アレックス・タバロック「英語のポップソングは悲しみと怒りが色濃くなってきてる」(2020年2月17日)

[Alex Tabarrok, “Pop Songs are Getting Sadder and Angrier,” Marginal Revolution, February 17, 2020]

AEON: 英語圏のポップソングは,だんだんネガティブになっている.ネガティブな情動に関連する単語の使用頻度が,1/3 以上も増えている.一例として,ビルボードのデータセットをとりあげよう.歌一曲あたり平均 300語が使われていると仮定すると,ヒット曲の上位 100曲の歌詞は毎年 30,000語使うことになる.1965年に,否定的な情動に関連した単語はおよそ 450ほどだった.2015年に,その数字は700以上になっている.その一方で,同じ期間に,ポジティブな情動に関連した単語は減少している.1965年の歌には,ポジティブな情動の単語がおよそ1,750語あったのに対して,2015年にその数はたった 1,150ほどにまで減っている.ここで気にとめておきたい点がある.絶対数でみると,ネガティブな情動に関連した単語よりもポジティブな情動に関連した単語の方がいつでもより多く現れているのだ.これは人間の言語に普遍的に見られる特徴で,「ポリアンナ原則」と呼ばれている(ポリアンナはその名前を冠した小説の主人公で,いつでも完璧に楽観的な女の子だ).これが逆転するとは,まず予想しがたい:その上で言うと,問題なのは変化の方向だ.


同じくビルボードの上位100のヒット曲データセットで,テンポと調性も検討した:ビルボードのヒット教はだんだんテンポを落とし,短調の頻度がだんだん上がってきている.長調にくらべて,短調は暗い感じに受けとられる.

こういう変化が起きた理由について,著者の Acebi と Brand は思弁を述べている――ネガティブな情動の方が人々のあいだに広まりやすいのではないか,ランダムな変化なのではないか,好みの変化が生じているのではないか,音楽流通の変化が関わっているのではないか.だが,どれも決定打ではない.もしかして,ラップがこのちがいを説明できないだろうか? 彼らの研究では,新曲の制作に着目しているけれど,消費の方はどうだろう? ぼくらは〔近年の〕より悲しい曲を聴いてるんだろうか,それとも,昔の曲の方をよく聞いて気分を明るくしてるんだろうか? 英語以外にもこの変化は生じてるかわかれば面白そうだ.

多謝: Paul Kedosky.

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