなかった)わけだ。ところが、『マネー・ボール』革命が起きた後の2004年から2006年までのシーズンに関しては、年俸総額の違いによって勝率の差の27.1%が説明されるという結果になっている。大金を投じるべき理由が強まっているわけだ。

ちなみに、我々が記事を書く上で利用した情報源の一つが、ヤーン・ヘイク(Jahn K. Hakes)&レイモンド・ザウアー(Raymond D. Sauer)の二人の手になるこちらの優れた共著論文だ [1]訳注;ヘイク&ザウアー論文については、本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●ラルス・クリステンセン … Continue reading

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セイバーメトリクスは強力な武器になるものの、「カジノの運営側にカードカウンティングの秘策がバレてしまえば、ブラックジャックでそう長くは大儲けすることはできない」。

The New York Times:オークランド・アスレチックスは、並みのチームに逆戻りしてしまったようだ。過去3シーズンの成績を合算すると、231勝254敗。今シーズン(2011年度シーズン)もプレーオフに進めそうにない。(オークランド・アスレチックスのGMを務めた)ビリー・ビーンが野球界に持ち込んで注目を集めた革新の多くは、他の球団にも好き放題に模倣された。それに伴い、アスレチックスが密かに築き上げた優位性も失われてしまうことになったのである。

・・・(略)・・・ビーンが本紙の記者に語ったところによると、野球は「効率的な市場に戻りつつあります。時にランダムな事象が介入するので、完璧に効率的になることはないでしょうけれど。お金をどう使うかによって、どこに行き着くかが決まってくるようになってきているのです」とのこと。どういうことかというと、ヤンキースは大金を投じるがゆえにプレイオフに毎年のように進める一方で、パイレーツは大金を投じないがゆえにプレイオフに毎年のように進めないというわけだ。このパターンの例外もあるにはあるが、パターン自体は揺るぎがない。

「ところで、市場としての野球が効率的になっていけばいくほど、あなたとしては分が悪くなっていく一方なんじゃないでしょうか?」とビーンに尋ねると、「ご名答!」と答えて笑みを漏らした。


〔原文:“The economics of Moneyball”(Marginal Revolution, December 8, 2011)/“Efficient Markets in Everything”(Marginal Revolution, September 25, 2011)〕

References

References
1 訳注;ヘイク&ザウアー論文については、本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●ラルス・クリステンセン 「オークランド・アスレチックスが一時の勢いを失ったのはなぜ? ~効率的市場仮説に敬礼!~」(2012年2月23日)
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