以前,Shruti Rajagopalan と共著でインドの民営都市グラガオンとジャムシェドプルについて書いた: “Lessons from Guragaon, India’s Private City.” そのとき発見したことの1つに,こういうのがあった――明らかに効率的な解決法だし交渉する時間だってあるにもかかわらず,取引コストのせいで民間の開発業者たちが下水や電気といったインフラに協調して取り組めなくなっている.そうした外部性を内部化するには,たとえばディズニーランドみたいなもっと大規模な購入が必要になるだろうと,そのときは示唆しておいた.
“The Contractual Nature of the City” で,Qian Lu は中国の異例な民営都市「蛟龍」(Jiaolong) に着目している.蛟龍は小さな都市で,面積は 4.3 平方km,人口10万人にすぎない.でも,電気・下水・道路・アパートメント・ショッピングモール・水族館・オフィスビル・ホテルなどなどのインフラはすべて民間で建設されている.蛟龍を管理している企業 Jiaolong Co. は,各種の権利を計画している.とくに重要な点として,あらゆる資産税の 25% を徴収する計画だ.それはつまり,同社が投資で産み出す価値の上昇分の一部が同社に取り込まれる,ということだ.
蛟龍は営利法人によって建設・運営されている都市だ.これは中国では珍しい.大半の場合に,地方都市の政府が都市開発を担当しているからだ.ほぼすべての都市において,政府が土地利用計画や都市計画を立案し,農民の土地を集め,都市インフラを建設し,住宅開発業者や製造業者に土地を販売し,警察署・病院・学校・大学を運営する.強制権を独占して手中におさめることで,政府は布告によって各種リソースを集めて手元におき,取引コストを低く抑えられる.
(…)蛟龍の都市開発は,強制力に基礎をおいていない.双流区〔四川省成都市〕の政府・企業・農家・住民および関連する団体と一連の契約を結んで開発されている.中核となっている契約者 Jiaolong Co. は契約の網を簡略化し調整コストを首尾よく減らしている.本質的な契約は,計画権を譲渡する郡政府との投資契約と,政府と企業が税を分け合う一連の契約だ.税収分配契約は,蛟龍が都市開発・インフラ建設の黒字分を共有できるように蛟龍の所得権を定義する.また,分配契約により,財産権保護などの公共サービスを双流区政府が提供する動機が生じる.一連の契約により,計画権・土地利用権・所得権が Jiaolong Co. に譲渡される.これにより,インフラ建設と都市開発の外部性が内生化される.制度変更の観点から見ると,蛟龍は強制ベースではない契約ベースの都市開発の事例となっている.中国では,強制ベースの都市開発が典型的なアプローチだ.