超能力を手に入れたら何をするかは知りようがないかもしれないが、超能力を手に入れたら何をするつもりかを尋ねることくらいはできる。「超能力を手に入れたら何をする?」と尋ねてみたところ、励みになるとは決して言えない結果が得られたようだ。
スーパーヒーローと言うと、思いやりのある利他的な人物と見なされがちだが、本稿では、ごく普通の人がもしも超能力を手に入れたとしたらどう振る舞うか――利他的に振る舞うか、利己的に振る舞うか――を調べた。具体的には、被験者に6種類の超能力――3種類のポジティブな超能力(傷を癒せる、不死身、空を飛べる)と、3種類のネガティブな超能力(相手を恐怖で身動きできなくさせる、相手をマインドコントロールできる、毒を生成できる)――を提示して、それぞれの能力の望ましさについて評価してもらうだけでなく、超能力を手に入れたら何のため――世のため、自分のため、世に害を及ぼすため――に使うかについても答えてもらい、どう使うかについても具体例を挙げてもらった。本稿で試みた定量的な分析(285人の被験者が対象)によると、被験者の94%が何らかの超能力を手に入れたいと望んでおり、過半数が超能力を世のためではなく自分を利するため(自分のため)に使おうとしていることが明らかになった。さらには、男女を比べると、超能力――ポジティブな超能力にしても、ネガティブな超能力にしても――を手に入れたいと望む傾向が強かったのは男性の方であり、超能力を何のために使うかとなると、世のため、あるいは、自分のために超能力を使おうとする傾向が強かったのは女性の方だった――超能力を悪を為す(世に害を及ぼす)ために使おうとする傾向が強かったのは男性の方だった――。 超能力をどう使うかについても定量的な分析を加えたが、ピアース&アマトによる援助行動の類型化を援用して、被験者が挙げた具体例(その数524)を利他的な行為と利己的な行為のいずれかに分類(計16の形態に要約)した。本稿で得られた一連の結果によると、スーパーヒーローとは対照的に、ごく普通の人が超能力を手に入れたとしたらその力を利他的に(世のためになるように)ではなく利己的に(自分のためになるように)使おうとするようである。本稿を締め括るにあたり、我々の研究が抱えている限界に加えて、今後の課題についても論じる。
ダス=フリーベル(Ahuti Das-Friebel)らの共著論文より。ロルフ・デーゲン(Rolf Degen) 経由で知ったネタだ。だいぶ前になるが、こちらのエントリー〔拙訳はこちら〕で「利他的で清廉潔白なスーパーマンに取り組んでもらうべき任務とは?」という疑問と格闘したことがある。答えを出すのは簡単じゃなかったね。
〔原文:“What would people do if they had superpowers?”(Marginal Revolution, April 19, 2017)〕