Alex Tabarrok “The Causal Effect of Cannabis on Cognition” Marginal Revolution, November 3, 2019
大麻をたくさん吸うと頭がおかしくなるのか,頭がおかしいから大麻をたくさん吸うのか。大概は後者だ。Ross et al. (2019)は以下のように述べている。
大麻が認知に機能障害を引き起こすと多くの研究者が結論づけているものの,別の説明もある。まず,認知機能が貧弱であることは薬物使用のリスク要因である。具体的には,幼年期に計測された実行機能は,その後の薬物使用及び薬物使用障害を占うものである(SUDs; Ridenour et al., 2009)。したがって,研究にあたっては事前の認知機能をコントロールする必要がある(Meier et al., 2012)。次に,貧弱な認知機能と大麻使用も関連している可能性があり,このことは一方が他方を引き起こしているのではなく,両者が社会経済的地位の低さという共通のリスク要因を共有しているからである (Rogeberg, 2013) 。Lynskey and Hall (2000)は,早期の薬物使用は薬物使用グループへの加入,登校率の低さ,中退などによって尚早に大人の役割を演じることになるなどの社会的背景のもとで引き起こされる可能性が高く,そうした学業上の参加に関わる影響は後々の認知機能にも影響を与えうると提案している。
実際,遺伝子及び家族環境をコントロールした双子研究は,大麻が認知を低下させるとはしていない。
Lyons et al. (2004)は通常使用の後に20年にわたって使用状況の異なる一卵性双生児を調べ,両者の間で有意な差があるのは50以上の認知指標のうちたったひとつだけだったことを見いだした。また,Jackson et al. (2014)は,大麻使用の状況が異なる一卵性双生児において用量依存関係や認知の有意差について何の証拠も見つからないとした。同様に,Meier et al. (2017)は,大麻依存や使用頻度の異なる一卵性及び二卵性の双子からなるサンプルにおいて,認知機能の差に何の証拠も見つからないとした。したがって,双生児を使ってコントロールするようデザインした準実験においては,大麻が貧弱な認知を引き起こすという証拠はほとんど得られていないのである。
Ross et al.は類似の研究を行っているが,計画する,焦点を合わせる,衝動を抑える等の実行機能も検証している。これらはIQと関連しているものの別個のスキルであり,彼らは次のように結論している。
大麻使用が多い家庭ほど一般的な認知能力がより低いことが示された。しかし,家庭内において,より使用量の多いほうの双子がより低い認知スコアを示すことは稀だった。総合的に見れば,認知に対する大麻の因果効果についての証拠はほとんどなかった。
素晴らしい情報源のケヴィン・ルイスに感謝。