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スコット・サムナー「賃金の伸びが遅い? 説明すべき謎なんてないよ」

[Scott Sumner, “Slow wage growth? There’s no mystery to explain,” Money Illusion, August 28, 2017]

『エコノミスト』誌から:

2007年序盤も,最近と同じくらいアメリカの失業率は低かった.当時,賃金は年率およそ 3.5% で成長していた.今日の賃金の伸びは約 2.5% だ.これに経済学者は首をかしげている.「失業率から示唆されるほど労働市場は堅調ではないのだ」と言う人たちもいれば,生産性成長が低調なのを指摘したりインフレ予想が低いのを指摘したりする人たちもいる.最新の説は,ベビーブーマー世代の退職が犯人だと説く.

ホントのところ,ここには説明すべき謎なんてない.低調な賃金成長を引き起こしているのは低調な名目 GDP 成長である,まる.一件落着.

すると,今度はもしかすると名目 GDP が謎になるかもしれない――ここ2年の名目 GDP 成長がかろうじて年率 3% を超える程度でどうして失業率がこうも低くなりうるんだろう? マイルス・キンボールから引用しよう:

ますます,各国の中央銀行はこんな状況に直面するようになってきている――彼らが見ている産出ギャップがゼロに近づいているように見えるのに,インフレ率が目標を下回っているのだ.おそらくこれは,たとえば日本・スウェーデン・アメリカに当てはまる.ユーロ圏すら,この状況にだんだん近づいてきている.ときに,ジャーナリストたちは産出ギャップゼロとあまりに低いインフレ率の組み合わせをみて,あたかもそんな状況が奇妙なものであるかのように議論する.だが,産出ギャップゼロがどの一定のインフレ率とも整合するのは多様なマクロ経済理論がそろって認めているところだ.(これは「金融の超中立性」(“monetary superneutrality“) の一側面だ.)

メディアは金融の超中立性という概念を理解するのに困っているらしい.1970年代から,経済学者たちはインフレ率と失業率に長期的なトレードオフがないことを理解している.だが,インフレ率を 1.5% から 2% に上げられるのであればさらにもっと大勢の人たちが労働力に参入するだろうと人々はいまなお考えている.そういうことはありそうにないのだが.

PS. 最近のポストで指摘したように,政治的正しさに関する世間の人たちの見解は,みんなが想定しているものとちがっているかもしれない.新しい世論調査によると,アフリカ系アメリカ人の多くが南部軍記念像〔リー将軍・ジャクソン将軍の銅像;南北戦争時代の奴隷制度支持の象徴として撤去すべきという運動とこれへの抗議があり死者がでたシャーロッツビル事件につながった〕をそのままにする方がいいと考えている.この世論調査が多少かたよったものだとしても(標本サイズが小さいので),黒人のあいだで10対1で像をそのままにしておくのに賛成する人が多数派だというのはぼくには驚きだ.また,ヒスパニック系は3対1近くで像の維持に賛成している.白人も同様だ.レインボウ連合はこんなところだろう.

「リベラルの指導者が一般庶民のリベラルを代弁している」とも,「黒人指導者が黒人コミュニティ全体を代弁している」とも想定するべきでない.


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