ピーター・ターチン「なぜ我々はズボンを履くのだろう?」(2012年7月4日)

なぜ我々はズボンを履くのだろう? もっと具体的に問うなら、西洋社会で、「二股に裂けた足を覆う衣類」(ズボン、ジーンズ、スラックス、パンタロン)が標準的な衣服になっているのなぜだろう?

ブログの読者の中には、集団淘汰の議論に少しうんざりしてる人もいるかもしれない。独立記念日で休日になったこともあり、話題をもっと気軽なものに変えてみよう。

なぜ我々はズボンを履くのだろう?

もっと具体的に問うなら、西洋社会で、「二股に裂けた足を覆う衣類」(ズボン、ジーンズ、スラックス、パンタロン)が標準的な衣服になっているのなぜだろう? キルト、ローブ、キトン、トーガだと駄目なのだろうか? 私は明快な答えを持っているのだが、まずは、他の人の考えを聞いてみたい。 読者諸氏は、答えが思いついたら、ブログへのコメントか、メールを送っていただきたい。皆の答えを纏めた後に、〔解答編となる〕執筆中のエントリ、「ズボンの文化的進化」を近日中に投稿する予定だ。

〔以下コメント欄より〕

ジーン・アンダーソン 2012年7月4日午後1時50分
うーん、ズボンは、元々はケルト人とゲルマン人の衣料品で、北ヨーロッパの寒冷な気候と、トゲのある草むらには適応した衣服だったのだよ。中央アジアの遊牧民も、馬上での利便性のための、似たような服装をしている。ここ60年で、女性がズボンを履くようになったのは、生活が活動的にり、彼女らが「より便利さ」を求めたことにあるんじゃないかな。興味深い表れだね。

ピーター・ターチン 2012年7月4日午後2時
ありがとう、ジーン。あなたの説明だと、我々がズボンを履くのは、「実用的だから」(寒さから保護)であり、「活動的な生活における利便性」(例えば、トゲの草むらの中を歩くため)ということになりますねかね。
他の人はどう思いますか? 他に何か説明はあります?

マリアモーラ 2012年7月4日午後7時45分
男性がズボンを履くのは、私たちが食事をするときにフォークやナイフを使うのと同じ理由からだとずっと思っています。アジア圏(アジア以外でもそうかもしれまんが)では、箸を使いますよね。ズボンも、最初は便利だから広まったかもしれませんが、今だと、男性は利便性からズボンを履いているように思えないですね(もしかしたら、別の利便性があるとか、社会契約のような理由から履いているかもしれません)。
ピーター、あなたの答えを知りたいです!

ピーター・ターチン 2012年7月4日午後8時48分
マリーアモーラさん。了解。あなたの考えを言い換えると、「私たちがパンツを履くのは文化的な慣性」ということになりますかね? すると、どういう理由で始まって、なぜ定着したのでしょう?

マーガレッテホッキング 2012年7月5日午前1時52分
建国記念日にぴったりの良い質問だね。どの形態のズボンも、キルトよりも着心地が良く、使い勝手が良いと思う。また、ズボンを履くことで、スカートよりもスマートに見える。どうでしょう。

フアン・アルフォンソ・デル・ブスト 2012年7月5日午前4時42分
ジーンに同意。ゲルマン騎手の鐙(あぶみ)を使った乗馬は、ジーンが言ったように、モンゴルの騎手(おそらくフネス族)から輸入され、西ヨーロッパの騎手の間ではズボンが一般的な服装になった。一方で、馬は、誰もが所有できたわけじゃないし、乗る余裕がなかったので、ズボンはおそらく威信および/または高い栄達の象徴となったんだ。ズボンは貴族と農民の違いを表すようになったかもしれない。また、西洋の女性は乗馬する習慣がなかったので、社会的地位の象徴が、男性はズボンに、女性はドレスやスカートになり、ズボンは男らしさの象徴になったのだと思う。
私もこの件で以前から疑問に思っているだけど、上の私の回答だけだと不満足になってるのが興味深いところだ。ネクタイの着用理由はさらなる難問になってるように思う。なぜネクタイを着用するかについて、ピーター、あなたの考えも聞かせてほしい。

ピーター・ターチン 2012年7月5日午後8時37分
フアン、ありがとう。あなたの重視する要素は2つあって、(1)「乗馬」、(2)「威信・地位」ですかね。
ネクタイについてですが、私はあまり詳しくないのですが、たしかに西洋人男性の衣装の中でも最も馬鹿げた要素ですね。知っている限りでは、19世紀初頭にイギリスのジェントリ階級が身につけていたスカーフの一種に起源を持っていたはずです。記憶が確かなら、ネクタイを始めたのはボー・ブルンメルでしたっけ。

フアン・アルフォンソ・デル・ブスト 2012年7月5日午後4時12分
おー、ネクタイに詳しいですね。ネクタイの進化は、ロナルド・フィッシャーによる性淘汰のランナウェイ仮説に似たダイナミクスを経たのではないかと思うことがあります。ランナウェイ仮説が働くことで、生物的に「馬鹿げた」帰結に至ることがあります。
私のズボン着用の重要要素に、(3)「性差」も追加してください。

ウラジーミル・ディネッツ 2012年7月6日午後7時57分
フアン
私の記憶が正しければ、ギリシャやローマの資料には、北方民族は、フン族よりもずっと前からズボンを履いていたと書かれています。
北米でもインディアンは、長ズボンを着用しています。つまり、ズボンの着用と、寒冷気候の間には強い相関関係がありそうです。キルトは、レアケースで、謎めいた衣装で、イレギュラーな存在です。むろん、ほとんどのヨーロッパの民族において、女性は長ズボンを着用していませんでしたが、それはおそらく、交易や薪集めに従事していたのは主に男性だったからではないでしょうか。

フアン・アルフォンソ・デル・ブスト 2012年7月6日午後12時56分
本当ですか? ギリシャとローマの資料については知りませんでした。ズボンは〔乗馬用の〕鐙と一緒に伝来したと思っていました。
誰か、「アイスマン・エッツィ」は、発見された時に何を着ていてたのか知っている人はいますか? 皆、エッツィの凍りついた裸体を見ていると思うけど、私が記憶では、エッツィは衣服を着ていた痕跡があり、きちんとした裏地のついた靴を履いて、革でできた上着を着ていたはずです。もし、エッツィが、ズボンを着用していたのなら、ウラジーミル、あなたの気候適応についての説明は理にかなっているし、アメリカでも独自にズボンが発展したのを、収斂進化の事例とできるかもしれませんね。
〔訳注:「アイスマン・エッツィ」とは、1991年のアルプス山脈で発見された約5300年前の男性ミイラ。〕

ピーター・ターチン 2012年7月7日午前11時38分
フアン、エッツィはレギンスを履いていたよ。

ピーター・ターチン 2012年7月7日午前11時39分
皆さん、コメントありがとうございました。さきほど、ズボンを履くの理由についての説明記事の前半を投稿しました(長くなったので、前後半に分けています。後半は、1、2日後に投稿する予定です)。

[Peter Turchin, “Why do we wear pants?” cliodynamica, 4 July, 2012]
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2 comments
    1. ありがとうございます。
      反映しました。
      また何か指摘していただけると幸いです。

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