マイルズ・キンボール 「二種類の嫉妬 ~すべての嫉妬が悪いわけじゃない~」(2014年4月26日)

嫉妬(しっと)という感情には悪いところしかないように思えるが、やる気を起こさせる力を備えた嫉妬――「良性の嫉妬」――もあるようだ。
画像の出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22343540

「幸福」や「人生への満足感」の研究に深く手を突っ込んでいる経済学者の一人として、ジェニファー・B・ウォレス(Jennifer Breheny Wallace)が執筆しているこちらの記事にいたく興味を覚えた。要所を引用しておこう。

ミシガン大学の研究チームが調査の結果をまとめた論文が昨年(2013年)の8月に学術誌であるPlos One誌に掲載された。その論文によると、フェイスブックをチェックする頻度が多くなるほど、人生に対する満足度が低くなる傾向にあるという。同じく2013年にドイツの研究チームがおよそ600人のフェイスブック・ユーザーを対象に行った別の研究では、サイト上で「嫉妬が渦巻く」様子が確認されている。

どうやら現代版の嫉妬は、悪いところしかないように思える。いや、そうとは限らない。これまでの研究によると、やり方次第では、嫉妬という大罪(七つの大罪の一つ)から良い面を引き出せる可能性があるのだ。

心理学者の間では、嫉妬は「良性」と「悪性」の二種類に分類されている。「良性の嫉妬」を抱く人は、誰かが成功している(うまくやっている)のを見るとやる気が湧いてきて、負けまいと頑張ろうとする。その一方で、「悪性の嫉妬」を抱く人は、うまくいっている誰かしらに難癖をつけて自分を相対的によく見せようとする。例えば、他の会社で働いているライバルが昇進したと聞いて、あなたが嫉妬を感じたとしよう。その嫉妬が悪性であれば、あなたはライバルの手柄をどうにかして認めまいとすることだろう。その一方で、その嫉妬が良性であれば、これまで以上に仕事に精を出して、自分も昇進するぞという意欲が湧いてくることだろう。

「良性の嫉妬」には、やる気を起こさせる力が備わっている可能性があることがこれまでの研究で明らかになっている。2011年にPersonality and Social Psychology Bulletin誌に掲載された論文で、オランダの研究チームが200人以上の大学生の協力を得て実施したいくつかの実験の結果が報告されている。その論文によると、誰かに「良性の嫉妬」を抱くように仕向けられた学生たちは、誰かを「称賛」したり誰かに「悪性の嫉妬」を抱くように仕向けられた学生たちよりも、勉強時間を増やすのに前向きになっただけでなく、創造性や知能を測るテストで良い成績を収めたという。誰かを「称賛」するという感情を抱くと、誰かに嫉妬――良性の嫉妬であれ、悪性の嫉妬であれ――を抱くよりも心地よくなれるかもしれないが、やる気は湧いてこないようなのだ。その一方で、誰かに「良性の嫉妬」を抱いて痛みやイライラを感じると、やる気が湧いてくるようなのだ。

ちなみに、私はミシガン大学に籍を置いているが、引用文中で言及されている「ミシガン大学の研究チーム」の一員ではない。ミシガン大学は、「幸福」や「人生への満足感」に関する研究の一大拠点なのだ。同僚の研究を紹介してもらえて嬉しい限りだ。


〔原文:“Jennifer Breheny Wallace—The Upside of Envy: Envy Can Lower “Life Satisfaction,” but at Its Best, Can Provide Motivation and Inspiration”(Confessions of a Supply-Side Liberal, April 26, 2014)〕

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