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グローバライゼーション、政府の人気、そして大いなるスキル・デバイド

Cevat Giray Aksoy、欧州復興開発銀行プリンシパルエコノミスト、IZA & LSE リサーチフェロー

Sergei Guriev、欧州復興開発銀行チーフエコノミスト、パリ政治学院経済学教授(休暇中)CEPRリサーチフェロー

Daniel Treisman、UCLA政治学教授

VoxEU、2018年5月8日

概要:グローバライゼーションに対する態度が、伝統的な左-右の分裂と並んで、あるいはそれにも関わらず、政治的連帯の新しい次元として登場してきている。このコラムでは過去10年に渡っての118カ国45万人近くをカバーするデータを使い、スキルの高い人々はスキル集約財の輸出が増えると政府をより支持するが、スキル集約財の輸入が増えると支持が低下する事、そして更に一般的に、だが一般通念とは違って、低スキル労働者は輸入に反対したり、市場保護に失敗したリーダーを批判したりはしない事を示す。

貿易の政治は近年のメディアのヘッドラインを支配している。合衆国のとある選挙では1人の候補の中国とメキシコからの輸入に対して強硬姿勢を取るという約束によって大きく動いたし、東ヨーロッパ全域でポピュリストリーダー達がEU統合に反対の態度をとるようになり、そして英国では過半数が最近、離脱へと投票した。移民や国家主権の弱体化への心配が反対における一般的なテーマだが、国際競争によって職が失われるという認識もまた非常に目立つものとなっている。

貿易フローと政治

グローバライゼーションに対する態度が、伝統的な左-右の再分配の軸と共に、あるいはそれにも関わらず、政治的連帯の新しい次元として登場してきている。しかし、一部の学者が古典的な貿易理論に基いて貿易政策への選好を研究してはいるものの(Scheve and Slaughter 2001, O’Rourke and Sinnott 2001, Mayda and Rodrik 2005)、ごく最近まで、世界貿易と大衆政治の間のリンクについてのシステマティックな実証分析は殆ど行われてこなかった。

最近の3つの論文が合衆国における投票への国際貿易のインパクトを調べている。Margalit (2011)は輸入競争からの職の損失が2004年と2008年の現職大統領への投票シェアを減らしたことを明らかにした。Jensen et al. (2017)もまた製造業職の貿易に関係した損失が現職への票を減らす事を発見している。彼らは更にまた、高スキル輸出産業での雇用の増加はより高い現職支持へつながることを明らかにしている。Autor et al. (2016)は合衆国政治の分極化について調べて、(WTOへの中国の加盟に引き続いて起こった「中国からの輸入ショック」による)輸入品の浸透の上昇に曝された選挙区では2000年代に公職から穏健派が不釣り合いに高く追い出されたことを発見した。けれど、国単位でのクロスセクショナルで貿易の政治的結果について調べた論文はほとんどない (e.g. ヨーロッパについてはColantone and Stanig, 2017、そしてISSPの2回分の調査によってカバーされた16か国については Margalit 2017)。

スキルプロファイルは重要か?

最近の論文において、我々は、ヘクシャー―オーリンにインスパイアされた政策選好についての研究にならって、政治への態度は個人のスキルレベルと国の輸入と輸出のスキル集約度の間の相互作用に依存にしているのではないかという仮説を建てた(Aksoy et al. 2017)。実証的には、我々はスキル集約度について個人と貿易のフローを分解し、貿易に対する態度についての自己申告を超えて、現職政治家への支持について研究した。これは投票とより直接的にかかわっているものだ。同時に、せいぜい部分的にしか正しくないことが知られている国の要素賦存に基づいた貿易フローのパターンを仮定するのではなくて、実際のフローの直接の指標を使った。我々の中心となる仮説は、高いスキルの労働者はスキル集約財の輸入が減り、スキル集約財の輸出が増えると現職の国政政治家をより支持するようになるというものだ。

過去10年にわたって118ヵ国、45万人近くを含むGallup World Pollからのユニークなデータセットに基づいた我々の研究結果は、政治的リーダーへの支持について貿易パターンの因果関係のインパクトを明らかにしている(因果関係を特定するためには、近年の貿易理論の文献において一般的な海と空の距離(”sea-to-air-distance”)を操作変数を使った)。

データが述べること

予想通り、我々は個人の特性とその国の貿易構造の相互作用が重要であることを見出した。高スキルの人物はスキル集約財の輸出が増加すると政府をより支持するようになるが、スキル集約財の輸入が増えると支持をしなくなる。スキル集約財の貿易は低スキル労働者の中での政治的支持には影響を与えていない。さらに広く言って、一般的通念とは違い、低スキル労働者は輸入に反対せず、リーダーたちが市場を守らないことを責めたりはしない事を見出した。どちらかというと、その逆である。

この効果は年齢や性別によって変わるようには見えないが、地元の企業が閉鎖となったら代わりの仕事が少ない田舎の居住者に対しては効果が強まる。我々はまた、途上国への仕事のアウトソーシングは受け手の国の高い教育を受けている人達の態度についての経済開放のインパクトをぼやかしているかもしれない事を発見した。

その効果のサイズはかなりのものである:スキル集約財輸出の上昇10%毎に高スキルの人々の中での政治的支持が1.2%ポイント上昇する。スキル集約財の輸入についての数字は1.7%ポイントとなる。わかりやすく示すために、我々はスキル集約財の貿易フローに大きな変化のあった国々についてのトータルの効果を推計してみた。スキル集約財の輸出が大きく上昇した地域(ブルガリア、リトアニア、ナイジェリア、そしてスロバキア)では、貿易は高スキルの人々の中での政治的支持の上昇の4分の1を説明する。スキル集約財の輸入が大きく上昇した国々(チリ、パラグアイ、韓国、そしてトルコ)では、貿易が高スキルの人々の中での支持の低下の半分から3分の2を説明する。

その含意

我々の結果は貿易についての異なるスキル集約度の国々では異なる含意を持つ。定義により、全ての国がその輸入よりも高いスキル集約度の製品を輸出できるわけではない。教育程度が高くなるにつれて、政治的支持はスキル集約財の輸出が輸入よりも速く成長している国では高まっていく。しかし、その他の国々では低くなっていく。けれど、教育の直接のインパクトはこの低下の効果を補ってあまりある:高スキルの人々は現職のリーダーや政府をより支持する傾向があるのだ。

参照文献

Aksoy, C G, S M Guriev and D Treisman (2017), “Globalization, Government Popularity, and the Great Skill Divide”, CEPR Discussion Paper 12897.

Autor, D, D Dorn, G Hanson and K Majlesi (2016), “Importing political polarization? the electoral consequences of rising trade exposure”, NBER Working Paper 22637.

Colantone, I and P Stanig (2017), “The trade origins of economic nationalism: Import competition and voting behavior in western Europe”, Baffi Carefin Centre Research Paper 49.

Jensen, J B, D P Quinn and S Weymouth (2017), “Winners and losers in international trade: The effects on US presidential voting”, International Organization 71(3): 1-35.

Margalit, Y (2011), “Costly jobs: Trade-related layoffs, government compensation, and voting in US elections”, American Political Science Review 105(1): 166-188.

Margalit, Y (2017), “Commerce & Oppositions: The Political Responses of Globalization’s Losers”, mimeo, Stanford University.

Mayda, A M and D Rodrik (2005), “Why are some people (and countries) more protectionist than others?”, European Economic Review 49(6): 1393-1430.

O’Rourke, K H and R Sinnott (2001), “What determines attitudes towards protection? Some cross-country evidence”, in Brookings Trade Forum 2001, pp. 157-206.

Scheve, K F and M J Slaughter (2001), “What determines individual trade-policy preferences?”, Journal of International Economics 54(2): 267-292.


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