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クルーグマン「フランスさん,気に病まないで」/「来るべき栄光」

Paul Krugman, “Have No Ennui, France”, September 13, 2013.


フランスさん,気に病まないで

by ポール・クルーグマン

Ed Alcock for the New York Times/The New York Times Syndicate

Ed Alcock for the New York Times/The New York Times Syndicate

オックスフォードの経済学者サイモン・レン=ルイスが,最近みつけたことをブログに書いている.フランスでは,財政緊縮にたっぷり手をつけているというんだ――いまのマクロ経済状況をふまえると,理にかなう限度をはるかにこえている緊縮をやってるのだという.ただ,彼は次の点も述べている――フランスは,支出削減によってではなく,増税によって,歳入・歳出のプライマリーバランスから構造的な赤字を消し去っている.

さて,欧州連合の経済・通貨問題担当委員オッリ・レーンは,フランスが財政責任を果たしたことを褒め称え,緊縮のゴスペルのために教科書的なマクロ経済学にさからう意欲をみせたことを賞賛してしかるべき立場にあるけれど,怒り心頭で,財政の引き締めは支出削減を通してなされなくちゃダメだと発言した.

レン=ルイス氏が述べているように,レーン氏は明らかにずいぶんと分限を超えたふるまいをしている:フランスは主権国家であり,正式に選出された政権がある――ついでながら,フランスは欧州委員会からなんら特別な援助をもらおうと模索してもいない.だから,フランスにしかるべき政府の規模について指図するのはレーン氏の仕事じゃない.

でも,もちろん,ここにはもっと大きな論点がある.それは,レーン氏が化けの皮をはがした,という点だ.問題は財政責任なんかじゃないし,これまで問題だったためしなんかありゃしない.問題は,いつだって,債務の危険について誇張した話しをあれこれ利用して,福祉国家を解体することなんだ.ネオリベラル路線で自分たちの社会をつくりかえるのを拒絶する一方で,赤字をめぐって吹聴されてるいろんな懸念をフランスが文字通りに受け取るわけないじゃない?

© The New York Times News Service


Paul Krugman, “The Gloire to Come”, September 13, 2013.

来るべき栄光

by ポール・クルーグマン

いまさら感のある話になっちゃうけど,『ニューヨークタイムズ』にスティーブン・アーランガーがフランスの没落について書いた記事について思うところを書こう.あの誇り高い国フランスが二流国に滑り落ちつつあるって話だ:ここで頭の隅においておくべき要点を,コラムニストのロジャー・コーエンが提供してくれてる――たしかにフランスは,この数十年というものずっとつらい立場に甘んじてきたけれど,あの国はいまでも住むにはとってもすてきな場所だ.じゃあ,もしかして,二流国転落の恐怖について,いくらか割り引いてもよかったりしないかな?

でも,もうひとつ,ほぼ誰もいままで言及したのを見たためしがない論点がある:他の豊かな欧州諸国,とりわけドイツがあんまりお上手じゃないのに,フランス人がいまだにうまくやってのけていることがある――それは,子供をもつってことだ.Eurostat による2060年までの人口変化予想を示したチャートをごらんいただこう:

KRU-FRANCE-0913-2

主要な欧州諸国がいまと同じような水準の1人あたり国内総生産を続けるものと仮定しよう.これは妥当な仮定に思える.すると21世紀の半ばには,ドイツじゃなくてフランスの方が欧州最大の経済大国になっているだろう.ただひたすら,人数の力によって,だ.EU がそのときまで存続してたとして,そうなると,フランスが世界最大の経済勢力の1つを率いる立場につくことになる.やあ,新たなるフランス帝国へようこそ!

ああ,はいはい.ちょっと言い過ぎた感はある.でも,欧州におけるフランスの相対的な人口統計上の優位点がいまいち注目を集めてないのは意外だなって.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

フランスの宿痾

by ショーン・トレイナー

この数十年というもの,フランスの高官たちは世界を舞台としたフランスの地位下落に関するあれこれの問題に直面せざるをえないことがたびたびあった.それに,フランスの福祉国家が持続可能なのかどうか,という問いにもだ.さて,長年にわたる経済停滞によってフランスの宿痾が悪化してしまったあと,経済学者のなかにはこう考えている人たちがいる――とうとう,フランスもその構造問題に積極果敢に取り組むか,さもなくば将来の経済成長がさらに鈍化し影響力がますます弱まるのを受け入れねばならなくなるときがきた,と彼らは考える.

『ニューヨークタイムズ』のパリ支局長スティーブン・アーランガーは,8月に掲載された記事でフランスの課題を解説している:「ここで掛け金となっているのは,何十年にもわたって国民に安定した高水準の生活を提供してきたモデルとして同国が誇る社会民主主義的な体制が,グローバリゼーションと人口の高齢化,そして近年の深刻な財政ショックという3つ組みを生き延びることができるのかどうか,という点だ」――アーランガーはこう記している.

フランスは西洋世界でも最高に気前のいい社会的な手当を提供している.フルタイムの従業員たちは週35時間労働の制限があるし,毎年6週間までの有給休暇を受け取っているし,レイオフに対しては数多くの保護策が採られている.多くの労働者は60歳かそれ以前に引退することができるし,フランスの年金と医療制度は世界でも最高水準だ.

だが,アーランガー氏が指摘するように,「もっと競争的な世界経済において問われるのは,フランスの社会的モデルがいいものかどうかではなく,フランス人たちがこのまま費用をまかなえ続けられるかどうかだ.現在の傾向にもとづいて考えると,答えは明らかに「ノー」,顕著な構造変化がないかぎり「ノー」だ――年金,税制,社会的な手当,労働規則と予想に構造変化が起きないかぎり,同国の社会的モデルの費用はまかなえなくなる.」

さらに事態をわるくすることがある.フランスの失業率は最近,10.9パーセントに達している.しかも,若年失業率は過去20年の大半にわたって20パーセントを超えている.2012年にフランスで新しくつくりだされた雇用の82パーセントは,一時契約の雇用だ.つまり,仕事に就いている若者ですら,永続的な労働力には加わることができずにいるわけだ.

この2月に実施された世論調査によれば,フランスの若者の36パーセントしか将来に安心感をもっていないし,回答者の半数以上は機会が与えられたならよそで暮らしたいと答えている.

© The New York Times News Service


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