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クレマンス・ベルゾン「フランス労働市場の二重性」

Clémence Berson “La dualité du marché du travail en France” Bloc-notes Eco, Banque de France, le 19 décembre 2017

フランスでは,労働市場の柔軟性は本質的に任期付雇用契約(CDD)や臨時雇用による従業員に依拠している。彼らは給与待遇が低く,受ける訓練も少なく,正社員契約(CDI)1 を獲得するのも困難である。こうした労働市場の二重性は社会経済的な課題を生み出す。正社員への移行を容易にするには,公共政策の実施が考えられる。


グラフ1 任期付契約と臨時雇用の雇用者数(a)と新規雇用数(b)
(a) 有給従業員のうちに一時雇用が占める割合:赤は臨時雇用,青は任期付雇用
及び季節雇用契約(官民含む),出典:INSEE,雇用調査
(b)新規採用に占める任期付契約の割合:青は任期付雇用が新規採用に占める割合(従業員50人以上の組織),赤は 任期付雇用が新規採用に占める割合 (従業員10人以上の組織)

フランスの主要な労働契約は正社員契約だ。近年,正社員は既存の雇用契約の大部分を占めているが,新規雇用における割合は限定的なものとなっている。その一方,任期付雇用契約や臨時雇用契約は既存の契約に占める割合は非常に小さいが,新規雇用においては大部分を占めている(グラフ1 aとbを参照)。これら契約の労働移動率は上昇を続けていて,2014年の任期付雇用の平均期間は14日間だ。労働市場の柔軟性はしたがって,本質的に任期付雇用契約や臨時雇用による従業員に依拠しているのだ。

正社員への転換率の低さ

任期付雇用や臨時雇用は,安定雇用への足がかりと言われることがある。特に,これら契約を結んでいる人たちの中では若者が非常に多い。しかしBlasco et Givord (2010)は,こうした若者が正社員になるよりも無職になることのほうが多いことを示した。任期付雇用と臨時雇用による従業員全体のデータによれば,正社員への転換率は比較的低いままに留まっている(1年後で10~20%の間,Berson 20172 ,以下のグラフ2を参照)。大多数は初回調査時から1年後でも未だ任期付雇用と臨時雇用にあるのだ (50~70 %) 。

グラフ2:任期付契約及び臨時雇用契約の任期付雇用,臨時雇用,正社員,失業への移行
青:任期付雇用ないし臨時雇用契約,赤:正社員,緑:失業
出典:雇用調査,計算は著者による

1年半後に正社員となっている可能性はやや高く,20~30%となっているが,50~60%の人は未だに任期付契約か臨時雇用となっている。安定雇用へ移行する可能性はしたがって低いままであり,これは90年代以降労働力移動が急速に上昇しているという事実を補強するものとなっている(Picart, 2014)。これはフランスの労働市場が大きく分断されているということを示す。すなわち,任期付契約や臨時雇用にある人々は,数年にわたってそれにとどまる傾向があるとともに,正社員へ至るのは難しいのだ。

任期付契約と臨時雇用:正社員よりも若く経験も浅い

任期付契約と臨時雇用契約は,就労年齢の中でも特定のカテゴリの人々が多くを占めている。これらの人々は,多くの場合女性や移民の出自なのだ。平均年齢も比較的低く,正社員の平均が42歳であるのに対し34歳となっている。任期付契約と臨時雇用では現業労働者が34%を占めるのに対し,正社員では23%,一般事務員は任期付契約と臨時雇用では36%であるのに対し,正社員では32%,他方で中間管理職と管理職は正社員のほうが任期付契約と臨時雇用よりも7ポイント高い。

不規則な勤務時間も主として任期付契約と臨時雇用が占め,パートタイムは任期付契約と臨時雇用の24%を占めるのに対し,正社員では16%だ。この種の契約を用いる企業は50人以上の従業員を抱える企業であることが多く(正社員が10%であるのに対し任期付契約と臨時雇用では20%),分野では農業,科学技術関係,公的機関及びその他サービス業が多い。

より脆弱な立場の従業員たち

任期付契約や臨時雇用の労働者たちは,それ以外の労働者よりも景気の影響を強く受ける人たちでもある。ユーロシステムの賃金動学ネットワークによる従業員に対するアンケート調査によるフランスのデータは,任期付契約や臨時雇用が減少する確率は,負の需要ショック後に20%以上増加することが示されている (cf. Berson, 20173 )。ある企業が正社員を減らす際には,通常は任期付契約や臨時雇用も減らす。フランス国立統計経済研究所(INSEE)の雇用に関するアンケート調査データは,2009年が例であるように,任期付契約や臨時雇用が雇用全体に占める割合が経済危機の際には減少することを示している。新規雇用の変動の大部分は任期付契約と臨時雇用のためであり,これはフランスの雇用調整がこれらの従業員に依拠していることを証明している(cf. Le Barbanchon et Malherbet 2013)。

さらに,任期付契約や臨時雇用の従業員は雇用期間中に訓練を受ける機会がより少ない。成人の訓練に関するOECDの国際成人力調査(PIAAC)によれば,これらの従業員が自分の仕事に関連する訓練を少なくともひとつ受ける可能性は,それ以外の従業員と比較して7%低い(著者計算)。受講する訓練活動の数もまたほかの従業員よりも少ない。他方,労働契約の種類は仕事への満足に対しては影響がなく,訓練への需要に対しても影響がない。

最後になるが,2003年から2016年にかけてのINSEEの継続労働調査を使えば,似たような企業に勤める人口学・社会学上の特徴が等しい個人を比較することができる。任期付契約ないし臨時雇用であることは,[そうではない職に就いている]同じ特徴を持つ人と比べて受け取る給与を5%少なくする。任期付契約及び臨時雇用にある人たちと正社員の人たちの間の給与格差を調べた場合,そのうち20%以上は個人の特徴によっては説明できないものであり,おそらくは雇用主が両者に異なる扱いを行っているためなのだ。

二重性は大きな経済的社会的費用をもつ

フランスの任期付契約及び臨時雇用に関するこの分析は,任期付契約・臨時雇用と常勤契約(正社員契約や公務員職)との間に分断が存在することを示している。任期付契約や臨時雇用にある人たちは,こうした類の契約のままに留まる傾向があり,安定した雇用を得るのは難しい。彼らは職業訓練を受けることも少なく,給与報酬も低い。この労働市場の二重性は大きな社会的結果をもたらす。ひとつには,任期付契約や臨時雇用しか得られない人たちは頻繁に失業期間を経験する。もうひとつには,こうした結果が,たとえば住居や借り入れを得ることが困難であるためであるために,ほかの市場においても表れることだ。

この分断を縮めるためには,特定の公共政策の実施が考えられる。短期雇用と長期雇用の保護に差があることは,こうした二重性を強めかねない。企業はより終了しやすい雇用契約,すなわち任期付契約や臨時雇用によって労働力の柔軟性を担保するからだ。一部の経済学者(たとえばTirole et Blanchard 2003)は,二種類の労働契約間の保護の水準を近づけることは,任期付雇用を使用する利点を少なくすることで,労働市場の分断を減少させる手段になるとしている。正社員雇用を増やしたり,任期付契約や臨時雇用を常勤契約へと転換することを後押しするインセンティブ政策の研究も行われている。そのうちのひとつは雇用保険料への点数制度の導入で,これはアメリカで行われている (Cahuc et Malherbet, 2001Cahuc et Prost, 2015など)。短期雇用に課税する一方で常勤雇用契約による採用に補助金を出す(Berson et Ferrari, 2015) のもこのうちのひとつだ。

  1. 訳注;文字通りには「任期の定めのない雇用契約」であるが,理解の容易さのために正社員と訳出する。 []
  2. 原注;C. Berson 2017 « Les contrats atypiques en France », miméo. []
  3. 原注1参照 []

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