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コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.4: 都市の開発とか貿易とか」(2018年10月10日)

[“Paul Krugman on Politics, Inequality, and Following Your Curiosity,” Conversations with Tyler, Oct. 10, 2018]

コーエン:: NIMBY vs. YIMBY の対立についてどう考えます?〔都市の開発について「うちの近所は勘弁してくれよな」(Not In My Backyard) と反対するのか,逆に賛成するのか (“Yes In My Backyard”),という対立〕 アメリカに大都市をもっと建設する必要があると思いますか?

クルーグマン: そりゃもう.ぼくは完全に YIMBY 派.用途地域制限の種類によっては,制限をつける理由もあるけれど,そういうのは住宅を建設しない理由の大半とは関わりがほとんどない.

なんならこう言ってもいい.ここでは控えめに言ってリベラルたちの多くが間違っていて,多くの保守的な地域で事実上とられている政策が正しい.もっと建設できるようにする必要がある.ニューヨークはいろんな点で栄えていて,「こういうことができる」という成功例だ.そのニューヨークに来たいとのぞむ人たちのために住宅を建てるのを,〔規制によって〕あまりに困難にしてしまってる.その結果どうなってるか.ここに暮らす経験をともにしてしかるべき人たちの多くが,住宅の価格で弾き出されてしまってる〔供給が足りずに住宅価格が高くなるので〕.

コーエン:: ヘンリー・ジョージが言った土地単税はどうですか.住宅建設を促しつつ格差も減らす手段として使えると思います?

クルーグマン: その宿題はやってきてないもので.

コーエン:: 多くの国々にまたがる国際的サプライチェーンを考えてみると――リチャード・ボールドウィンがこれについて書いてますが.あなたも書いてますね

こういうサプライチェーンは,いま本質的に収縮または崩壊しつつあると思います? いま中国でなされていることは,メキシコや NAFTA でもなされることになるかもしれないんでしょうか? そして,それってつぶれちゃうんでしょうか? そもそもあまりに夢物語めいていたんでしょうかね?

クルーグマン: べつに夢物語ってことはなかったでしょ.サプライチェーンは機能したよ.1990年から2010年にかけて世界貿易が急激に増えて,そのあとだいたい横ばいになったのは事実だもの.

たしかに,一回きりの出来事のようにも見える.新興市場での貿易自由化と,輸送・取り引きコストの低下が組み合わさって,世界貿易が急激に増えた―――たんにモノを輸送するコストだけじゃないんだよね,船の荷物を積んだり下ろしたりするコストもあって,そういうコストも下がった.ただ,この変化は一回限りのことに見える.貿易のバリューチェーンでの変化は.

少しやりすぎだったという兆しもある.企業が,あともう一歩節約しようと模索して,その国際ロジスティックス・チェーンをあまりに複雑であまりに遅延や混乱の影響を受けやすくしてしまったってことと,もとの国の近くにモノを送りもどす利点がなくなったってこと.で,ともあれいくらか経費削減はあったんだろう.

で,いまの貿易摩擦でどんなことが起きそうか,キミが聞かせてよ.

コーエン:: 今回の貿易摩擦は永続的です.サプライチェーンは収縮して,〔グローバルではなく〕もっと地域的になります.

クルーグマン: でも,それってどんな規模? どれくらい深刻なの? なにしろ,その地域貿易のネタだって―――いや,正直言うと,ぼくん中の貿易政策マンはけっこうこれを楽しんじゃってるんだけど―――歴史的に見て,長いこと地域貿易ネタってかなり退屈な主題だったじゃない.

コーエン:: ですね.

クルーグマン: 世界貿易はほぼタダで,なんにも起きてなかった.そこにいきなり変化が起きた.しかも,予想のつかない方向に起きてる.2016年選挙のあとですら,「アメリカはメキシコと仲良くやって,カナダと深刻な衝突を起こしますよ」なんて聞かされたとしても…(笑)

これがどこまでいくか,ぼくにはわからない.たぶん……こんな風に言ってみようか.企業はその維持に利害がかかってるんだから域内貿易協定は結局のところもっと頑健になると見るのは悪くない推測だ.でも,どうなるかわからないよね.

コーエン:: いまの経済地理の傾向とテクノロジーの発展をふまえると,アメリカの西海岸と東海岸が今後ますます経済的に重要になると思いますか? それとも,どこかの時点で傾向が逆転します?

クルーグマン: 集積の経済はいっそう重要になってきたように見える.すでに豊かな地域に経済活動が移ってきたのはたしからしい.これはちょっと面白いよね.

昔,論争があったよね―――いまもちょっと続いてるけど―――20年前の論争.「インターネットのおかげで,距離はもはや問題にならなくなるはずだ.なんで土地が安くて渋滞もないところに人々は移ろうとしないのか」ってやつ.

そういうことは起きそうにない.すでに盛り上がってるところに拠点を置く魅力が下がるどころか上がる他のいろんな要因があるように思える.いまわかるかぎりだと,その方向は続いてる.今後も続くかっていうと,ぼくは少し確信しかねるところがあるけど.

〔後知恵ではなく〕事前には,どうなっていくかはっきりしてはいなかった.モデル化できる範囲でいうと―――ごく限られてるけど―――相殺要因があるように思える.この傾向で巨大な大都市圏が負け組ではなく勝ち組になるって顛末を見通すほどの知見をもってる人なんていなかったと思う.

part 5 につづく


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