●Alex Tabarrok, “The Snuggle Theory of Horror”(Marginal Revolution, October 31, 2011)
「ホラー作品の心理学」についての先行研究を概観した記事の一部を引用しておこう。
年齢はどんなふうに関わってくるのだろう? ホラー映画を楽しいと思える感情は、思春期に向かうにつれて高まっていくが、思春期を過ぎると、ホラー映画を徐々に楽しめなくなっていく可能性が示唆されている。このことと関わりがあるのが、いわゆる「イチャイチャ理論」(‘snuggle theory’)である。「イチャイチャ理論」によると、ホラー映画の鑑賞は、若者たちにとって通過儀礼の一つになっている可能性があるという。若い男女が社会における伝統的な性的役割(ジェンダー・ロール)を演じる機会を提供しているというのだ。ドルフ・ジルマン(Dolf Zillmann)やノルベルト・ムンドルフ(Norbert Mundorf)らが1980年代後半に発表した共著論文によると――男女の大学生を集めて、異性とペアになって『13日の金曜日 PART3』のワンシーン(14分間)を鑑賞してもらい、感想が尋ねられている――、 男子大学生は、ペアになった女子(男子大学生には知らされていないが、実は研究助手)が映像の鑑賞中にびくびく怖がっていると、そうでない場合よりも、映像を2倍近く楽しめたと答える傾向にあったことが見出されている。その一方で、女子大学生は、ペアになった男子が映像の鑑賞中に冷静で動じていないように見えると、そうでない場合よりも、映像を楽しく観れたと答える傾向にあったことが見出されている。さらには、映像を一緒に観る前の段階では魅力的ではないと判断されていた男子であっても、映像を物怖じせずに見通すと、女子からの評価が高まる傾向にあったことも見出されている。「ホラー映画やモンスターは、女子が悲鳴を上げてデート相手の男子に必死になってしがみつく絶好のチャンスを提供しているんです。それと同時に、男子が女子を安心させて守ってやる――必要とあらば、モンスターを打ち倒す――絶好のチャンスを与えてもいるんです。男子も女子もどちらとも、(ホラー映画を鑑賞しながら)文化の中に埋め込まれている性的役割を演じているんです」とフィシュホフ。
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