タイラー・コーエン 「週に1日だけしかオープンしないレストラン」(2010年2月22日)/「『プラセボ』へようこそ」(2012年1月18日)/「最高のおもてなしをあなたに」(2012年4月14日)/「『ムーミンカフェ』で憩いのひと時を」(2014年4月28日)

●Tyler Cowen, “The One Day a Week Restaurant”(Marginal Revolution, February 22, 2010)/ “The placebo restaurant”(Marginal Revolution, January 18, 2012)/ “Customized restaurant markets in everything privacy is dead”(Marginal Revolution, April 14, 2014)/ “Markets in everything the culture that is Japan (Finland)”(Marginal Revolution, April 28, 2014)


エリック・クランプトン(Eric Crampton)から次のようなメールを頂戴した。

「週に1日だけしかオープンしないレストラン」をもっと見かけてもよさそうなのに、どうしてこんなに珍しいんでしょうか?

昨晩、夕食を食べるために、ニュージーランドにあるエチオピア料理専門店に足を運んできました。その店は一週間のうち月曜日だけオープンしていて、それ以外の日(月曜日を除く残りの6日)はミャンマー料理専門店に変身するんです。ミャンマー料理専門店を営んでいる女主人がこの店舗の持ち主で、月曜日だけ別の店――エチオピア料理専門店――にその店舗を自由に使わせているんです(http://offsettingbehaviour.blogspot.jp/2010/02/one-day-week-restaurant.html)。

店舗の持ち主にとって、こういう取り決めにはいくらかリスクが伴うというのはわかります。店舗の使用権を(週に1日だけとは言え)認めるのであれば、営業を許可するのは料理のスタイルが競合しないような相手だけに限るのが理想的でしょう。とは言え、こういう形態のレストランを目にしたのは今回が初めてでした。単に私の注意不足なんでしょうか? ドミニオン・ポスト紙でこの店の話題が取り上げられているんですが、非常に興味深い内容です。この店舗の持ち主でもあるミャンマー料理専門店の女主人はミャンマー(ビルマ)からやって来た移民なんですが、ニュージーランドにやって来たばかりの移民たちが社会に溶け込むのを手助けするためにNGOでボランティア活動に取り組むようになったそうです。そんなある時、NGOでの活動を通じて、エチオピアからやって来た一人の男性と出会ったそうです。エチオピア料理専門店を開きたいと思っているけど、そのための資金が手元に無いとのこと。「それなら、私の店舗を使ってちょうだい」ってな具合に話がまとまって、自分の店であるミャンマー料理専門店は月曜日だけ休みにするようになったというわけです。

エチオピア料理専門店の店主は、月曜日以外はタクシードライバーをやっているそうです。

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ピーター・ゼーバッハ(Peter Seebach)の案は、もの凄くいいと思う。

レストランの名前は、『プラセボ』。「50%の割引」が売られているレストランだ。つまりは、こういうことだ。どの料理もメニュー表では倍の値段が印刷されている。食事が終わってレジで会計すると、代金が50%割り引かれる(半額になる)のだ。アウトバック・ステーキハウスで出されているのと同じ品質のステーキを注文するとしよう。アウトバック・ステーキハウスで食べると、13ドルだ。『プラセボ』のメニュー表では、26ドルになっている。でも、レジでは半額の13ドルを払うだけでいい。とは言え、食事中は(自分は26ドルのステーキを食べているのだという)高級感を味わうことができる。

もう少しだけ引用しておこう。

さらなるおまけとして、お客に事前にアンケートをとっておいて、その答え(お客の好み)に照らして接客させるウェイターを変えるというのもありだろう。健康食品にハマっているお客には、「健康のために高級食材に金をかけるなんて馬鹿げてる」と心から信じているウェイターをあてがってもいいし、グルメ気取りのウェイターをあてがってもいい。いずれにしても、「健康食品のよさがわからないなんてかわいそうに」とウェイターを見下しながら食事を楽しんでもらえる。

とどのつまりは、こういうことだ。レストランに足を運ぶお客は、料理(食べ物)を食べに行っているわけではないのだ。「経験」を味わいに行っているのだ。「経験」を一つの商品として売ってはならない理由があるなら、教えてもらいたいところだ。1960年代とかそのへんの時代にプラセボ効果について検証した興味深い研究のいくつかが明らかにしているように、偽薬を服用しているとわかっていても効く場合があるのだ――偽薬だとあらかじめ知らされていても、その偽薬を服用したおかげで鬱の症状が和らげられた事例が報告されている――。

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ミシュランガイドで三つ星を獲得しているレストランがカスタマーサービスの向上に向けて、Googleの積極的な活用に乗り出している。お客が来店する前に、そのお客の個人情報をGoogleで検索して調べているというのだ。Grub Streetの記事によると、「イレブン・マディソン・パーク」(ニューヨークにある高級フレンチレストラン)の給仕長にとっては、インターネットを活用した偵察(お客の個人情報の調査)も仕事のうちの一つだという。お客様一人ひとりにオーダーメイド(唯一無二)の経験を味わってもらうためというのがその理由だという。

「イレブン・マディソン・パーク」の給仕長を務めるジャスティン・ローラー氏本人が語るところによると、これから来店予定のカップルが記念日のお祝いでやって来るのかどうかをインターネットで検索して確認するようにしているという。もしも記念日のお祝いでやって来るようなら、何の記念日かまで特定するようにしているという。例えば、誕生日のお祝いでやって来るようなら、そのカップルが来店するや「ハッピー・バースデイ!!」と祝福して出迎えられるように用意を整えておくという。予約客の写真をネットで探して、白色の調理服をまとっている写真がないかどうか、ワイングラスを片手にポーズをとっている写真がないかどうかも調べるという。どうしてそんなことをするかというと、そういう写真があるようなら、その予約客はシェフかソムリエである可能性が大だからだ。

まだある。ネットで検索して予約客がモンタナ州の出身だとわかったら、同郷の給仕に接客させるように取り計らうという。さらには、Grub Streetの記事でも語られているように、「お客がジャズクラブの経営者だとわかった場合も、同様の措置がとられる。ジャズを嗜むソムリエがそのお客の相手をするのだ」。

レストラン側としては、食事にやって来るお客のために少しでもよいおもてなしをしたいと心掛けているに過ぎないのだろう。しかしながら、「誕生日をネット上で公開しているのは、一度も会ったことがない見知らぬ誰かに自分にとって特別な日を最高のおもてなしで祝福してもらいたいから」であり、その思いがテレパシーか何かで伝わってほしいと願って、誕生日をネット上で公開している・・・わけなんてなかろう。

全文はこちら。情報を寄せてくれた Donnie Hall に感謝。

私が「イレブン・マディソン・パーク」に予約を入れたら、私のためにどんなことをしてくれるんだろう?

(追記)Amazonでデジタルスケール(電子はかり)を購入すると、こんなことになるらしい。

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日本にある「ムーミンカフェ」を紹介しよう。「ぼっち客」を巨大なぬいぐるみが出迎えてくれるカフェだ。客が一人きりで食事をしている最中に、巨大なぬいぐるみが向かい側に座って一緒に過ごしてくれるのだ。

「ムーミンカフェ」は、カバに似た架空の生き物の家族の物語を描いたフィンランドの絵本をモチーフにしたカフェだという。

Japancafe

全文はこちら。面白い写真もたくさん紹介されている。情報を寄せてくれた R.H. と Jeffrey Lessard の二人に感謝。

話は変わるが、シンガポールでは「ハローキティ」をめぐって大騒動になっているらしい。

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