●Lars Christensen, “Use googlenomics to track NGDP”(The Market Monetarist, November 11, 2011)
金融機関のトレーディングフロアで働いたことがある人間なら誰もが知っているように、主要なマクロ経済データ――例えば、米国労働省が発表している非農業部門雇用者数のデータ――が公表されるたびに、脳内のアドレナリンが一気に吹き出すような感覚を覚えるものだ。ディーラーやアナリストの大半が同じ体験をしているだろうし、この感覚にはちょっとした中毒性があることにも同意してくれるだろうと思う。しかしながら、テクノロジーの進歩によって、それももう過去のものになろうとしているのではないかと思われるのだ。
大半のマクロ経済データは、月ごとか四半期(三ヶ月)ごとに公表される慣わしになっている。しかしながら、現実の経済というのは、月ごとに変化するわけでもなければ、四半期ごとに変化するわけでもない。飛び飛びの(離散的な)間隔で変化するわけじゃなく、途切れなく連続的に変化するのだ。
テクノロジーの進歩のおかげで、景気の足取りをリアルタイムに(間を置かずに)把握できる可能性が広がっている。インターネットを介した(オンラインでの)経済活動が増えるにつれて、あるいは、現実の世界(オフライン)での経済活動が何らかのかたちでインターネット上に反映されるようになるにつれて、景気の足取りをリアルタイムに把握するのがますます容易になっているのだ。
例えば、Googleトレンドで “crisis”/“recession”/“Roubini” [1] 訳注;“Roubini” というのは、世界金融危機を予見していたと言われているヌリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)のこと。とかいうキーワードを入力してみると、その人気度が世界経済の浮き沈みをかなり正確になぞっている [2] … Continue readingのがわかる。その他の例としては、マサチューセッツ工科大学(MIT)が手掛けている「ビリオン・プライス・プロジェクト」(Billion Prices Project)がある。数多くの小売業者のウェブサイトを細かくチェックして、消費財の価格がどうなっているかをリアルタイムに収集しているプロジェクトだ。 「ビリオン・プライス・プロジェクト」で収集されているデータと、(米国労働省労働統計局が作成している)公式の消費者物価指数(CPI)との間には極めて強い相関が見られるのだ。
言うまでもないだろうが、私もその一員であるマーケット・マネタリスト勢にとって何よりも興味があるのは、名目GDPの足取りだ。そこで、読者への挑戦だ。名目GDPの足取りをピッタリとなぞるキーワードは何だろうか? Googleトレンドで色んなキーワードを入力してみて、探してみてほしい。
(追記)Googleのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン(Hal Varian)も著者の一人に名を連ねているこちらの論文(pdf)もあわせて参照されたい [3]訳注;本サイトで訳出されている次の記事も参照のこと。 ●マーク・ソーマ … Continue reading。
References
↑1 | 訳注;“Roubini” というのは、世界金融危機を予見していたと言われているヌリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)のこと。 |
---|---|
↑2 | 訳注;世界全体の景気が下向くにつれてキーワードの人気度が上がっていて、世界全体の景気が上向くにつれてキーワードの人気度が下がっている、という意味。 |
↑3 | 訳注;本サイトで訳出されている次の記事も参照のこと。 ●マーク・ソーマ 「Googleトレンドを使って『今』を予測する」(2009年4月7日)/「ナウキャストの可能性とその限界」(2014年4月28日) |