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スコット・サムナー「ノアへ:アベノミクスの効果は出てます」

Scott Sumner “Noah’s snark?“(TheMoneyIllusion, February 25th, 2014)

(訳者補足:本エントリは、先日訳したノア・スミスの記事に対してのもの。)


アベノミクスについて私は次のようにずっと言ってきた。

1.データは新たな日銀の政策がインフレ、及びインフレ期待を上昇させたことを示している。これについては山のような証拠がある。

2.日本のインフレ率は、日銀がさらなる行動をとらない限りは(消費税による上昇を除くと)2%に達しない可能性が高い。これは上記1点目ほど明らかではないが、長期債券利回りを始めとした市場の指標の読み取り方としては適切に思う。

3.2%インフレを達成するかどうかは全く重要ではないし、インフレ率を目標とすべきですらない。それよりも重要なのは、日本が名目GDP成長をプラスの領域、少なくとも2%から3%のところまで持っていけるかどうかだ。これが達成されるかは依然として明らかではないが、進展はしてきている。

より信頼性の高い「コアコア」インフレ率は目下0.7%でしかないということを正しく指摘したノア・スミスのエントリ[邦訳]を、多くの読者が送ってきてくれた。マーク・サドウスキは、ほんの三週間前にノア・スミスがアップした記事はコアコアがこのところ上昇してきていること、そしてそれは1990年代以来の最高値であることを示していると指摘している。

ノアは次のようなおかしな主張で締めくくっている。

というわけで基本的には、長期間のデフレの後で中央銀行が2%のインフレ率を達成できるということをアベノミクスはまだ証明してはいない。そういった意見はまだ主義信条といったものに留まっている。目標は達成されるかもしれないし、されないかもしれない。(それが達成されなかったときには、日銀が単に目標を達成すると十分コミットしてなかっただけだって金融政策支持者たちが言い出すのはもちろん予想すべし。。。)

さっき言ったように、私は日本のインフレ率が2%に達すると予想したことはないけれども、それよりもそうしたインフレ目標達成の失敗は日銀が十分やらなかったことを意味するのかどうかという疑問には興味がある。ふむ…私はたぶん全くの馬鹿というわけではないだろう。よし答えはイエスだ。インフレ率が2.0%に達しなかったのであれば、日銀は2.0%を達成するために十分やらなかったのだと私は言わざるをえないだろうと考える。つまるところ、Xをすることでインフレ率が1990年代以来最高水準にまで上昇したのであれば、10Xあるいは100Xをすることでさらにインフレ率が押し上げられるというのは道理にかなっている。円を対ドルで80円から100円へと動かすことがインフレ率を押し上げるのなら、円を1ドルに対して100万あるいは100兆円でペッグすることが効果をもたらすだろうというのも道理にかなっている。効果がないのであれば、1ドル100京円1 ではどうかな?(私はこの論法をジョン・ロックから盗んだ2 。私は最上のものからしか盗まないのだ。)

それかもしかしたら私はどこかで間違ったのかもしれない。ニューケインジアンモデルでは、「過熱」がインフレを引き起こすことになっている。だから1ドル100京円の為替ペッグが過熱をもたらさないのであれば、そのようなことによってインフレ率を2%以上に押し上げることはできないだろうと考える。

多分私は太字にされた単語(十分)に過剰反応しているのだろうが、2%インフレの達成失敗は金融刺激が不十分だったからだと主張するだろう人たちに向けられた、少々の皮肉があると考えずにはいられなかったのだ。他に何の原因がありえただろうか。日本はエジプトとベネズエラを除けば世界で最も大きな財政赤字を抱えている。

多分さらに興味深い疑問は、日本がもし十分やらなかった(2%インフレを達成するのに失敗した場合)として、その理由は通貨の毀損について政治的障壁があったからかなのかというものだ。つまり、1ドル100京円にペッグされたらアメリカが海兵隊を送り込んでくるだろうと心配したとかそういったものだ3 。しかし技術的障壁に限れば、ジンバブエ人ができたのであれば日本人も出来ると私は強く確信している。彼らは馬鹿じゃない。

追記:マークがリンクしたノア・スミスの過去のエントリ4 は次のように終わっている。

金融政策の効果に懐疑的な人々は今後もアベノミクスを叩く口実を次から次へと探し出してくることだろうが、これまでのところは彼らが警告するような事態は生じてはいないのだ。

うん。こっちのほうがずっと良い。

追追記:ノアは馬鹿じゃないってことだけははっきりさせておきたい、というか彼は私よりも賢い。嘘つきでもない。私はノア・スミスの記事に少々のユーモアを差し込もうといつも頑張っていて、バットマンネタは既に使った。こういうのが一服の清涼剤になっている。

追追追記:ジョン・ロックは間違いなく馬鹿じゃない。

  1. 訳注;原文はそれぞれ100 million, 100 trillion, 100 quintillionなので、正確には1億、100兆、1垓(1000京=1000×1000兆)であるが、ここでは数の位はあまり重要ではないと思われるので100+位という形を残すように訳した。 []
  2. 訳注;リンク先はサムナーの過去エントリで、最後の部分には銀の価値についてロックが同様の論法を使っている文章が引用されている。 []
  3. 訳注;円の下落が他国との通貨戦争を招くことを日本が心配したことが、十分な金融緩和を行うことに対する政治的障壁となったのかということの大げさな例え。 []
  4. 訳注;リンク先はhicksian氏による邦訳に差し替えてある。 []

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