タイラー・コーエン 「本を買う理由は?【イギリス版】」(2005年10月27日)

●Tyler Cowen, “Why do you buy books?”(Marginal Revolution, October 27, 2005)


世論調査を専門とするYouGov社がロンドンとサウス・イーストに在住する読書家を対象に行った聞き取り調査の結果によると、ずらりと並ぶ「○○文学賞」の候補作品の一覧に気圧(けお)されて「知的に見られたい」との一心で本を買ったという答えが3分の1以上に上(のぼ)ったという。

同調査によると、若者のうち8人に1人は、「文学賞の最新の候補作品を所持しているのを他人に見せる」目的でどの本を買うかを決めているという。そのように群れようとする本能は年を重ねるにつれて弱まるようで、50歳以上の年代になると、「文学賞の最新の候補作品を所持しているのを他人に見せる」目的でどの本を買うかを決めているのは、20人中1人の割合にまで低下するとのことだ。

・・・(略)・・・同社による調査結果は、「読書(本を読む)」というのが(時と場合によってその意味が変わり得る)相対的な概念であることも示している。具体的にどの本を読んだかを尋ねたところ、サルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)の『Midnight’s Children』(邦訳『真夜中の子供たち』)――ブッカー賞25年の歴史の中で最高作(ブッカー・オブ・ブッカーズ)に選ばれた小説――を読んだと答えたのは25人中1人の割合に過ぎず、最後まで読み通したのはそのうちの半分でしかないというのだ。

アンドレア・レヴィ(Andrea Levy)の『Small Island』――今月(2005年10月)のはじめに、オレンジ賞(現在のベイリーズ賞)を受賞した歴代作品の中で最高作に選ばれた小説――を読んだと答えたのは、100人に1人の割合に過ぎない。今月(2005年10月)に入ってブッカー賞を受賞したばかりのジョン・バンヴィル(John Banville)の『The Sea』(邦訳『海に帰る日』)なんかに至っては、誰一人として読んでいない有様だ。

文学賞の選考委員から高い評価を集めて広く喧伝(けんでん)された他の作品にしても、似たり寄ったりだ。ゼイディー・スミス(Zadie Smith)の『White Teeth』(邦訳『ホワイト・ティース』)を読んだと答えたのは、20人に1人の割合。ヤン・マーテル(Yann Martel)の『Life of Pi』(邦訳『パイの物語』)だとか、パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho)の『The Alchemist』(邦訳『アルケミスト』)だとかはどうかというと、読んだと答えたのは25人に1人の割合にとどまっている。

外出する時は本を2冊携える、という両面作戦を試みている読書家もいるようだ。一冊はゴツい本。他人に見せびらかす用だ。もう一冊は、自分で楽しむ用で、現実逃避できそうな本。

どうやって本を選んでいるかを尋ねたところ、「家族の中で仲のいい誰かだったり友人だったりの薦め」という昔からよくある手法に頼っているという答えが一番多かった。その割合は、4割以上。

YouGov社による調査で「読んだ」と答えた人の数が多かった上位10作品 [1] 訳注;全部で11作品が挙がっているが、同位の作品があるものと思われる。を列挙すると、以下の通り。古典だけでなく、最近の人気作もランクインしている。『聖書』、『指輪物語』、『ハリー・ポッター』シリーズのどれか、『キャッチ=22』、『動物農場』、『ホビットの冒険』、『高慢と偏見』、『アラバマ物語』、『ダ・ヴィンチ・コード』、『嵐が丘』。

全文はこちら。ところで、ブログを読む理由を問われたら、どう答える?

(追記)http://kottke.org 経由で知ったのだが、Amazonのレビューで「星一つ」の評価が下されている古典作品の一部がこちらのサイトでまとめられている。

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1 訳注;全部で11作品が挙がっているが、同位の作品があるものと思われる。
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