経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

サイモン・レン=ルイス「生産性と金融政策」

[Simon Wren-Lewis, “Productivity and monetary policy,” Mainly Macro, September 21, 2017]

イングランド銀行がまもなく金利を引き上げるという警告を発している.Chris Giles が指摘するように,これは前にもあったことだし,その前にもあった.だけど,だからといってこの話を無視すべきだという話にはならない.いつかは金利が引き上げられるからだ [1].たしかに彼ら(金融政策委員会)は真剣そうに聞こえる.だが,目下の成長率がこうも低い現状で,どうして金利引き上げが俎上に載せられたりするんだろう? Mark Carney の最新スピーチに1つ手がかりがある(強調は引用者によるもの).
[Read more…]

サイモン・レン=ルイス「学部生向けの経済学教育も21世紀に」

[Simon Wren-Lewis, “Undergraduate economics teaching moves into 21st century,” Mainly Macro, September 19, 2017]

CORE経済学カリキュラムのねらいは,数十年むかしの経済学じゃなくて今日の経済学を反映させた経済学入門を提供することだ.正当にも,ジョン・カシディに賞賛されている.すぐれたカリキュラムだとも思う.たんに初年度の学部生向けとしてすばらしいだけじゃなくて,経済学に関心をもった一般人向けとしてもすぐれている.どんなものかちょっと味見をしてみたい人は,このプロジェクトの主導者2人が書いた短い解説を一読してみるといい.
[Read more…]

サイモン・レン=ルイス「フォックスニュースは投票行動を左右する:経済学からの知見」

[Simon Wren-Lewis, “Economists show how Fox news changes votes,” Mainly Macro, September 14, 2017]

前にも述べたように,経済学者がだんだんメディア研究に参入してきている(なにしろ天然の帝国主義者なものでね).そこから,古くからの批判的な論争に関する実証的な証拠がもたらされつつある.一部のメディア報道に偏向があるのは,たんに視聴者・読者が党派的だからだろうか,それとも,そうしたメディア報道は政治的な見解を変える因果関係に一役買っているのだろうか? また,視聴者/読者はメディア報道の偏向を割り引いて受け止めているのだろうか,それとも,彼らの投票行動に影響を及ぼしているのだろうか?
[Read more…]

サイモン・レン=ルイス「経済政策におきた革命」

[Simon Wren-Lewis, “Revolutions in Economic Policy,” Mainly Macro, September 13, 2017]

公共政策研究所 (IPPR) の経済公正委員会が,「変化の時」と題してイギリス経済に関する網羅的な大部の報告書を公表した.後日あらためてこの報告書のいろんな側面について書きたいと思うけど,その基本的な前提となっているのは,経済政策立案に革新が必要だということだ――戦後のアトリー政権やサッチャー女史が行ったのと同様の革新が必要だということが前提になっている.経済政策の革新という考えの背景にある思考は,The Politcal Quarterly 掲載の論文で Alfie Stirling と Laurie Laybourne-Langton によって大筋がつくられた.
[Read more…]

サイモン・レン-ルイス「緊縮を定義する(再論)」(2017年9月6日)

Defining austerity redux  (Mainly Macro, Wednesday, 6 September 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

どちらかというと退屈な,定義に関する投稿.

以前の文章邦訳)で,緊縮が何を意味するか明確な定義は存在しないこと,人によってどういう意味で使ってるかが異なることを論じた.私の「一般理論」論文の文脈では,通常の用法の1つを精密化する定義を試みた.ただ,以前の投稿のコメント欄を見ると,納得しなかった人もいるようだ.

ツイッターでの最近のやり取りから,明確な定義が未だに待望されていること,一方で私の以前の定義は改善の余地があることを確信した.その以前の投稿では,私は緊縮をある種の財政健全化 — 公共支出の削減 — に等しいと定義するのは2つの理由から不十分だと主張した.1つ目: 単に「公共支出削減」と言えばいいじゃないか! 2つ目はより重要で,この定義だと,景気過熱の高みにおける(経済に害をおよぼさない)財政健全化と,不況のどん底における支出削減を同じように扱ってしまうというものだ. [Read more…]

サイモン・レン=ルイス「格差是正か貧困対策か」(2017年4月18日)

Simon Wren-Lewis, “Inequality or poverty, (Mainly Macro, 18 April 2017)

トニー・ブレアの有名な言葉にこういうものがある:

人々の収入に開きがあるのを気にかけていないということではない。大金を稼ぐ人々がいるかどうかでもない。それらは私の関心ごとではない。私が気にかけているのは、機会に恵まれず、不遇で、貧しい人々だ。

労働党政府を含めほとんどのひとは、ブレア元首相が格差是正ではなく貧困対策に注力するつもりだと解釈しただろう。格差是正の歴史的トレンドと、その他さまざまなものとともに労働党が推し進めた貧困削減プログラムがそこに与えた影響(そしてこのプログラムが近い将来取り消されるかもしれない可能性)については、リックの素晴らしい議論を参照してもらいたい。 [Read more…]

サイモン・レン-ルイス 「なぜBrexitがもう実質賃金の低下をもたらしたのか」(2017年8月31日)

Why Brexit has led to falling real wages

(Mainly Macro, Thursday, 31 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

一見,簡単に見える.ポンド安がBrexit後すぐ生じ,その後1ポンドで買えるユーロの数が減り,それが輸入価格を押し上げ,消費者物価に(タイムラグを伴って)影響して実質賃金を減少させた,と.しかし,実質賃金は物価だけでなく名目賃金にも依存している.なぜ名目賃金は,物価上昇にも関わらず変化しないままなんだろう?

[Read more…]

サイモン・レン=ルイス「独立している中央銀行は助言役でありうるか?」

[Somon Wren-Lewis, “Could independent central banks be advisory? ” Mainly Macro, September 4, 2017]

いまや財政審議会(あるいは独立財政機関)は先進国でありふれたものになった〔財政審議会とは政府から資金提供されるが政府から独立し財政問題について公的な助言を行う機関のこと〕.こうなると,新たな疑問がわいてくる――「こうした審議会がみんな助言役なのはどうしてだろう,中央銀行は金融政策をみずから行っているじゃないか?」 財政政策に関しては助言を〔政府外の組織に〕委任している一方で [1],金融政策に関しては管理運営を委任している.今回のポストでは,政策手段の変更方法の管理に関心を集中して,政策目標の管理は脇に置く.話を明快にするために,政府はなおも金融政策(e.g. インフレ目標)と財政政策(e.g. 5年後の赤字目標)の最終的な目標を管理していると想定する.
[Read more…]

サイモン・レン-ルイス インフレ目標を引き上げる (2017年6月16日)

Raising the inflation target
(Mainly Macro, Friday, 16 June 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

もっと高いインフレ目標をという議論を理解するのは簡単だ.ただ2つのことさえ理解すればよい.第1に,もっとも効果的で信頼できる金融政策手段は実質金利に影響を与えることである.実質金利とは,名目金利から期待インフレ率を差し引いたものだ.第2に,名目短期金利にはゼロ近辺に下限(ゼロ下限)があるということだ.この2つをあわせると,不況の際に深刻な問題が生じる.不況に対処するには実質金利をマイナスの領域に動かす必要があり,どこまで負にできるかはゼロ下限によって制限されてしまう1からだ.つまり,金融政策だけでは不況から抜け出すことができないかもしれないということになる. [Read more…]

  1. 訳注: 名目金利を0まで下げても,実質金利は0-期待インフレ率までしか下げられないという制限がある. []

サイモン・レン=ルイス「イギリスで緊縮の過ちはどうやって起きたのか」

[Simon Wren-Lewis, “How did the UK austerity mistake happen,” Mainly Macro, August 14, 2017]

グローバル金融危機 (GFC) とその帰結としておきた不況が進行中だった当時,労働党政府は財政刺激を使ってその影響をやわらげることはできないかと検討した.財政刺激を打てば,すでに不況の結果として増加しつつあった財政赤字をいっそう増やすことになる――だが,金利引き下げだけではこの危機に対応するのに不十分なのも彼らはわかっていたし,景気後退期の赤字を人が気にかけないのも知っていた.これは「経済学101」つまり基礎的なマクロ経済学だ.そして,この中身は 100% 正しい.
[Read more…]