Allison Schrager, Andy McAfee その他経由のネタ.SATスコア上位層の性別格差のグラフだ:
見てのとおり,比率はぜんぶの水準で下向きに推移しているけれど,とくに最上位 0.01% の層(正規分布を想定すると総合スコア分布のだいたい 3.7標準偏差)では,かなり劇的な格差縮小が起きている.ロナルド・レーガンが大統領になった頃,女子は成績最優秀者の 7% しか占めていなかった.でも,ビル・クリントンが就任する頃には,20% になっていた.オバマ再選の頃には,29% だった.
カギとなる情報は,現在の性別格差じゃなくて,最近の変化率だ.この種の急速な変化が起こってるときには,遺伝的でないことがすごく進行していると推測される――10年単位で生物学的な性差が根本的に変わりうるのでないかぎり.
SAT の数学問題の変化が関わっているというのは,きわめてありそうにない話だ.SAT の数学問題は,十年一日のごとしだ.「30度-60度-90度の三角形の辺の比を求めよ」だの,「次の二次方程式を因数分解せよ,ただしクリップとチューイングガムだけを用いること」だの,「ナポレオンが乗っていた白馬は何色?」だの,そんなのばかりだ*
生物学の問題でもなく,測定法の問題でもないとすれば,環境の要因によって性差が縮小しているのにちがいない.その環境要因がどんなものであれ,強力なのはたしかだ.
強力な環境要因がはたらいているとわかったからといって,生得的な能力差が除外されるわけじゃない.2つの要因が同時に効いていて,やがては生物学的に決定された完璧に実力本位の「自然な」水準に落ち着くってこともありうる.ただ,「オッカムの剃刀」にしたがえば――これはモデルを複雑にするのをいましめる用語ね――他の条件が等しければ,要因を1つだけ立てるモデルの方が2つ立てるモデルよりすぐれている.つまり,強力な環境要因が2006年にも効いていたのだとしたら,2011年になってもまだ完全には消え去っていないんだって話になる.というわけで,この考えだと,遺伝的に決定されるという説はやっつけられないけれど,弱めはする.
「はいはい,なるほど.でも誰がそんなの気にするの?」――コレが実は最近でた Journal of Economic Perspective 論文に関連している.著者は Amanda Bayer と Cecillia Rouse で,「経済学業界における多様性:古い問題への新しい攻め手」 Bayer と Rouse によれば,経済学分野で女性に与えられた Ph.D と学士号の割合は,過去20年間ずっと変わらず平坦なままだ:
ここからわかるのは,経済学の学位は IQテストの上層なんかじゃないってことだ.もし上層だったら,性別格差は「サウンドガーデン」とネルシャツの時代から縮小してることだろう.
じゃあ,なにが経済学の性別格差を引き起こしてるんだろう? 好みのちがいという説明もありうる.もしかすると,女性は男性ほど経済学がお気に召さないのかもしれない.SAT スコアは IQ の代理としてすぐれているけれど,うまくデータと合わないくせにきわめて様式化されたベンチマークモデルにいくらか手を加えるというほどほどに難しい仕事の利点を懐疑的な同僚諸賢に売り込んだりおそらく外生的だろう自然実験の歴史記録をあれこれとふるいにかけたりするのに人生を費やしたいって欲求をはかる代理としてはひどくダメな数値だ.
他の説明としては,社会学的な理由もありうる.経済学だいすき少年団は,女性をはねつけてるのかもしれない.もしかして,経済学ボーイズは,「セミナーでうっかり女の子に腕が当たったりしたら治療不可能なビョーキがうつっちゃう…」っておそれてるのかもしれない.特定個人 の経済学者(複数)を知っているぼくからすると,ほんとにこれがずばり正解でも意外には思わない.あるいは,もしかすると,高校時代にじぶんなんかとはつきあってくれなかったチアリーダーどもへの見当違いな復讐を試みながら無駄にキャリアを費やしているキモいリバタリアンおじさんがうじゃうじゃいすぎる経済学業界はムリだという女性たちがいるのかもしれない.これまた特定個人の経済学者(複数)を知っているぼくからすると,まさにそういうことを彼女たちが恐れていたとしても意外には思わない.
ともあれ,うん,つきつめればこの記事も「女子大勝利!」ネタなんだろう.まだ「女子大勝利!」ネタに飽きてないのかって? まさか.ご存じでしょう,ぼくは飽きるってことを知らないヤツでしてね.
*答え:
問い1. 1/2/3の平方根
問い2. 引っかけ問題,ガムは切らしてるので.
問い3. C
〔※問い2-3がなんのことかよくわからないので,どなたかご教示いただければさいわいです〕
ナポレオンは白馬じゃなくてロバに乗っていたから引っ掛け?